六百日目
太陽暦935年 12月25日(木) ?
ケル 935歳
終焉の鐘が鳴る。
風は泣く、風は無く、風は亡く。
形容するならば時が止まったよう。
静寂を破ったのは手から滑り落ちた武器の音だった。
「無理だ」
次に零れ落ちたのは言葉だった。
カラン、カランと音が増える。
絶望が押し寄せる。
未来が押し潰される。
今、ここに、終焉が具現した。
そう、思われた。
「総員、構え」
しかし、この絶望を前にして立ち上がる者もいる。
声を発したのは人間であった。
絞り出したようなかすかな声であった。
しかし、その言葉は確かに聞こえていた。
布ずれの音。武器を拾い握り直す音。
人間、悪魔、白獣、・・・。その中には魔物の姿もある。
絶望が押し寄せるのならば、希望が押し寄せるのも道理である。
「これは勅令である! 総員、構えぇ―――!!!!」
大気震わす大音声。
その男の名はゼノン・クロック。
「作戦、開始」
太陽が出現したかのような眩い閃光。魔力の介在しない、物理的な爆発。
今ここに魔王との戦いの火ぶたが切って落とされた。
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さて、僕なりに戦いの始まりを書いてみた。
如何だい? 文才の欠片もないが、評価は読者に任せるよ。
決戦の動向について記録しておこう。
まず、正午0時。古の魔王の呪いが降臨した。
その姿、一見すると人型であった。
頭はあるが、顔はなく暗い靄に覆われている。
胴体はあるが、左肩から下はなく、右腕はあれど手首以下はない。
左脚は太ももから下が消失しており、無事なのは右脚だけだ。
このような姿になっているのは狭間の妖精殿による妨害工作のおかげなのだとか。
目は魔眼、口は呪言、両手は陣を描くこと。これを封じることでよりかなり弱体化させることができているのだとか。
しかし、その姿を確認できたのは戦いが始まってから数時間も経過した後の事。
降臨した瞬間、それに纏う呪いにより我々は心を折られてしまった。姿を直視することもできず、理解を拒絶した。
だが、ゼノンがその絶望の最中で一歩を踏み出した。
降臨してから時間にして十秒。たったの十秒。しかし永遠にも感じられたような十秒だった。そこから、我々の戦いは始まった。
初撃にして現在も続く攻撃。それが始まった。
からくりも特にはない。兵器全てを使った一斉放射。目的は呪い、魔力をそぐこと。あらかじめ脆弱していた地盤を破壊し、空中に放り出された標的を全方位から砲撃する。
現在もそれは継続中だ。
進捗としては姿を確認できるほどまで呪いを排除することができているということ。
不安な点は反撃がないということ。
はてさて、どう転ぶやらか。明日も日記を書けることを期待しよう。
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卒論が終わらなくてヤバい




