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 約束しますとの声もしくはテレパシーが、音声爆弾のように炸裂した。よし、準備完了だ。俺は本命の「子竜達が飛ぶ魅力に取り憑かれ選択肢3へ変更する未来は、子竜達の主張どおりほぼ確定しているのか」を、アカシックレコードを見た上で説明した。

 結論を述べると、ほぼ確定などしていなかった。子竜達には伏せたが、まだ飛んでいないにも拘わらず飛んだ後が確定しているなどと考えるのは、未熟さ以外の何ものでもないのである。もちろんそんなキツイことは、言わなかったけどさ。

 それは置き、ほぼ確定などしていないと知った子竜達は、話し合いをもう一度させて欲しいと請うてきた。否などあろうはずなく、俺は了承する。ただ、


「じゃあ今日は時間だから、また明日」


 と別れの挨拶をしたら、「「「「行っちゃ嫌だ~」」」」と泣かれちゃったけどね。


 その日の夜、夢に母さんがやって来た。母さんは今日の講義を褒めてくれてそれは手放しで嬉しかったけど、「ごめんなさい」としおらしく謝られたのは寿命が縮んだ。母さんすら帳消しに苦労する失敗を俺はして、迷惑を掛けてしまったのではないかと思ったのである。そう述べたところ母さんはコロコロ笑い、真相を話してくれた。

 それによると今日の講義は出来がとても良く、大風と慈雨が受講しそこなったことを不憫に感じた母さんは、俺の了承を得ず二頭に講義風景を見せたのだそうだ。安堵に続いて、俺如きの講義など母さんの一存でいかようにもしちゃってください、と保証してから気づいた。ひ孫弟子候補の初授業を無断公開された時もご自由にどうぞと保証したのに、さっきのしおらしさには何か理由があるのかな、と。


「だって今の翔はあの頃と違い、準直弟子でしょ。準が付こうと直弟子には、様々な権利が認められているの。講義風景を本人の承諾なく生徒以外に見せるのは、権利を若干侵害するのよ」「母さん」「ヒエエッ、ごめんなさい~~」「ちょっと待って落ち着いて。そうだな、こちらから訊こう。なぜいきなり謝ったの?」「翔が真面目顔に突然なったから、条件反射的に謝っちゃった」「あのですねえ、そんなことを言われたら、真面目話ができなくなるじゃないですか。それとも謝るべきことが他にも多々あって、山のような罪悪感を抱えているとか?」「ウ、ウワ~ンごめんなさい~~」「あ~いいからいいから。母さんなら大抵のことは許すよ、自由に振舞ってね」「ビエ~ン、ありがとう~~」


 ビエ~ンが出たのでそれ以上何も言えず、真面目顔で頼もうとしていたことを有耶無耶にされてしまった。でも真面目顔で伝えようとしていた「大抵のことは許すよ、自由に振舞ってね」は伝えられたから、それで良しとするか。

 ちなみに頼もうとしていたのは、「直弟子の権利を教えて」だった。その中には権利を知る権利も絶対あるはずなのに、なぜ俺はたった一つも知らないのか? まあ俺は所詮「準」の付く身だし、何より母さんが俺に悪いことをするなどあり得ないから、全然いいんだけどね。それよりもっともっっと重要なことを、おさらいを兼ね頭の中で整理した。


『本体を持たない生命にとって潜在意識に存在する種族意識は、本体の代役を果たすほど重要な意識と言える。俺が講師をした今日の講義を種族意識に落とし込むなら、大風と慈雨もリアルタイムで講義を受けた方が断然良い。大風と慈雨が保有する、竜族として最も成長した心と知性を介して見た今日の講義が、種族意識に統合されるからだ』


 大風と慈雨が講義に参加するか否かで種族意識がどう変わるかを、母さんなら容易く知覚できたはず。その上で二頭を参加させたのだから俺に文句などないのに、俺の権利に抵触した謝罪を母さんはしてくれた。

 それを手本として心に刻むことを、俺は誓った。


 翌日の夕刻。

 幼稚園を訪れ子竜達を視界に納めるや、俺は瞠目した。通常ではあり得ぬほど、たった一晩で子竜達が心を成長させていたのだ。子供特有の純粋さを残したまま成長した心は、なんて清らかな光を放つのだろう。創造主様、本体を持たぬのにこれほどの心を獲得するに至った竜族を、どうか見守ってください。胸中そうこいねがい、講義を始めた。といっても開始早々「鈴桃、子竜達の意見はまとまったかな?」と、問うたんだけどね。


「キュル!」「ほほう、皆で議論する夢を全員見たのか」「キュル~・・・」「でも夢なのでそれに気づかず、夢の時間は終わってしまったんだね」「キュル?」「任意で再現できるようになりますか、か。う~んただの勘だけど、特別な助力が働いていた気がする。アカシックレコードを見てみるよ」「「「「キュル――!!」」」」


 子竜達に声を揃えてお願いされたからには肯定的な見解を述べたいけど、創造主や母さんが関わっていたら嘘は厳禁。関わってなかろうとそれは同じでも、関わってないなら表現の幅が格段に広がる。表現の幅は創造性の幅でもあるから関わっていない方が良いような、特別な関りがあった方が良いような、俺にも判らないのが正直なところだ。さあでは、真相を見に行きますか。俺は意識投射し、アカシックレコードを見に行った。

 真相は、なんと創造主の助力だった。また俺がアカシックレコードを確認しに来ることを見越し、俺宛のメッセージが添えられていた。でもそのメッセージって、「私の名を出さず巧く説明しなさい」だったんだよね。創造主様、それが一番難しいんですけど!

 と頭を抱えかけるもピンと来た。本体を持たない生命には、明潜在意識があるのかな?

 人の明潜在意識は平たく言うと、本体の影響を受けることで普通意識(心)では知覚不可能なほど波長が高くなった意識、になる。これに基づくと「本体を持たないため明潜在意識もない」になるが、本当にそうなのか? 俺が知らないだけで竜族も明潜在意識を持っているもしくは、


  訓練次第で竜族も

  明潜在意識を持てる


 という事はないだろうか? この閃きに興奮してしまった自分に微笑みつつ、竜族の心を俺は詳細に見に行った。

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