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 午前6時半。

 散山脈諸島に帰って来た俺は竜達と食事を共にした。「朝ご飯に先生がいる!」「嬉しい~!」と、子竜達は大はしゃぎだ。その様子が可愛くてならず、年に二度はこうして泊まりに来ることが可能か否かを、二分割した心の一方で俺は真剣に考えていた。


 午前11時。幼稚園から最も近い砂浜に、子竜達の両親が到着した。正確には、親が浜に上陸するのを待っていられず子竜達が海に次々飛び込んでいったから、親達はまだ誰も島に着いていないんだけどね。

 子竜を背中に乗せ、親竜達が浜に次々上陸して来た。海に入れば我が子を容易く背に乗せられるのも、竜族が海を好む理由の一つらしい。山風が教えてくれたところによると、竜族の背中と翼の形状は子竜を乗せることに適しておらず、また子竜の体重も背中に乗せられる上限をほんの数年で超えてしまうため、


『親が幼子おさなごを背に乗せる機会をなるべく奪うべからず』


 という文化を竜族は持つに至ったとのことだった。挨拶にもそれは適用され、たとえ相手が竜族の長の大風だろうと、親竜が子竜を背に乗せたまま挨拶しても失礼には当たらないと竜族の社会ではされているのだそうだ。

 それは完全同意なのだけど、何事にも例外はある。竜族は挨拶にたった一つの例外を設けており、そして頭の痛いことにそれは、星母に関する例外だった。なんと竜族は散山脈諸島に一度も降臨してない星母を崇めるあまり、星母に挨拶するときだけは背に子竜を乗せていてはならないという、的外れも甚だしい掟を作っていたのだ。星母と、つまり母さんと直接会話した大風や山風達はその掟の的外れっぷりを理解したようだが、会話していない者はそれに含まれず、そして今日やって来た親竜達は、含まれない者だったのである。このような場合、当人である母さん以外が口で幾ら説明しても無駄と考えねばならない。なぜならそう考えないと、「幾ら説明しても解らないなんてアイツらは馬鹿だ」系のレッテルを貼るアホ共が必ず現れるからだ。という訳で俺や山風はいかなる説得もせず、その代わり母さんに、崖の上の幼稚園で親竜達と対面するよう頼んだ。子竜が親竜の背に乗っていいのは崖の下まで、そうでないと坂道を上る親竜が可哀そうだから、という幼稚園の決まりを利用したんだね。

 かくして、的外れな掟問題は解決したと思われた。が、それは誤りだった。想定外の問題を、園長が持ってきたのである。それはある日園長が、困り顔で俺のところにやって来たことから始まった。

 困り顔の園長が一部始終を語ったところによると、子竜を迎えに来る親竜は出発前および移動の最中、園長と定期的にテレパシー会話をする習慣があるという。親竜がこの島へ元気に向かっていることを、子竜達に教えてあげているんだね。それは素晴らしいことなのだけどテレパシー会話をしたところ、親竜達がある主張を頑なにしていることが発覚した。それは、「星母様の愛し子であらせられる白銀王への礼は、星母様への礼に準じなければならない」というものだったそうだ。頭を抱えたいのが本音でも、それをしたらレッテル貼りのアホ共と大差ないアホになってしてしまう。幸いこの件の当時者は俺で、かつ俺には親竜達へ会いに行く方法が三つあった。「カレンに乗って行く」「飛行器で飛んで行く」「意識投射で瞬間移動する」の三つだね。一つ目は、時間のやりくりが現時点で極限状態なのだから、カレンに乗ろうと無理。二つ目は分身を幼稚園に残せばやりくり問題は解決しても、子竜達の年齢を考慮すると、俺が親竜に会っていることが漏れるのはまずい。子竜達は親が恋しくてならない、3歳や4歳だからだ。それに引き換え三つ目は、輝力で造った俺の分身を意識投射させれば秘密を守れる。子供達を差し置いて親に会う後ろめたさはあるけど、三つ目が最善と考えていいだろう。かくして昨日の午後、俺は輝力俺を隣の島へ瞬間移動させた。親竜達は隣の島に、到着済だったんだね。園長に頼み俺の瞬間移動をテレパシーで伝えてもらっていたのに「「「「ナンマイダ~」」」」が一斉に始まったのは、マジ勘弁だったな。

 それを除けば、意識投射で事前に会ったのは大正解だった。子竜を背に乗せたまま俺に挨拶することを受け入れてもらえたし、何より「ナンマイダ~」の封印を約束してくれたからだ。よしこれで何の問題もない、明日は親竜達と気軽に挨拶するぞ!

 なんて感じに昨日は思っていたのだけど、当日の今日。

 浜に上陸した親竜達と挨拶する場面になったら、俺は感激のあまり涙ぐんでしまった。子竜達が自ら進んで親竜の背を離れ、両親と並んで俺に挨拶したからである。「「「「だって先生は、先生だから!!」」」」という、社会常識や理論理屈に囚われない真心の説明を元気一杯する子竜達に、親竜達も涙を流している。この素晴らしい子供達の先生になれた幸運へ、俺は感謝を捧げた。

 その後、親竜達へ「驚かないでくださいね」と告げて分身を20体出し、子竜達を再び親竜の背に乗せてあげた。輝力の手を白銀に着色しておいたこともあり子竜達は大はしゃぎし、その様子に顔をほころばせた親竜達も、初めて見る輝力に好印象を抱いたようだった。よしこれで、万事OKだ。後は崖の上で待っている母さんに親竜達が挨拶したら、ひとまず安心して良いだろう。俺達は足取り軽く、幼稚園へ向かった。

 母さんと親竜達の挨拶は恙なく終わった。俺が「ナンマイダ~」にいい顔をしなかったことを親竜達は昨夜話し合い、過剰崇拝しないよう決めたそうなのである。もっとも排除したのは、過剰の部分だけ。敬意や感謝で崇拝を表現することは続けており、またそれは俺にとって非常に好ましいことだった。母さんに馴れ馴れしく接する人がもしいたら、俺は怒っちゃうと思うんだよね。う~むやっぱ俺って、マザコンなんだろうな・・・

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