四十八日目
太陽暦934年 6月22日 雨 ゼノン=クロック 16歳
う~ん。何という事でしょう。
今日の日記は檻の中からお送りしております。
何があったのかを簡単に説明すると、人間とバレて捕まりました。
いつも通り、猛獣を狩ってから、血抜きとか処理をしてたときだよ。それを他の妖精に見られて
「おいおい、何でそんな面倒なことやってんだよ。もっと楽にできるじゃん。」
と話かけて来られた。魔法を使わないことを疑問に思ったのだろう。どうやら、妖精にとって魔法は手足のようなものらしいので、ヒトでいうところの手を使わずに作業をしているように見えたのだろう。
こっちの方がおいしくなるんだと言ったが、怪しまれたのか、その妖精は俺をジーっと見つめてきた。そして、―
「お~、珍しい。お前人間なのか。みんな~、人間がいるぞ!!」
そう言って、彼は町の妖精たちにそう呼びかけた。すると、一部の妖精は目の色を変えて、俺を追いかけてきた。
そっから先はお察しだ。まだ明るく、流星も使えない俺は逃げるすべもなく、一瞬に魔法によって囚われた。
で、おもしろかったのはこっから先。人間には法による加護がないので、誰にもまだ所有されてない物という扱いらしい。そのため、妖精たちはこぞって俺の所有権を宣言し始めた。人間奴隷は高く売れるらしく、金目的で手を上げる妖精。面白そうだから便乗するという妖精などなど。
初め話し合いだったが、結局魔法や拳の飛び交う戦場となってしまった。ヒト種、獣人種、小人種、獣種、蟲種、異形種等々いろいろな妖精が入り乱れて戦う光景は圧巻だった。
勝者は異形種の妖精だった。小さな少年の様な外見だが、右肩から先には複数体の龍が生えており、その龍の一体一体が、火や水、雷などの属性を持っていた。少年の龍は一気に荒ぶる妖精たちを蹂躙していき、俺の所有権を得たという訳だ。
で、彼の目的は特になかったらしく、取り敢えず、俺を檻に入れて奴隷商に売りつけるようだ。
「すまないが、僕はお金に困っているんだ。」
取り敢えず、抵抗ができ訳でもないので、脱出の機会を見ながら今は大人しくしようと思っている。それこそ、檻から出れる瞬間と夜が被るタイミングを待とうと思う。その瞬間、流星でおさらばと言う作戦だ。
正直全くうまく行く気がしないな。