四十六日目
太陽暦934年 6月20日 曇り ゼノン=クロック 16歳
今日俺はライグーンにおすすめされた通り、森で狩りをして、その肉を町で売っていた。簡単な味付けをして、移動型焼き肉店として営業していたのだが、思ったよりも売れ行きが良かった。
買ってくれた妖精に話を聞くと、
「昨日のお祭りで、使い果たしちゃったお店が多くてさ。完売ばっかなんだよね。」
「先日の森の事件があったじゃん? それで、いつも狩りをしてる妖精たちがさ全く働いてくれなくてさ。ほんと困ってるよ。」
「衝動買いってあるだろ? おいしいから後悔はないよ。」
結構好評だった。意外と商才あるのかな?
いや、ないな。調子に乗らないでおこう。
それでもここまで稼げたのは驚きである。少なくとも、猛獣退治の依頼よりは稼げるだろうな。まあ、他の飲食店が復活し始めたら間違いなく売り上げは落ちるだろうが、結構な額を稼げたので当分の心配はないだろう。
ライグーンは王都に用事があると言って、南の町を出て行った。
「ゼノンが無事に帰ることを願ってるが、まあ、そうだな、縁があったらまた会おうぜ兄弟。」
彼にはいろいろとこの世界のことを教えて貰ったが、本人、いや本妖精的にはまだ恩は返せていないらしい。どこまで恩義深い妖精なんだよ、と思った。
で、今一番考えなければいけないのは帰還方法だ。ライグーンが迷い人と言っていたことから、過去、この妖精の国に来た人たちの情報が欲しいところである。もしかしたら、元の世界に帰る方法を編み出した偉大な先人がいるかもしれない。
その情報を得るためにはやはり図書館が一番だろう。幸いなことに俺達が使っている言語と妖精の扱う言葉は同一の物であった。
だが、ここで大きな問題が一つ。この町には図書館がなかった。いや、あるにはあるがとても小さなところで子供用の絵本ぐらいしかなかった。
大きな図書館は北の町、そして王都にあるらしい。どっちもダメじゃーんととても思いました。流石に焦ってそっちに行って死ぬのは御免だ。
ノリで魔王退治に乗り出した馬鹿な何言ってんだって?
それはそれ。これはこれ。
誰だって本筋じゃないところで死にたくはないでしょう。
取り敢えず、今後の方針としては獣肉を売りながら、忘れ病の振りをして情報を集めようと思う。
明日も取り敢えず頑張りますか。




