六十日目
太陽暦934年 7月4日 曇り ゼノン=クロック 16歳 所持金104350スター、15246マニー
日記を始めて約二か月。冒険者になったばかりの俺はまさか、その二か月後には奴隷になっており、修行もできる最高の環境で生活しているとは思うまい。
今日俺はカフェリアに日記を読まれた。
「このノーフェスっていう魔法使い。結構凄いんじゃない?」
カフェリアは日記を読みながらそう呟いた。多分、魔族とノーフェスの戦いを読んだのだろう。どうやら、妖精の力というものなのか、その時俺が考えていた心情や思い描いていた情景も読み解けるらしい。
つまり、俺が強がって書いていたとしても全部バレていることである。正直めっちゃ恥ずかしい。
「その日の記憶だからとはいえ、ゼノンの記憶を完全には信じ切れないけど、魔族と対等に戦える人間は人にしては十分強い。普通の魔族を倒すためには大学を出た魔術師十人必要と聞く。まあ、妖精なら相性もあって百人の魔術師も蹴散らしてしまうけどね。」
どうやら、人間が魔術や魔法を主体として戦う場合、生物的なレベルで魔法に対する適応の差が大きくあるのだとか。同じような魔術を同じ過程で発動させた場合、人間ならそれこそ十人が瀕死の状態まで疲労する場合も魔族なら呼吸をするように軽くしてしまうらしい。
「ちなみに肉体で勝てるとか思わない方がいいよ。せめて、熊を素手で制圧できるぐらいじゃないと。」
うん、無理。熊なんて武器があっても相手にしたくない。
ついでに、魔術を生み出した魔術の祖ならどうかと聞いてみた。
「ああ、あれを組み上げた変態か? あれはそうだな。魔法という点においては僕や魔法を極めんとするような妖精たちなら上回れるだろう。」
含みのある言い方をしながらカフェリアはそう言った。妖精は魔族以上に魔法に対する適正が高い。魔族が魔術の天才集団なら、妖精は理不尽の権化こと魔法使いばかりだ。
百龍の妖精のあの龍や、カフェリアのこの空間も魔法、多分、ライグーンが怪我をした原因である森の荒れ方も魔法のせいだろう。
そんな理不尽を相手に魔法で戦えるなど、魔術の祖は本当にすごいなと思っていた。でも、魔術の祖はその程度ではなかった。
「戦いという土俵なら、あれに勝ち切ることはほぼ不可能かな。それこそ、魔王やかの大悪魔、白獣とかじゃないと完全な勝利を掴むことは難しいかも。」
なんと、戦いという面ならそれ以上に優れていた。
「人間には黒騎士や光の英雄、超人みたいな例外があるからね。君もなれるといいね。応援はしておくよ。」
こんな会話をこの後も続けた。カフェリアは話の方が楽しかったのか日記は俺が書いた最後のところまでは読まなかった。正直、カフェリアについての印象も書いていたので読まれなくて良かったと、とても思います。




