10
チャーリー・カークさんへ。
あなたは、偉大でした。
私は私なりの方法で、あなたの意志を引き継ぎます。
俺は前後不覚級に泣いてしまい、本体が連れてきてくれた次元でなければ意識分割していようと準四次元の会合を続けられなかったはずだがそれは脇に置いて・・・・いやいや、初めて来たこんな特殊な次元を脇になど置けませんって!
「どうかしたのかい?」「俺はこの次元に、今日始めて来てさ。詳しくは判らないけど、ここはとても特殊な次元に感じるんだよね。可能ならこの次元について、教えてくれないかな」「ここは私が一時的に創った、二次元に接する次元だよ」「二次元に来るのも初めてなのに、本体が一時的に創ったという特殊性が加わったから、不思議な気配がしたのか」
地球の数学者が勝手に定義した次元と、創造主が宇宙創造の過程で定義した次元は、3次元を除き似ても似つかない。とりわけ地球人の一部が主張する「次元の数が多いほど高級と宇宙人に教えてもらった」は、創造主が1次元にいることから、どのような勢力によって広められたか考えるまでもないだろう。そんな、金儲けや承認欲求にどっぷり浸かっているせいであの勢力と波長が合い広報官にさせられてしまった人達はひとまず置き、創造主が定義した2次元は、原因と結果の法則が存在している次元だ。本体によると、未熟な俺では真の2次元に入ることは未だ叶わぬらしい。よって二次元に接する次元を一時的に創造し、こうして様々なことを教えてくれているのだそうだ。まこと、ありがたい限りである。そう思い手を合わせたところ、
「あの子の本体にとても感謝されているからいいよ」
とのことだった。ちなみに本体は創造主自身が付けた名を持っており、それが真名として知られているものの大本だ。名前を他者へ教えることを避ける風習も、そこから派生したという。本体同士はその名を知っているけど、俺如きはまだ教えてもらえない。また1つの本体は10以上の人として三次元世界に顕現し、その1人1人が転生ごとに名を変えていることが、奏を「あの子」と呼んでいる理由なんじゃないかな。
話を戻そう。
本体によると俺をこの次元に連れて来ることが出来たのは、大量の感謝の気持ちを俺が纏っていることも理由の一つらしい。名家巡りや土地神巡りは俺の個人的な願いから始めたものなのに、これまたありがたい限りである。そう思い再び手を合わせたところ、少し違うとのことだった。俺は前世から引き継いだ感謝の気持ちを新生児の時点で大量に纏っており、引きこもり中はほぼ変わらなかったもののそれ以降は増加する一方で、最近それがドカンと増えたという。感謝の気持ちをここに来るための燃料とするなら過半数をドカンが占めても、感謝の質の高さをここに来るための資格とするなら、ドカンではここに来られないらしい。ドカン以前の感謝は俺が親密に付き合ってきた人達が真心で送ってくれたものゆえ、非常に高品質なのだそうだ。これをありがたいとせずして、何をありがたいとするのか。その気持ちを示すべく可能な限り真摯に手を合わせたら、
「必須ポジティブ純度にギリギリ達したよ」
本体の声がした。と同時に、俺を球状に取り囲む感謝の気持ちが一気に具現化した。視覚化ではなく具現化としたのは、俺の成長段階ではそれを音楽に似たものとして捉えるのが精一杯だったからだ。俺とまだ縁の浅い人は一つの音として、俺と縁の深い人は一つの楽器として、調和の取れた荘厳かつ美しい音楽を形作っていた。それら1千を超える楽器の中でもトップ10に入る、ひときわ豊かな音を響かせる楽器へ、本体の勧めに従い意識を向けてみる。それは、奏の楽器だった。一つの楽器の音とは信じがたい豊かな音を、奏の楽器が響かせる仕組みを理解した俺の双眸から、涙が止めどなく溢れてくる。奏の楽器は、楽器自身の音だけを俺に届けているのではなかった。血縁の有無を度外視して交流してきた同級生達が奏へ送った感謝と、同じく血縁の有無を度外視して世話してきた幼年学校の生徒達が奏へ送った感謝も、楽器の音に加わって俺に届けられていたのである。
俺は、何一つ理解していなかった。
奏を溺愛する余り奏を不幸にしてしまったと考えたさっき俺は、アホの一言に尽きた。
血縁のない兄として可愛がることで俺は奏を幸せにし、俺への感謝から奏も血縁のない大勢の家族へ同じことをして、家族を幸せにしていった。その根底にあるのは、
ありがとうお兄ちゃん
だった。それが通路となり、大勢の家族達のありがとうも俺に届けられていた。奏の楽器のひときわ豊かな音が、それを俺に教えてくれたのである。
俺は本体に「そろそろ帰るよ」と声を掛けられるまで、滝のようなうれし涙を流し続けたのだった。
じゃあね~と気さくに言い、本体が元の場所へ帰ってゆく。
未熟な俺では、こんなふうに本体が歩み寄ってくれなければ、気の置けない交流はまだ無理なのだろう。けどそれは今後の課題にして、あの次元にいた間のこちらの進展を俺はおさらいしてゆく。心を分割していようと感謝を具現化したあの体験は衝撃的すぎ、こちらが疎かになってしまったんだよね。だがさすがは本体、疑似二次元へ行っていた時間は100分の1秒ほどでしかなかった。昇が奏に「お互い謝り倒そう」と頼もしく語り掛け、それに「うん!」と奏が天真爛漫に応えてからも5秒しか経っていないので、会合への支障は皆無と考えてよいだろう。というかこの5秒間で成されたのは、昇と奏が熱い視線を交わすことのみだったらしい。いやはやホント、変われば変わるものだ。ほぼ間違いなくこの二人は今夜を境に、本来の二人に戻ると思われる。二人の結婚式で大泣きする自分を、俺は心の目ではっきり捉えていた。
昇と奏の熱い視線はその後も続いた。互いが互いを将来の伴侶と認めつつも、昇が29歳奏が28歳になってようやく恋人の気配を漂わせるようになったのだから、このまま放置するのが最善だろう。との合意に至った俺と勇と舞ちゃんは、二人の結婚式についてテレパシーで話し会った。その結果、二人の結婚式を甘く見たら取り返しのつかない事になるという共通見解にすぐ辿り着いた。最大の懸念事項は、式に出席を望む人の多さだった。どんなに少なく見積もっても参加者は1900人を下らないと、俺達は判断したのである。
ネガティブ勢力は自分達に都合の良い人を教授にし、自分達に都合の良いアカデミズムを造ってきました。ネガティブ勢力によるその活動と、チャーリー・カークさんは真っ向から戦ってきました。全米中の大学へ直接足を運び討論会を開くことで、多くの大学生を洗脳から解き放ってきたのです。
そのチャーリー・カークさんが、大学での討論会中に狙撃され、命を落としました。
これが、ネガティブ勢力のやり方です。
日本人よ、いいかげん目を覚ますのです!




