六百二十七日目
太陽暦936年 1月21日(水) ?
ヘーテス 歳なんか数えてねえよ
ヘーテスが送る魔術コーナー!
カフェリア:イエーイ! ドンドンパフパフ!!!
えー、この番組は議会に仕事全部押し付けて暇そうなゼノン君をお呼びしてかの大悪魔ヘーテスがお送りいたします。
ゼノン:え? なんで普通にカフェリアとヘーテスが会話してんだよ。っていうか誰向け?
それは勿論未来のお前とか。会話は日記に記録されてるから。
ゼノン:人の私物を勝手に弄るなよ。
カフェリア:まあまあ良いじゃないか。悪魔との交流なんて滅多にできることじゃないんだから。
ゼノン:俺の短い人生が特例過ぎてそれを実感できないんですけど。
まあまあ、いいじゃないか。とりあえず、今回は人間の魔術について語っていきたいと思う。ではまずゼノン君。魔術の源流たる悪魔や吸血鬼を差し置いて魔術の祖と呼ばれている人物を答えよ。
ゼノン:白きヒト。本名はアルマス・クロックだよな。妖精の国やエリエス島ではいろいろと助けてもらったな。
正解だ。では続けて問おう。アルマス・クロックはいつ生まれた存在だ?
ゼノン:本人談だけど確か千年ぐらい前だったと思う。
その通り。連続正解とは幸先がいいな。では、カフェリア・ミーキストリー・スターズリーに問おう。我ら七曜において魔人と呼ばれた男の名は?
カフェリア:アルマスだろう? リンゴ頭にキャンディーケイン、時々視るんだよ。
ゼノン:同名。親族とか? いや、それなら同性か。
クロック姓はお前含めて多いからそこからの特定は無理だぞ。まあ、血縁関係がないことは確認済み。
カフェリア:問題に出したということは関係はあるんだよね?
ああ、偶然か因果か名前が同じ。そうだな。一旦、白ガキとリンゴ頭って呼び分けるとしようか。
ゼノン:流石に白きヒトと魔人にしとこうぜ。
しゃあねえな。白きヒトと魔人だな。では本題に入っていこうか。まず人間の魔術を語る上でこの二人は避けては通れない。時系列も考えるならばまずは魔人について語るべきか。
魔人アルマス。今は遠き遥かな過去。神代の最初期。原初の神が世にあった頃に人として生まれたと聞いている。俺が魔人を認識したのは既に己を改造し不死の魔人と為った後のことだった。
ゼノン:不死って再現できるものなのか?
不死と言ってもアプローチは様々だ。例えば白きヒト。あれの不死のメカニズムは何だと思うか? ゼノンは、無理だな。カフェリアに答えてもらおうか。
ゼノン:俺はわからない前提かよ。その通りなんだけどさ。
カフェリア:仕方ないさ。これは知ってるかどうかの問題だからね。白きヒトの不死のメカニズムだろう? それは簡単さ。基底状態の再設定だろう?
正解。流石博識。
ゼノン:つまりどういうことだ?
カフェリア:そうだね。例えば氷をこの空間においておくとどうなる?
ゼノン:溶けて水になる。
カフェリア:では熱湯は?
ゼノン:冷めて水になる。
カフェリア:こんな風に物って安定した方向へと変化する。じゃあ、生命って安定してると思う?
ゼノン:不安定だな。
カフェリア:だから普通不死を目指す者達はその不安定な状態をどうやって維持するかっていろいろと試行錯誤する。精霊との契約はその一例だね。寿命はうんと延びる。でもそれは不死じゃない。何なら不老ですらない。
ゼノン:だから、何らかの方法で生きてる今の状態を基底としたと。
カフェリア:そういうこと。
主催者抜きで盛り上がらないで貰えます? まあ、理解できたのならいい。白きヒトはその青年であった頃、不死となった。ではどうやって? 確かに彼には異能があった。非凡なる才能もあり、友にも恵まれた。だが、それは誤差だ。ここで問題だゼノン君。どうやって白きヒトは白きヒトと為ったと思う?
ゼノン:話の都合的に魔人の後継になったからとか?
そのとおり。魔人は自身が不死になった方法と同じ方法を白きヒトとなる青年に施した。
今思ったんだけどかなり話脱線したな。えーっと、何話してたっけ? 日記ちょっと貸して?
ゼノン:うわ、マジで書かれてる。
なるほど、リンゴ頭の紹介をしてる途中だったか。
ではそこまで話を戻しまして、魔人は不死となってから様々な魔法使いと出会ってきた。そこで多くの声を聴いた。嘆きも多かったという。魔法というものは一代限りで終わってしまうものだ。爪痕を残せても爪そのものは自身が死ねば終わってしまう。
その結末を知っていて覚悟をしていても、いざその時が来ると魔法使いたちは後悔したそうだ。まだ、やり残したことがあると。目的は千差万別。だが、満足いく結末まで辿り着いた者達は数えるほどしかいなかっただろう。
だからこそ、こういう人間が現れるのは必然だったのかもしれない。
『みんなが共有できる魔法を作りましょうよ』
魔法使いでもないウルという少年がそう言った。バカだと妄言だと若者たちはその言葉を嘲笑った。だが老人や長きを生きる者達はそれはアリだと肯定した。
打ち立てられたスローガンは『一人の奇跡を万人の技術に』。数千じゃ足りない、数万年、数十万年の物語が魔術にはあった。
ゼノン:魔人の役割はなんだったんだ?
あいつはバカだったからな。運ぶ者であった。研究を引き継ぎ、受け渡す。そしてまた引き継いで、受け渡す。でも馬鹿でもずっとやってればわかってくるんだ。人間には無理だと。人間皆が画一的に魔法を引き起こせるようなものはないとわかってしまったんだ。
カフェリア:悪魔式の魔術ではダメだったのかい?
ゼノン。お前は妖精の手助けなしで悪魔式の魔術を修得できたか? そしてそれを人の力だけで次代へと引き渡すことはできるか?
ゼノン:無理だと思う。俺もなんとなくの感覚で使ってるし。
そういうこった。人間は魔法をなんとなく使う。なんとなくでしか使えない。理論化しても誰も理解することができないだろう。
何度も失敗して魔人はようやくその事実を認めた。だからこそ、今までの全ての研究を破棄して一から研究を始めた。一番最初に思いついて却下した案をな。さて、ここで問題だ。ゼノン。才能、感情、疲労具合など、魔法は簡単にそれに影響される。そんな中で万人が同じ魔力、同じ魔法陣、同じ呪文で同じ結果を得ようとした場合どうすればいいと思う?
ゼノン:根底の魔法を滅茶苦茶簡単にしておくとか?
なるほど。いい案だ。だが人間にとって万人が同じように扱える魔法は残念ながら存在しない。答えは、誰か一人に全て代行してもらえばいいさ。
カフェリア:なるほど。それは、おぞましいね。
生贄を一人。それを世界に魔法を刻み付ける。特定の魔力が送信されるとその魔力を元手に魔法を発動させるように設定しておけばいい。不変不死、そしてそこから感情を抜けば完璧な代行役の完成さ。
ゼノン:生贄になったのは。
勿論魔人さ。そして、完成させたのは白きヒト。魔人一人では最後の仕上げはできなかった。だからこそ、最後に本当の意味で後世に託したのさ。リンゴ頭は結局バカだったからな。
カフェリア:とりあえず、人間式の魔術というのは魔力を用いて魔法を使うだけの機構と成り果てた魔人を起動させて、超常という結果を得ているということで良いのかい?
そうだ。おもしろいだろう?
ゼノン:ここで言うのは雰囲気をぶち壊しそうなんだがいいか?
大丈夫だ。
ゼノン:白きヒトの影薄くね?
それは俺の語りが悪かった。
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黒鎖
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