五十八日目
太陽暦934年 7月2日 大雨 ゼノン=クロック 16歳
さて、今日も今日とて訓練の日々である。
レイは本当に強い。全く勝てない。魔法とか元の身体スペックとかは全く関係ない。只々単純に剣の技量が上手いのだ。
剣の上で転がされてるというのか、千手先を読まれていると言えば良いのか。何をやっても最適解を返される。一瞬取ったと思っても足を引っかけるのがオチである。
ここまでの技量の冒険者がハルルには居ただろうか。いや、ない。
「実はこれ、俺の我流なんだ。貴族や騎士に伝わる黒雷流は俺もまだまだ未熟でさ、執事のじっちゃんはボコられてばっかり。でもさ、じっちゃんはもう十分だって言ってこれ以上訓練を付けてくれないんだよ。どうしてだと思う?」
レイはそう言っているが、執事のジャーニーが言うことは十分にわかる。正直、こいつは型とかに嵌っていたら弱くなる。彼の強さは剛剣や正剣ではなく、流れるような柔剣や奇妙な剣筋で相手を翻弄する変剣だ。
伝えられていく内に変化していった黒雷流は正直、彼の剣筋には合っていない、と素人意見だけど思う。
まあ、俺や執事さんとレイでは剣術に対する考え方が違うのだ。
「剣っていうのは本来は敵を打ち倒すためのものであるが、俺にとってはあんまり興味ないんだよね。良い大学に入って、どっちか言うと文官になりたいから。俺痛いの嫌いなんだよね。」
彼にとっては剣術は大学のテストを受かるためのものであって、生き残るためのものではない。だからこそ、彼は型に嵌った剣を学びたいのだろう。
才能とやりたい事は別であるとは難儀なものだな。
「お前も才能はあると思うよ。飲みこみめっちゃ早いし。お前が妖精だったら騎士団とかに入って俺みたいなペーペーじゃなくて、しっかりとした妖精騎士たちに育てて貰えるからもっと強くなれると思うぞ。」
妖精騎士団か。そう言えばライグーンがそんなこと言っていたような、言ってなかったような。あいつ元気かな。
それにしても、鍛えるか。もっと強く、もっと賢くならないと、俺は魔王には敵わないだろう。
そう言えばと思って、カフェリアに魔王のこと聞いてみた。何か情報がないのかと。
「僕が魔王について知っていることを教えて欲しいだって? 奴隷が王女様にお願いとは随分偉くなったね。良いよ。教えてあげる。僕のお気に入りのお願いだからね。」
後々が怖いが、カフェリアは魔王について一つ教えてくれた。
「この私でもあれを詳しくは知らない。でも、一つ聞いたことがある。あれは元々ただの道具だったとね。まあ、最上の、だけど。だからこそ、それを倒すためには同格の道具が必要となる。そして、それは過去の歴史が証明している。事実、過去、魔王に挑んだ英雄は誰一人として白いヒトには選ばれなかった、からね。」
他にも多くを言っていたが、関係なさそうなのでバッサリとカットさせてもらった。取り敢えず、魔王討伐に重要なのは「白いヒト」ということがわかっただけ良しとしよう。




