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「地球卒業の可不可に関係なく、すべての人は亡くなるとほんの一瞬だけ、仏教の説くニルバーナを得るの。ニルバーナでは四次元と五次元が解放されるから、ほんの一瞬を数百億倍に引き伸ばして、愛する家族の一生を見守る人が現れる。家族の背後に立って温かな眼差しを向けるその人を霊視したのが、守護霊や背後霊と呼ばれる存在の起源ね」

「え? じゃあ僕も弟や妹たちを見守れたのでしょうか?」

「見守っていたわ。終始ニコニコしていたよ」

「やった~~!!」


 終始ニコニコしていたってことは、みんな幸せな一生をすごしたのだろう。嬉し過ぎて万歳している最中、ふと疑問が浮かんだ。俺は守護霊と背後霊の、どちらになったのかな? それを母さんに尋ねたところ、守護霊や背後霊と呼ばれているものの正体はまだ二つあるとの事だった。正体の一つは、現在の最大因果になっている過去世の自分。正体の最後の一つは、今生の物質肉体の潜在意識に最も影響を及ぼした先祖なのだそうだ。


「最大因果から説明しましょう。人によって異なるから正確な数は伏せるけど、大多数の地球人の転生回数は、百回や千回どころではなくてね。また直前の前世の因果が、今生の最大課題になっている訳でもないの。たとえば今生の出生環境が三回前の前世の因果克服にうってつけの場合、それが今生の最大因果になっている事もあるし、二回前の人生で造った因果が大きすぎて二回連続で最大因果になっている事もある、のような感じね。その最大因果になった前世の自分が背後にぼんやり立っているのを、霊視する人が稀にいるってことなの」


 百回や千回どころではないことに気が滅入った半面、あくまで俺個人についてだが、それどころではなくて当然とも思えた。だってダメ人間の俺では百回や千回どころじゃ、母さんのようには絶対なれないもんな! アハハハ~~~


「ふふふ、そんな事ないよ。それはまた今度にして、最後の一つを説明しましょう。翔、暗潜在意識を覚えてる?」

「はい、覚えています。えっと、大地や空気を含む全ての物には意識があり、それは人の物質肉体も例外ではない。物質肉体は物質肉体独自の意識を持っていて、それは潜在意識として心に作用している。ただ潜在意識は二つあり、物質肉体の意識は人の本体から最も遠い、暗潜在意識を形成している。これで合ってますか?」

「御名答。そしてその暗潜在意識には、生物種としての種族本能も含まれるの。孵化したばかりの赤ちゃん亀が誰にも教わってないのに海を目指して歩いて行くのが種族本能、もしくは種族意識ね。人の肉体は地上で最も強い動物意識を持っている関係で、先祖の強烈な経験を、種族意識として子孫達が微かに継承することがあるの。その微かな継承の元となった先祖を、ぼんやり立つ人として霊視する人が稀にいるってこと。ちなみに種族意識は遺伝子や背骨ではなく、脊髄に保管されているわ。そうそう翔は、脊髄についてどれくらい知っているかしら」

「むむ! ええっと、人の受精卵は松果体と脊髄を一対の器官として、最初に造ると記憶しています。母さんこれって、脊髄は松果体に比肩する重要器官ってことですか?」

「胎児のときは、比肩するとして差し支えないわ。人の本体が松果体と結合した以降は、松果体の重要度がグングン増していくけどね」

「なるほど・・・・ってあれ? 母さんの説明だと、胎児の松果体は本体と結合していないように聞こえるんですけど」

「その解釈で合っているわ。出生と同時に結合するの」 

「という事は、母親の子宮にいたころの記憶は、物質肉体の記憶なのでしょうか?」

「御名答。脊髄に保管されている子宮内記憶は、脊髄の重要度が相対的に低くなるにつれ、意識の表層に上り難くなっていく。3歳を超えると忘れ易くなるのは、そういう仕組みね」


 おお~~っと暢気に拍手しているうち、ようやく気付いた。然るにそれを問うてみる。


「母さんはニルバーナの説明の最後に、守護霊や背後霊と呼ばれる存在の『起源』と言いましたよね。その起源という語彙が、妙に引っかかるんです。僕は地球で指導霊と、守護霊と、背後霊という、背後に立つ三種類の霊を耳にしました。その三つに、母さんが今教えてくれた三種類を当てはめると、個人的にはニルバーナが守護霊で、最大因果と種族意識が背後霊になり、指導霊が見当たらないのですが、間違っていますか?」

「ふむ。起源の引っかかりに絡めて説明できるかな?」

「むむむ! すみません少し時間をください」


 超難問だったので時間をもらい、とりあえず瞑想してみる。なるべく心を空っぽにし、湧思(ゆうし)と呼ばれる自動的に湧いてくる思いをぼんやり眺めていたら、湧思とは反対方向の明潜在意識側から閃きが送られてきた。それを文字に翻訳し、述べてみる。


「日本の仏教は、仏陀の教えを変えすぎているとの理由により、世界の仏教徒から仏教と認められていません。僕もそれに賛同していて、仏陀が絶対にするなと言及したお葬式とお墓を二大収入源にしている人達を、仏陀の教えを実践している人達とはどうしても思えないのです。そこに起源という語彙を当てはめると、こうなると感じました。『仏教の起源は仏陀にあるが、時間と空間を経た現在の日本仏教は、起源とは異なるものになってしまった』 そしてこれが、指導霊と守護霊と背後霊にも適合する気がしたんです。中でもとりわけ適合したのが、収入源ですね。収入源という語彙を用いて文にすると、こうなるでしょう。『指導霊と守護霊と背後霊を収入源にしたせいで、時間と空間を隔てるにつれ、起源とは異なるモノとして世に広まってしまった』 仮にこれが正しいなら、霊能力者の話と母さんの話がまったく噛み合わない仕組みを説明できます。母さん、どうでしょうか?」

「補足はあっても、訂正箇所はないわ」


 母さんはそう言い、補足説明をしてくれた。例えば孤児院の弟や妹たちが何らかの(おり)に、自分の守護霊を知りたいと願ったとする。孤児院には親の記憶のない子もいるから、そう願ったとしても不思議はないだろう。幸い知人にAさんを紹介されたのでAさんを訪れたところ、俺が背後で温かく見守っていると告げられた。弟や妹たちがAさんへ、感謝と敬意の印として代金を払うことは、宇宙の法則に沿うと母さんは太鼓判を押した。その能力を得るためにAさんが多大な努力をしてきたなら、努力へ敬意を抱き感謝することは、人の正しい行いであると母さんは明言したのである。

 ただ、ここからが難しくなってくる。Aさんがそれを職業にすると、能力を失ってしまうことが多いらしい。地球の社会では、支出に応じて生活の物質的豊かさが変わる。物質的に豊かな暮らしを自分や家族が望めば、それに応じて支出を増やさねばならず、そしてその増加分は大抵の場合、その人を訪れた人達では賄えないそうなのだ。この例として母さんは、イエスの教えと仏陀の托鉢を挙げた。イエスの教えは、「空の鳥をよく見なさい。種も蒔かず、刈り入れもせず、庫に納めもしない。だがあなたがたの天の父は、鳥を養ってくださる」の箇所。またこの教えの(かなめ)である「養ってくださる」が、仏陀が托鉢して得ていた糧とのことだった。もちろん仏陀級の清貧が現代人に求められることはなく、宇宙法則に沿う日々を過ごしていれば、健康で文化的な最低限度の暮らしを宇宙は用意するという。正直言うと今の俺には納得いかない部分が多数あっても、それは俺が未熟で理解不可能なだけ。未熟な俺でもそれだけは理解していると、断言できるのである。なんて感じに心の中で胸を張っていたら、前世の友人の一人を思い出した。


「母さん、僕の前世の友人に鍼灸師がいました。彼は人を直す特殊な力を、いわゆる超能力を持っていましたが、それをお金に替えたことはありませんでした。彼の元を訪れる患者さんに彼は鍼灸師の技術を原則的に使い、その技術では太刀打ちできない場合のみ、二つの条件付きで超能力を使っていました。条件の一つは、病気の原因を患者さん本人が取り除こうと努力している事です。たとえば過度の飲酒に体調不良の原因があると知っているにもかかわらず、飲酒を止める努力をしない人に、彼は超能力を決して使わなかったのです。条件のもう一つは友人自身に関するもので、超能力を用いても鍼灸師としての技術料しか求めず、かつ患者さんに超能力の件を伝えない事でした。そんな日々を送る彼の収入は多くも少なくもなく、それでいて人生を楽しむ余裕が金銭的にも時間的にもあるという、幸せな暮らしをしていたのです。天の父が養ってくださるというのは、そういう事でしょうか」

「そういう事ね。前世の翔に素晴らしい友人がいて、母さんは安心しました」

「宇宙法則に沿う日々を過ごしていれば、健康で文化的な最低限度の暮らしを宇宙は用意するという。正直言うと今の俺には納得いかない部分が多数あっても・・・」 現在の多くの日本人は、納得できなくて当然と言えます。なぜなら上記は「政府が宇宙法則に反している」場合、適用されないからです。

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