十一日目
太陽暦934年 5月16日 雨 ゼノン=クロック 16歳
今日は雨であり、依頼も特になかったので、図書館に行って本を読んだ。冒険をするためには知識が必須であるのだが、そう言えばまともに地理とかを勉強したことはなかったなと危機感を持ったので修行よりもこちらを優先させた。
本を読んでみてまず驚いたことは、各地の識字率の低さであった。都市部はそれほどでもないのだが、村とかはひどい。二人に一人、三人に一人、場所によっては十人に一人ですら読み書きができる人がいないところもあるそうだ。
この町は港町ということもあって、交易などで文字を使う機会が多く、そのため読み書き計算ができるのが当たり前なんだという。
まあ、そういう話は置いておいて、世界の地図を見てみた。すると驚いたことに世界は球体をしている説があるのだとか。かなり昔の文献なのだが、直進をし続けていたはずが元の場所に戻ってきてしまったということを記した冒険日記があったのだそう。
方向音痴だったんだなで片づけてもいいんだが、面白い説だったので覚えておこうと思った。
取り敢えず世界地図を見て俺が行くべき場所を確認する。まず、最終到達目標である魔王城は世界の南端。魔大陸の中心にある。魔大陸は極寒の地であり、生身の人間では生きることすらできない氷の大地らしい。
魔法とか使える人に仲間になって貰ってどうにかするのが定石だとか。
で、問題はそこに向かう経路である。魔大陸周辺の海は途轍もない潮の流れであり、まともに航海ができないとのこと。なので唯一、潮の流れが比較的に緩い南東の大陸の南端から船で渡るのが良いとのこと。
ちなみに渡るために陸路メインで行くためには大陸に行くためには俺は一度北に行ってから東に進み、南へまた下がってくる必要がある。
具体的には今、俺達の住むのはハルル島から脱出して、まず、ユーラ大陸に船で向かう。そして、砂漠や草原地帯を北上し、寒帯地域に向かう。そこで東に移動し、ユーラ大陸からその隣にある北アーカ大陸へ細々した島々を船で渡っていく。
そして、後は南に下っていく。北アーカから南アーカ、そして魔大陸へ。ちなみに言っておくと人類圏はユーラ大陸だけである。
今日はそこら辺で頭が痛くなったので適当に昔話や神話を読んでいたのが、一つ気になるところがあった。話ではよく、この上なく愚かなことをしている人に対して、「竜を海で殺す気か?」みたいな言葉がよく使われていた。海と竜は何か関係があるのだろうか。
あと、魔王についての情報も少し書いてあった。魔王は別名で「泥の王」と呼ばれている。魔王の放出する泥は万象を焼き飲みこむとのこと。その体躯も規格外に強靭で歴史上でもその体に傷を付けた者は数えるほどしかいないという。
うん、無理ゲーだね。聖剣とかあったら何とかなるかな。