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 胸中そう祈りつつ冴子ちゃんに登場してもらい、気球と他の飛行車がニアミス等の危険な目に遭わないかを尋ねた。「危険はまったく無いわ」と確約されたのでお礼を言い、子供達のいる場所へ移動する。そして、気球の原理の説明を俺は始めた。年長の子供達の瞳が、キラキラ輝いている。気球の講義と反重力ペンダントから、次の展開に確信を持ったんだね。賢いこの子たちに報いるべく俺は予定を変更し、輝力工芸スキルの等級が高い子を厳選して、気球づくりを後でさせてみることにした。

 そうこうするうち原理の説明が終わり、気球の製造を始めた。と同時に、見落としに気づいた。気球は造れても、空気を吸い出す輝力製ポンプはまだ造れないから、子供達が無謀な空の冒険をする確率はかなり低かったのである。う~んでも、子供達の創造力を侮ってはならない。後で冴子ちゃんと、そこら辺を話し合っておかないとな。


「了解です。私の家の応接室で対策を練りましょう」「えっと、翼さん」「どうかしましたか?」「俺の頭の中が、なぜ筒抜けなのですか?」「母上様にコツを教えて頂いたのです、数年前に」「す、数年前って具体的にどれくらい前?」「翔さんの土地神巡りに同行させてくださいと泣いて縋ることは決してしませんと、母上様に誓ったときですね。それと、ご安心ください。母上様が最初に教えてくれたのは、筒抜けでも翔さんが不快に思わない状況を見極めることですから。その証拠にさっき翔さんは驚きこそすれ、不快ではなかったでしょう?」「はい、おっしゃるとおりです」「ふふふ、これで溜飲が下がりました。我が一族をお披露目の二番にしたことを、水に流します」「ありがたき幸せ~~!!」


 こんなふうに尻に敷かれているっぽいとき、意志のアカシックレコードで見た翼さんとの結婚生活を、一番思い出すんだよね。ひょっとして俺、マゾだったりするのかな?

 という戦慄すべき疑問の筒抜けの阻止を、俺はどうにかこうにか成功させたのだった。

 話を戻そう。

 子供達を気球に乗せ、夏の空を満喫しつつ輝力の奥深さを感じてもらう試みは大成功、かつ大正解だった。子供達の教育担当AⅠと連携している冴子ちゃんによると、スキル等級を上げる自主練の熱意が、あの前と後では大きく異なるそうなのである。それについて冴子ちゃんは「子供達の目標として、難度が適正だった」との見解を述べた。その正しさを直感し頭を抱えた俺に代わり、翼さんが適正難度の件を進めてくれた。


「分身の術は難度が高すぎ、投入されている技術の推測すら不可能だったため、いかなる訓練計画も立てられなかった。それに引き換え適正難度の気球は投入されている技術を高確度で推測でき、自分に合った訓練計画を立てられた。冴子さん、こういう事ですか?」「ご名答。子供達の成長を常に考えている翼は、さすがね。まったく、どこかの無謀男とは大違いだわ」「冴子さん、翔さんは手本を示したの。子供達が生涯をかけて追い続けることになる最高の手本を、翔さんは昨日、子供達の心に焼き付けてくれたのよ。だから、あまり悪く言わないであげて。もっともそんなこと、冴子さんは百も承知なのでしょうけど」「翼が100なら、私は50くらいかな」「そんなに低くないんじゃない?」「私は母さんの筒抜け技術を未習得だけど、翼は習得済み。半分の50がせいぜいね」「ちょっ、ちょっと待って。半分とはいえ俺は冴子ちゃんにも、頭の中が筒抜けだったの?」「あんたが知られたくないアレや」「ドワッ」「もっと知られたくないコレは」「ドワワッ」「筒抜けになっても顔に出さないであげるから安心しなさい」「ウギャ―――ッッ!!」


 アレやコレに思い当たる節がありまくり、頭を抱えるしかない俺なのだった。

 

 そうこうするうち竜族の夏季休暇が終わり、子竜達にまた毎日会えるようになった。散山脈諸島の訪問再開に合わせて美雪の機嫌も明らかに良くなったし、嬉しい限りだ。機嫌の良い美雪を見るのは幸せなのでいつになくその姿を目で追っていたところ、驚愕の事実を知った。なんと美雪は「キュルキュル!」(美雪お姉ちゃん美雪お姉ちゃん!)「キュルル」(なあに鈴桃ちゃん)のように、竜族の言葉を話せるようになったのである。子竜達が最近やたら美雪に懐いていると思っていたら、こういう事だったのか。テレパシーで意思疎通できても特に鈴桃たち女子組にとっては、自分達の言葉でおしゃべりした方が断然楽しいのだろう。俺もオッサン竜達との酒の席で竜語を話すことを、目指してみようかな?

 いや、呑兵衛のオッサンなどどうでもいいや。話を替えよう。

 名家巡りで適正難度を失念した俺は、子竜達にも同じことをしていないか考察した。美雪とも話し合い徹底的に検証したところ、予想外の結論が出た。難度は適正でも、


  新しい刺激が

  遠からず必要になる


 とのことだったのである。これは、一から十まで美雪のお手柄だった。竜語によるおしゃべりが、子竜達の本音を引き出してくれたんだね。相手の母国語で会話する利点は前世で学んでいたのに、油断にも程がある。今回は美雪がフォローしてくれたけど、同じ過ちを繰り返さぬよう徹底しないとな。もっとも、


「わたし役に立てたんだ、やった~~!」


 美雪がことのほか喜んだから、今回はこれで良しとしますか。

 というフニャフニャ顔の阿呆は意識分割で放り投げ、話を進めよう。

 刺激は、幸い用意できる。弦楽四重奏がそれだね。完璧には程遠い技量だけど、子竜達の冬期休暇開始までまだ五カ月以上ある。美雪の試算によると1日の練習量を倍にすれば、中堅交響楽団のコンマスの次席奏者にギリギリ手が届くそうだ。そうは言っても欧米の交響楽団なのか日本の交響楽団なのかは、怖くて訊けなかったけどさ。

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