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第36話 夫の役目

 ダイニングルームには部屋の四隅に間接照明が置かれ、テーブルには燭台の蝋燭が揺れている。


まるで高級レストランのようなムードに、ソフィアは胸が高鳴る。


(何て素敵な空間なのかしら……まるでデートみたいだわ)


(この行以下3行が、上の三行と同じ)


まるで高級レストランのようなムードに、ソフィアは胸が高鳴る。


(何て素敵な空間なのかしら……まるでデートみたいだわ)


すると、アダムが椅子を引いた。


「どうぞ、ソフィアさん」


「は、はい。ありがとうございます」


着席するとアダムも向かい側の席に座り、テーブルに置かれたベルをチリンチリンと鳴らす。

すると開かれた扉から給仕のフットマンたちがワゴンを押して現れた。

2人の前に湯気の立つ料理を次々と並べて、グラスに赤ワインを注いで会釈すると去っていく。


「では乾杯しましょう。ソフィアさん」


アダムがワイングラスを手に取る。


「はい、アダムさん」


「2人が結婚したお祝いに……乾杯」


じっと見つめてくるアダムの視線に、ソフィアの胸が高鳴る。


「乾杯」


緊張しながらグラスを差し出し、カチンと2人は互いのグラスをならす。


「このワインはヴィンテージ物で、今夜の為に用意しました。ソフィアさんのお口にあえばよろしいのですが。どうぞ飲んでみてください」


「は、はい。ではいただきます」


自分の緊張を解く為にもと思い、早速ソフィアはワインを口にした。

ワインの酸味と甘さが口の中に広がる。


「……おいしい。すごく美味しいです、アダムさん」


「そうですか? それは良かった。ソフィアさんの笑顔を見るのが私の幸せでもありますから。この料理も全て貴女が好きな料理ですよね?」


アダムに言われてテーブルの上の料理を見ると、確かにどれもソフィアの好きな料理ばかりだった。鶏肉のハーブ香草焼き、野菜のグリル、エッグスフレに、サーモンのカナッペ等々が並べられている。


「本当ですね。でも、何故ですか? 私、食事のリクエストは何も伝えていませんけど」


「それは私が知っていたからですよ」


「え? アダムさんがですか?」


思わず顔を見上げて、アダムを見つめる。


「はい。2人で食事に行ったとき、ソフィアさんがどのような料理を好んで注文していたか常に見ていましたから」


「そうなのですか?」


「ええ、妻が好きな料理を把握しておくのは夫としての当然の役目だと思っていますから」


夫としての……。

アダムの言葉に、ソフィアの顔が増々赤くなる。


「あ、ありがとうございます。アダムさん……とても嬉しいです」


「お礼を言うには及びません。貴方の喜ぶ顔を見ることが私の幸せですから。では、食事をいただきましょう」


「はい。アダムさん」


アダムの気遣いに、すっかり浮かれてしまったソフィア。

結局……。

何故アダムと一緒に暮らさないのかを、ソフィアは尋ねることが出来なかったのだった――

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