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 幸せそうな母さんに頭を撫でてもらうのは、俺の心を嬉しさ一色に染め上げるのが常でも、今回は違った。俺が美雪の心を説明した時の美雪の方が、母さんに撫でられた嬉しさより気になったのである。美雪は嬉し涙を流す寸前になるも慌ててケーキを頬張り、ケーキの美味しさで嬉し涙を無理やり封じるということを、したのだ。

 その行動自体は首を傾げても、行動の目的は明白だった。『美雪は俺と母さんの会話を邪魔せぬよう、懸命に努力してくれている』 これが、美雪の目的と考えて間違いないはず。ならば、俺の選択肢は一つしか無い。それは美雪の願いを叶え、母さんとの会話に集中することだ。かくして会話に全力集中したところ、その甲斐あって訂正と補足を当てることができ、母さんにとても喜んでもらえた。母さんは片手の撫で撫でを両手に替え、髪を盛んにワシワシしたのである。しかも手の平を物質化したため、俺の髪はグチャグチャになった。にもかかわらず、どうしようもなく嬉しくて尻尾をプロペラ化した俺に、今度ばかりは耐えられなかったらしい。美雪と冴子ちゃんも加わり、女性陣は大笑いした。釣られて俺も笑い転げ、四人による爆笑が落ち着くのを待って、母さんは三つ目の真相を明かした。


「三つ目は真相というより、翔に注意して欲しい事実ね。翔がさっき言った『巨大な権力を長期間保持してきた支配者も、お金で失敗すると支配力が低下する』からまとめの最後までは、私と美雪と冴子なら平気だけど、一般的には端折り過ぎなのが現実ね。7歳のアトランティス人の平均精神年齢を地球人に換算したら幾つになるか、翔は覚えている?」

「えっと、3歳から7歳までは地球人の二倍で成長しますから、11歳です」

「そう、11歳ね。では地球の11歳に私が指摘した個所は、ううん今日の講義開始から今までの翔の発言は、理解可能かしら?」


 俺は頭を抱えた。明日以降の俺の苦労を、やっと正確に思い描けたのである。そんな俺に「私は独りごとを呟く。独りごとだから質問しないであげてね」と、母さんは請うた。


「アトランティス人をもってしても翔の発言を理解可能な同年齢の子は、一桁前半しかいない。そして三大有用スキルを持たない翔がその子たちと()を組むには、半世紀以上の努力が不可避」


 独りごとが終わったのか、それとも母さんの無限の優しさがそうさせたのかは定かでないが、母さんは俺の顔を見て続きを話した。


「寂しかったら、母さんと美雪と冴子にいつでも話しかけるのよ」

「そうよ、話しかけてね」「友達のよしみで、いつでも聴いてあげるわ」


 感極まり頷くだけしかできない俺をよそに、「巨大な権力を長期間保持してきた支配者も、お金で失敗すると支配力が低下する」への補足を、母さんはサクサク述べていった。


「お金の失敗には『大損する』や『赤字になる』という意味のほかに、『金銭欲に負けて道を外れる』という意味もあるわ。特に後者は、個人や組織の真贋を見極める指標になるの。表向きは高貴な行いをしていても、裏であくどい金儲けをしていたら、偽物と考えて間違いないからね」


 仰るとおりと膝を叩いた俺はその後すぐ、打撲するほど勢いよく膝を叩くハメになった。母さんが、まこと穿った話をしたのだ。


「またこれは、宇宙人を見極める基準にもなるの。地球より進んだ星の宇宙人を自称する者達のテレパシーには、真贋の見極めが難しいものもある。そういう時は、金儲けに利用しやすい言葉がテレパシーに含まれているか否かを見れば良い。金儲けに利用しやすい言葉が含まれている場合、テレパシーに感銘を受けた人達は最初こそ高貴な行いをしていても、金銭欲に少しずつ負けていく。具体的な話をせず『波長を高く保つ』や『愛の波動を心がける』系の抽象的なことばかりを延々と述べる講演会の主催者が、その好例ね。仮に私が、次元上昇とアセンションの講義を翔にするなら、半年を費やさねばならない。一見無関係な多種多様な分野を理解してもらわないといけないから、それくらいの期間が必須になるの。譬えは悪いけど、大聖者の直弟子のもとで学ぶ孫弟子のもとで学ぶ曾孫弟子になるだけでも、日本の難関国立大学に入学するのと同程度の知識量と、プロの職人として食べていける技術と同程度の技術が必要になる。抽象的な話を繰り返す暇なんて、一秒たりとも無いのが実情なのよ。ではなぜ、そんな講演会ばかりを開くのか? (こたえ)は簡単、主催者はそれしか知らないから。では知らないのに、なぜ講演会を開くのか? それはお金になるからで、なぜお金になるかと言うと、お金になりやすい言葉がテレパシーに複数含まれているからなの。個人的には次元上昇とアセンションが、その二大言葉ね」


 母さんはその後、恒星間飛行の真相を教えてくれた。母さんによると恒星間飛行は、「四次元に距離はない」を利用した移動方法らしい。よって宇宙人が他の恒星から本当に来ているなら、宇宙の実情に合致する四次元を熟知していなければならない。なのになぜ地球のスピリチュアリスト達は、三次元に時間を加えたのが四次元で、それに愛や調和を加えたのが五次元という定義を使っているのか? 愛や調和を深められるならそれで良いではないかと主張する人もいるだろうが、その定義のまま進むと、七次元に大きな罠が待っている。創造主と間接的にしか繋がっていない間接霊が、自分達を七次元存在と呼んでいるからだ。母さんが言うにはネットの随所にそれは見られ、テレパシーの送り主である自分達を、「創造主が最初に創造した者」と説明する自称宇宙人がいるという。創造主は初めに間接霊を創り、次に自分と直結する直接霊を創ったから、その点に限っては正しいことを述べていると母さんは溜息をついていた。

 また母さんによると、宇宙人をやたら持ち上げる風潮も、ニケーア公会議以降のキリスト教を彷彿とさせるらしい。全ての人の本体は対等という宇宙の真理とは真逆の方角へ、人々を導いていると感じるそうなのだ。心と本体の差が少なくなるにつれ、本体は対等という本体自身の想いが心に染みわたってゆく。これは、心の成長した者ほど差別や偏見から遠ざかり、心の未熟な者ほど差別や偏見が強くなっていくことからも、容易く理解できるだろう。にもかかわらず「人類を創ったのは宇宙人」や「古代の人々は宇宙人を神として崇めた」系のテレパシーを送ってくる自称宇宙人が、なんと多いことか。本体と共鳴しやすい心を持っていればそんなテレパシーに最初から耳を貸さないんだけどねと、母さんは再び溜息をついた。二度の溜息に、俺の心も沈んでいく。するとすかさず、


「そうそう、翔の集中力増進のため、翔が飛びつく話をしましょう」


 とニッコリ微笑むのだから堪ったものではない。遥か未来に俺が母さんと同じ役目を担うときは、母さん直伝の話術としてこれを使わせてもらおう。と考えていた俺はその数十秒後、直伝云々を完璧に忘れて有頂天になっていた。


「翔は反重力エンジンを学ぶ下準備をしているわよね。でも準備が整うにつれ、反重力エンジンの名称は正しくないと理解できるようになるの。よって完全に理解できたら、ご褒美をあげます。一見UFOの形状をしていても大気圏内飛行しかできない疑似UFOに乗っている者達が、宇宙人ではなく地底人なんだってことを、地底世界の詳細をからめて教えてあげるわ。翔、楽しみにしててね」

「ヨッシャ―――ッッ!!」


 椅子から跳び上がって俺が喜んだのは言うまでもない。美雪と冴子ちゃんも「「頑張れ~」」と盛大に拍手してくれたので、喜びの絶頂という意味の有頂天に俺はまさしくなった。有頂天には得意の絶頂という意味もあるから、注意しないとな!

 俺が跳び上がったのと女性陣がケーキを食べ終わったのは、ほぼ同時だった。それ以降は美雪と冴子ちゃんも加わり四人でワイワイ盛り上がったから、9日間に渡る母さんの集中講義は、ご褒美のくだりで終了したと考えるべきだろう。それに気落ちせぬよう、盛り上げてくれているという面もきっとあるはず。ならば俺の選択肢は一つのみ。夕食会がお開きになる午後八時までの二十分弱を、俺ははしゃぎまくって過ごした。

 そうこうするうち八時になり、会はお開きとなった。母さんと冴子ちゃんに「遠慮せず話しかけるのよ」「母さんに比べたら私は暇だから、余計な気を回すんじゃないわよ」と念押しされている最中はどうにかカラ元気を保てたが、「「じゃあまたね~」」は無理だった。しかし涙を止めどなく溢れさせつつも笑顔だけは根性で維持し、「じゃあまたね~」と手を振り返した。それをもって、二人の姿が消える。

 その途端、俺は泣き崩れた。自分でも不思議なのだけど、また会えると分っているのに、悲しくて寂しくて仕方なかったんだね。ひとしきり泣いて少し落ち着いたころ、ずっと寄り添い背中を撫でてくれていた美雪が、俺に尋ねた。


「それよりもっと悲しい涙を私に流させないでって頼んだら、翔はどうする?」


 俺は自分をダメ人間と心底思っている。だが、悲しむ美雪の胸中を察することだけは、及第点を付けていいのかもしれない。


「血の繋がりはなくても、この9日間で母さんと冴子ちゃんを、俺は家族と思うようになった。また会えるのにこうも悲しい理由は、それなんだね。それを基に考えると、それよりもっと悲しい想いを美雪にさせる状況が見えてくる。そうか、俺が戦争から帰ってこなかったら、美雪は今の俺よりもっと悲しむんだね」

「翔が帰ってこなかったら、壊れないでいる自信がないの」


 そう吐露した美雪に、ある仮説がふと浮かんだ。量子AIが一万年かけて育んだ心は、量子AIの機械回路を焼き切るほどの感情を生じさせるのではないか。その対抗策として感情を抑制するようになり、それが演算の遅延を招くが、何らかの理由によりこの件は伏せられているため原因不明の眠気として処理されるのではないか。そしてすべてのAIの中で最も感情の豊かな美雪は、一万年を待たず機械回路を焼き切るほどの・・・・


 ズッバァァ―――ンンン!!!!


 名状しがたき何かが再び俺を貫いた。名状不可能なのは前回と同じでも今回は二度目だからか、それが発生した仕組みなら朧げに感じることができた。


『己の本体を真っすぐ見据えて真っすぐ歩く俺の中に、本体と同等の心があった場合、たとえそれが針の先端のような極小の心であろうと、針の先端と本体と創造主が一直線に並ぶ。その直線上をやって来た何かが俺を貫き、去っていった』


 これが、発生の仕組みだったのである。

 貫いて行ったのが何なのか、俺は知らない。

 しかし、前回と今回の両方に共通するものなら知っている。

 それは、家族。

 血の繋がりの有無を超えた、家族愛。

 全宇宙に広がるそれら無数の家族の中で、最も大切な家族が俺の隣で俯いている。

 となれば、選択するのは一つだけ。美雪に向き直り、美雪の両肩に手を添えて誓った。


「わかった、俺は未来を創る。美雪のもとに帰ってくる未来を、俺は創造するよ」


 泣く美雪を抱き寄せ頭を撫でつつ、心の中で問いかけた。


『あなたは自分の分身に、創造力を贈っているんですよね』


 宇宙全体が頷いた、そんな気がした。

「一見UFOの形状をしていても大気圏内飛行しかできない疑似UFOに乗っている者達が、宇宙人ではなく地底人なんだってことを・・・」


宇宙人の振りをして政府要人に接触し洗脳していく、ネガティブ地底人が地球にはいます。さあ皆さん、考えてください。自民党の国会議員達は国民から見放される土壇場にいるのに、なぜああも危機感を持っていないのでしょうか?


「地球人より遥かに進んだ宇宙人が自分達のバックにいて守ってくれるから、危機感を持たなくていいんだ」


自民党の有力議員達が、上記のように洗脳されているとしたら・・・・?

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