四十四日目
太陽暦934年 6月18日 曇り ゼノン=クロック 16歳
気が付けば朝になっていた。
しっかり見張っていたのか、だって?
勿論さ! と言いたいところであるが、実際は途中から寝てしまっていたようだ。昨日はそこまで疲れるようなことは、結構してたな。まあ、死んでいないなら問題ないよね。
そして、昨日助けた犬か狼の獣人か分からなかった人だが、彼は朝起きたときには川で体を洗っていた。
「よう兄弟。昨日は助かったぜ。俺は西の森の妖精、獣人種のライグーンだ。仲よくしようぜ!」
彼、ライグーンはそう言ってサムズアップして俺に話しかけてきた。彼は町に行くために森を横断していたところ、突然の暴威にさらされてしまった被害者らしい。正直、戦いを起こした張本人たちじゃなくてとてもホッとしている。
「あんたは、ヒト種か。何処出身だ? やっぱヒト種だから東の町か? それとも王都の妖精だったりするのか?」
ライグーンはぐいぐいと俺に聞いてきたが、俺は正直に自分の名前や出身などを話した。するとライグーンは少し困った顔をした。
「そうか、迷い人かぁ~。時々境界を越えてくる輩がいるとは聞いたことがあるんだが、それが本当なら厄介だな。」
彼の口ぶり的にこの空間と俺達が普段いた世界は空間的に断絶されているらしい。
詳しく聞いてみると、互いの世界は一応影響を及ぼしあうのだが、それはとても微量なことらしい。
「で、正直そんなことはどうでも良いんだ。今、問題なのはお前が迷い人であるという事だ。大抵の妖精っていうのは好奇心旺盛でな、珍しいものを見ると遊びたくなっちまうんだ。お前なんて、攫い屋に捕まって奴隷にされて遊び殺されるのがオチだろうな。」
妖精怖って思いました。
「でだ、助けて貰った礼にいろいろと情報をやる。まず、妖精でない以上、お前は法に守られない。次に、俺達妖精には忘れ病という記憶を失う病がある。それを上手く利用しろ。そして、町についてだが、北の町、北の森、そして王都だけには絶対行くな。そこ三つは妖精としても格が違う奴らがうじゃうじゃいやがる。人なんていう弱者は抵抗できない。ひっそりと暮らすならはずれで静かに暮らすのが正解だろう。」
ライグーンはその後もいろいろと丁寧に教えてくれた。取り敢えず彼が一番強調したのは、人であることにバレるなということであった。それについては気を付けようと思った。
あと、ライグーンに俺は何でここまで丁寧に教えてくれるのかを聞いてみた。
「そりゃ、助けて貰ったからな。俺は恩義には報いる妖精なんだ。なんてったって俺は元妖精騎士団の一員だからな。そこらの好奇心に振り回される馬鹿妖精とは違うんだよ。だから安心しろ兄弟。」
と言ってくれた。正直というか、普通にとても嬉しかった。
取り敢えず、俺達は一緒に町に向かうことになった。
ちょっとの間だけど、ライグーンにも稽古を付けて貰いたいなと思った。




