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 この件は最終的に好ましい着地点を得たが、その一つ前を思い返すと、呪われた地の如く暗澹たる想いがふつふつと湧いて来てしまう。ただ、その更に一つ前はサンドイッチを形成するかのようにやはり好ましいことなので、時系列的にも二つ前のことから整理してみよう。

 暗澹たる想いを両側から包む二つ前の好ましいことは、件の妖精の追放が却下されたことだ。追放の代わりに後々笑い話になるような、例えば前世の俺の子供時代にあった「便所掃除一週間」系の罰が施行されたんだね。それはまこと良かったのだけど、今回の件を教訓に妖精の掟が追加されたのは、まさしく呪われた地の如くだった。追加されたのは、「妖精の上位者たる白銀王の権威は星母様に次ぐ」の箇所。上位者ってなんだよ、それにこれって俺の白銀王が法的に定まったってことだよな、と散山脈諸島の土地神に詰め寄ったところ、土地神は背中を丸めつつ会議の様子を教えてくれた。

 それにより初めて知ったのだけど、振袖娘たる筆頭土地神と散山脈諸島の土地神を除く全土地神は、お喋り者は追放が妥当と考えていたという。どうもお喋り者は騒動を度々起こす、問題児だったみたいなのだ。前世なら、お喋り者と同種の人は大勢いた。あの人達は根拠皆無の巨大な自信を、なぜか持っているんだよね。そのせいで他者の忠告を聞かず、それは人生を棒に振る間違いをしでかすまで続いていた。あの人達と同じ道にお喋り者がいたのかは分からないが、大多数の土地神が追放処分を推していたのは、それがお喋り者を矯正させる最後の手段だったからなのかもしれない。つまり大多数の土地神達は、俺がお喋り者を許すのを見越して追放処分を主張していたということ。そういう裏の意図を常に意識していなければ社会人でいられなかった前世を、どうも俺は忘れてしまっていたらしい。暗澹たる想いはあっても、温室育ちの甘ちゃんにいつの間にかなっていたことを気づかせてくれたお礼を、散山脈諸島の土地神に俺は述べた。すっとぼけていたこの土地神はそうとうな狸と思っておかないと、いつか足元をすくわれるかもしれないな。

 それが、良い意味で当たったのだろう。土地神達の計算どおりに事態が進んだから、暗澹たる想いの次にやって来た最終到着地が好ましかったと思えたのだ。どういうことかと言うと、最終到着地が好ましかったことと「子供妖精達は懸命に頑張ったが子供なので表情に出てしまったこと」は密接に関係し、そして表情に出てしまった子供妖精達へ負の想いを一切抱かなかったことと「お喋り者を許したこと」も、同じく密接に関係していたからである。順を追い、整理してみよう。

 まずは子供妖精達がかつてした、二つの秘密漏洩について。

 子供妖精達には、秘密漏洩の前科が二つある。一度目の秘密漏洩は俺の土地神巡りを、鈴姉さんと小鳥姉さんに洩らしたこと。二度目の秘密漏洩は奏の結婚式関連で舞ちゃんと翼さんが保育士の仕事を半休することを、幼年学校の生徒達に洩らしたことだ。一度目は鈴姉さんと小鳥姉さんが意図的に聞き出そうとしたため軽く窘めた程度だったが、二度目は子供妖精達が率先してバラしたためキツク叱ったらしい。また二度目はキツク叱ると同時に「三度目の秘密漏洩は妖精界追放もあるぞ、泣いて謝っても許さないからな」との脅しも併用したという。だからどうか許してあげてくださいと俺は土地神達に請われたが、許すなど当たり前。それどころか叱り役に恵まれた子供がいかに幸せかを熟知していた俺は、土地神達と叱り役談議に花を咲かせたものだ。妖精は人より自由なのにそこに子供という要素が加わった子供妖精の直情径行さは土地神達を大いに悩ませていて、巧く叱る苦労に長年苛まれてきた土地神達は「翔殿が我らの苦労を解ってくださった」と途中からオイオイ泣いていたほどだったのである。土地神達のストレス解消に貢献したことを母さんも褒めてくれたし、俺はあの談議をトップ5談議の一つに数えている。

 話を戻そう。

 二度目の秘密漏洩時のキツイお叱りと脅しは、さすがに堪えたらしい。子供妖精達は三度目を避けるべく、漏洩防止の仕組みを自分達で造ったという。洩らしそうな子としっかり者の子をペアにしたり、洩らしそうな子が人と接するときは強制連行部隊を近くに配置する等々がそれだ。個人的には少々やり過ぎな気がして振袖娘(当時はまだ身分詐称中だったので振袖娘)にその旨を伝えたところ、直情径行なあの子たちにはこれくらいが丁度良いと返答された。2メートルの振袖を風に常時たなびかせているヘンテコ娘でも土地神には変わりないのでそれ以上は言わず、その代わり子供妖精達をそれとなく観察したところ、漏洩防止の仕組みをあの子たちはさほどストレスに感じていないようだった。それもあり成長に必要な苦難と割り切るも、やはり気になってそれとなく観察を続けていたのだけど、美雪はさすが新妖精の始祖なのだろう。


「翔、相談があるの」


 昼食後、改まった表情の美雪が俺の正面に座った。因みにそれは、散山脈諸島で美雪がアベマリアを歌った三日後の出来事。アベマリアのお陰で子竜達に会えない喪失感は軽減できたが、それでも人族の冬季休暇を待ちわびる気持ちは拭えず、それをバネに子供達の訓練計画を練り直そうとしていた矢先のことだった。そんな俺の胸中を知りつつも相談を持ち掛けたということは、凄まじい大事件が起きているに違いない。そう早とちりした俺は美雪によると、目視できるほど闘志を燃え上がらせたという。「そりゃそうだよ。さあ美雪、俺が全力で解決するから何でも相談して」と胸を叩いたのは、やり過ぎだったのだろうか? 正面から隣にテレポートした美雪は俺の腕に額をゴシゴシ擦り付けてから、子供妖精達の不自然さについて語った。

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