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 弓を背負い、エインティータさんは極上の笑みを浮かべている。弓の出し入れは嬉々としていたが、弓を収納したままでいるのは嫌だったのか膝の上に置こうとしたため、母さん流の背負い方を紹介したのだ。つると弓の間に頭を入れ、弦を胸元に引っ掛ける方法は、本来なら厳禁のはず。ただ映画ロードオブザリン〇ではそうしてたし、弓も意識のある重さ(ゼロ)のファンタジー弓だから問題ないのかもしれない。エインティータさんの「翔さんと私の子供をおんぶしているみたいで気に入りました」との発言は、大問題だったけどな!

 その大問題発言から気を逸らすことも兼ね、つい数秒前の会話によって長年の疑問が解けたかもしれない件を話題にしてみよう、うんそうしよう!


「そうそうエインティータさん」「はい、なんでしょう」「翼さんと交流してたんだね」「え?! なぜそう思われたんですか」「なぜってついさっき、翼さんを友達っぽく呼び捨てにしてたじゃん」「ああ、やってしまいました~~」


 エインティータさんは頭を抱えてオロオロしだした。悪いがそれを放置し、俺は今後の展開を考察していく。


『10代前半の人族にしか見えない振袖娘の容姿は、翼さんが13歳で初めて振袖を着た時を真似たと推測していたけど、交流があったのならほぼ確定として良いかもしれない。とはいえ、根本的な動機を探ろうとするのは要注意。藪蛇になる予感が、少しするからだ。エインティータさんが進んで白状しないなら、無かったことにするのも視野に入れておこう。という考察が筒抜けにならぬよう心の一部を隔離分割して行ったので大丈夫と思うけど、さてどうだったかな?』


 というように、心の隔離分割が妖精長に有効か否かの実験も兼ね黙っていたところ、オロオロを止めたエインティータさんは心もち俯きつつも、翼さんと友達付き合いしていることを自ら進んで白状した。俺が6歳だった頃まで遡る長編白状物語は、こんな感じだったな。


『妖精族にとって星母様は半ば伝説の存在だったが、何事にも例外はある。妖精族の長であるエインティータさんだけは、秘密裏に会うことが稀にあったそうだ。それもあり、星母様が人族の6歳男子つまり俺と密に交流していることを知ったエインティータさんは俺に興味を覚え、遠くからしばしば俺を観察していたという。降臨した星母様を盗み見るのは憚られても、6歳児ならプライバシーを侵害しない限り構わないだろうと思うのは、まあ普通だからね。俺も文句ないので話を先へ進めると、土地神はテレポーテーション出来ることもあり妖精族としてはかなりの高頻度で俺を見に来ていたエインティータさんは、俺と翼さんの出会いに衝撃を受けたらしい。衝撃の詳細は伏せられたが相当だったのだろう星母様が現れ、「翔に内緒で翼と交流してみなさい」とエインティータさんに勧めたそうだ。そう何と翼さんは俺より6年も早く、エインティータさんと交流していたのである。言うまでもなく内緒にされたからって、腹を立てたりはしないけどさ。

 星母様の、もういいや母さんの勧めということもあり翼さんも交流を二つ返事で承諾し、母さんの仲介で二人は顔を合わせることになった。すると瞬く間に意気投合し、エインティータさんはどちらかと言うと女性面が強かったため、この方が話しやすいということで翼さんと同性同年齢の人族の姿になった。すると二人は益々意気投合し、そして三カ月ほど経った新年。翼さんの振袖姿を見たエインティータさんが「翼の振袖、私も着た~い」と本音を漏らしたところ、なんと母さんがそれを叶えたそうなのである。その時のことを涙ながらに回想するエインティータさんに、今夜母さんに会ったら俺からもお礼を言っておこうと心にメモしたところ、「今夜は翼に会って私は明日にしなさい」とのテレパシーが送られてきた。明日の分を前倒しし直ちにお礼を述べた、俺だった。

 話を戻すと、寮生活をする翼さんと、テレポーテーション可能なエインティータさんは、翼さんの体育館の生活スペースで月に一度お喋りするのが恒例だったらしい。翼さんの癒しに大層なったに違いないので俺からもお礼を述べたところエインティータさんはクスクス笑い、今のお礼に関する二人の意見の変遷を話してくれた。それによると、自分達が友達だと俺にいつかバレたらバラした方に俺は必ずお礼を言うとエインティータさんは最初から確信していたが、翼さんは当初「そうだったらいいな」系の希望を口にするのみだったという。しかし年々エインティータさんに同調するようになり、そして18歳の8月下旬以降の翼さんは、エインティータさんに完全同調するようになった。それは翼さんが意志のアカシックレコードで俺と夫婦になる世界線を体験した以降だったため、二人は抱き合って大泣きしたそうだ。む、むむう・・・

 動揺したので話を進めるとその7か月後、戦士になった俺がこの基地にやって来た。エインティータさんは翼さんに明言したとおり本来の中性的な容姿で俺と初体面したが、振袖娘になりたいという想いが日ごと募り、思い切って翼さんに打ち明けた。すると翼さんは偽りなく大賛成し、エインティータさんの振袖を数年毎に新調する長期計画を一緒に立てたそうだ』


 といったことを、エインティータさんは自ら進んで白状したのである。その最中、俺は鷹揚に頷いていたがそれは演技にすぎず、心の中では翼さんに感謝の五体投地をしていた。もちろん心を隔離分割したから大丈夫なはず・・・えっと、大丈夫だよね?!

 ヘタレな俺は大丈夫か否かを直視できないので開き直って脇に置き、そういえば母さんに土地神が振袖を着るようになった理由を尋ねたら、


「世の中には知らない方が良いこともあるのです」


 と返されことが以前あったんだった。つまり母さんがあのとき濁した真相を、今俺はエインティータさんに教えてもらったという事なのだろう。う~む明後日の夜、母さんに小言の一つや二つ垂れたい気分だ。でもそれを見越して母さんがションボリ現れたら、俺はすべてを許してしまうのだろうな。今更だし、全然いいんだけどさ。

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