四十九日目
太陽暦934年 6月23日 雨 ゼノン=クロック 16歳
本日も、檻の中からお送りしております。
今日は暇だったので俺を捕まえた妖精と話をした。
「すまないが、お前の魔法は把握している。不用意に出すようなことはしない。」
油断させて檻から抜け出せるかとも思ったが、そうはいかない。
昨日彼の右腕には数十の巨大な龍が生えていたが、今はその龍の姿はない。まるで右肩から下を失ったような姿であり、その右肩には暗い靄がかかっていた。
「得手不得手はあるが、妖精は嘘を見抜く力がある。下手な嘘はつかないことだな。」
彼は俺の流星に気が付いており、俺を結構警戒していることがひしひしと伝わってきた。なので、これでは隙をつくのは無理だなと思い、素直に情報を引き出すことに専念することにした。
「僕は何の妖精か、だって? そうだね。異形種では満足しないだろう?」
彼は話すのが好きなのか、長い時間俺と付き合ってくれた。
「正直に言うと僕もわからない。というか、自分が何の妖精かを知っている妖精はいないよ。あくまでも、性格や能力から予想しているだけ。」
妖精の種類は尋常じゃないらしく、一口に妖精といっても、そのカテゴリーの広さは生物にも比類するとも過言ではないのだとか。
妖精に同種は存在しないらしい。全ての妖精は例外なく別種であるらしく、同じように見えてもちょっとずつ違うらしい。まあ、それは俺達人間もほんの少しの差異はあるし、当たり前と言えば当たり前なのだろう。
「その上で僕は百龍の妖精って呼ばれてる。」
彼がそう言うと、大小さまざなな龍が彼の右肩から現れる。
「正直、僕も全員を把握している訳ではないけど、そこらの妖精はこいつらの中の一匹でも蹂躙できるぐらいの腕っぷしはあるよ。」
龍がこちらを睨みつける中、彼はあっけらかんとそう言った。マジでこの妖精怪物級にヤバいなと思った反面、仲間になってくれればとても心強いなと思った。
「餌じゃないよ。帰った帰った。」
龍たちには俺が餌に見えていたようで、少しちびりかけたことは秘密にしておいて貰いたい。
その後も楽しく雑談していたのだが、どうしてお金が必要なのかを問うと、彼はそれ以降、黙り込んでしまった。どうやら地雷を踏みぬいてしまったようだ。
明日には何事もなく話し合えるようになっていると良いなと思った。




