第41話 悩み相談
「ええええっ!? な、何それ!?」
店内にドナの大きな声が響き渡る。
「あ、あの! オーナー、ここはお店です。あまり大きな声は……」
「あ、ごめんなさい。でもほら、安心して? 丁度今は、お客さんが引けた時間だから」
確かに店内にいるのはドナとソフィアの2人きり。だが……。
「オーナー、いつお客様がいらっしゃるか分からないので、あまり興奮はしないで下さい」
「そうね、分かったわ。だけど……」
ドナは一瞬考え込むと、堰を切ったかの如くまくしたてた。
「一体どういうことなの? それってもしかして新婚初日から別居婚をしているわけ? それじゃ、初夜はどうなったの? あ……でも別居婚だから無理よね? おまけに新婚旅行だって行ってないし……どうして行かないのかしら? アダムさんは、はっきり言って大金持ちよ? それこそ世界一周だって夢では無いと思うわ。ひょっとしてアダムさんはケチなのかしら? だけど話を聞く限り、そうとは思えないし」
「あ、あの! オーナー! 声が大きいですよ!」
ソフィアは先程から恥ずかしくてたまらなかった。何しろドナが「初夜」だの、アダムはケチなのかなどと大きな声で話しているからだ。
その後もドナの勢いは止まらず、ソフィアは宥めるのに必死になるのだった——
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それから数時間後――
「はぁ~……それにしても凄い話を聞いてしまったわ」
ドナが肩で息をする。
「すみません……驚かせてしまいましたよね?」
ソフィアは伏し目がちに謝った。
「何を言っているの? むしろどうしてもっと早く相談してくれなかったの? 私は一度結婚に失敗しているから、適切なアドバイスをしてあげられるのに」
何処かむくれた様子のドナ。
「オーナーを心配させたくなかったのです。それに……アダムさんと知り合うきっかけになったのはこのお店ですし……」
「だから遠慮して相談出来なかったと言うのね? 全く……馬鹿ね、ソフィアったら」
「オーナー……」
今迄胸に秘めていた悩みを全て打ち明けたソフィアの目にジワリと涙が浮かぶ。
ドナはソフィアの頭を撫でた。彼女はソフィアよりも10歳以上年が離れているので、2人はまるで姉妹のような関係になっていたのだ。
「でも、やはりそれは問題ね」
「問題……でしょうか?」
「ええ、そうよ。第一、夫婦なのに別居婚て何? アダムさんが住んでいる家だって知らないのよね? これはもう、直接問い詰めるしか無いわね」
「え!? と、問い詰めるって……だ、誰が誰にですか……?」
オドオドしながら尋ねるソフィア。
「勿論、貴女がアダムさんによ! 大体夫婦がベッドルームを別々にするだけで、お互いの仲が冷めると言われているのよ? それが、あろうことか別居婚!? それこそあり得ない事態よ。元はと言えば、私と前の夫も性格の不一致で離婚してしまったけれど……このままでは離婚になりかねないわよ!?」
「ええ! そ、そんな離婚なんて……!」
別居婚であろうと、やはりソフィアはアダムのことが好きだったのだ。
「そうよ、それを回避する為にも夫婦間の話が必要なの。勇気を出しなさい、ソフィア。私はいつだって貴女の味方よ?」
ドナはソフィアの瞳を覗き込む。
「わ、分かりました。オーナー……今夜、アダムさんに問い詰めます!」
「そうこなくちゃ!」
パチンと指を鳴らすドナ。
こうしてドナに勇気づけられたソフィアは意気込んで帰宅した。
これから自分の身に何が起こるか、知りもせずに——




