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「屠らないとゴブリンの戦闘技量は増すが、闇力は増えないとの確証を人類軍は得ている。学者達は『闇力は闇大陸でないと増えない』と予想し、そして闇力が増えない限り人工島での隔離は無問題だそうだ」


 一呼吸入れ、鷹司令官は二つ目の返答に移った。


「生体ゴブリンとの実戦を希望する戦士は、平時はほぼ(ゼロ)。戦争5年前辺りから少しずつ増えるが、最多となる戦争前年でも1千人に届かない。翔に許可する生体ゴブリンとの実戦は司令官会議で決定しており、年間12体だ。研究目的なら、年間上限は100体だな」


 十全な返答に謝意を述べたところ「構わない先を続けろ」と命じられた。この時間を無駄とは思っていないが、余計な時間は避けたいのが本音なのだろう。俺は命令に従った。

 生体ゴブリンと同等の20倍3Dゴブリンと、16圧で戦う訓練を毎日1時間設ける予定でいる。1時間の理由は、最大圧縮率を増やさねば闇王に勝てないとも勘が主張しているからだ。「常時発動は900圧、最大は1600圧、一瞬なら2500圧も可能。これが最低限と感じます」との俺の推測に、鷹司令官は無言で頷いてくれた。まだ説明の途中なので無言は非常に助かる。上司に恵まれたことに感謝しつつ、先を続けた。

 時間遅延スキルは、身空スキルの体重軽減率を100%にした先にあると感じる。軽減率を上げるにはスキル発動下でのゴブリン戦が必須だが、1時間以内にしないと軽い体重に体が慣れ不都合が生じるのは実証済だ。

 神話級の健康スキルは、成長期が終わっても毎日8時間の訓練を可能にするかも検証したい。ただし白銀騎士団等の指導もあるので休暇無しは避け、1ヵ月に2日の休日を計画している。夏と年末年始は子供達の指導も加わるため、軍規に基づく最長休暇を望む。

 という軍務の希望を、俺は先月末に文章化していた。鷹司令官の返答を得られたら、当該箇所を美雪に修正してもらうことも事前に頼んでおいた。よって美雪に修正箇所を見せてもらい、記入を少々して鷹司令官に提出した。


 1、現在最も解明したいのは、時間遅延スキル。次は、神話級の健康スキルにおける成長期終了後の最大訓練時間。以下2~5は、この二つの解明を主目的にしている。

 2、虚像ゴブリン戦を毎日8時間行い、1ヵ月の休日は2日とする。

 3、毎日行う8時間戦闘の内訳と順番は、「身空スキルを発動し1時間」「圧縮最大で最強ゴブリンと6時間」「圧縮16倍で20倍ゴブリンと1時間」とする。

 4、生体ゴブリン戦は、1ヵ月に一体とする。屠るか否かは、現時点では不明とする。

 5、幼年学校の子供達の指導も、次の戦争に重要と判断する。よって幼年学校の夏季休暇と冬期休暇に合わせ、軍規に基づく最長休暇を望む。


「鷹司令官殿に、これを提出します」

「霧島教官から聞いていたとおり手回しがいいな。通常なら責任者の俺に決定権があるが、今回は司令官会議の決議がいる。数日待って欲しい」

「了解です。あと毎年4月1日に提出する『身空スキルの指導法』も、現時点で判明している方法を報告書にまとめています。提出しましょうか?」


 鷹司令官は、もう我慢できんとばかりにゲラゲラ笑いだした。「翔の前世は優秀な組織人だったのか、文章を書くのがよほど好きだったか、それとも両方か」と司令官ではなく鷹さんの雰囲気で問われたので「趣味で小説を書いている、そこそこ優秀な組織人でした」と答えておいた。すると、予想外の反応をされた。鷹さんは、熟考顔になったのである。次いで2Dキーボードを出し、おそらく誰かとやり取りを始めた。口頭ではなく文字のやり取りを選んだのは、俺に権限のない機密が含まれているからなのだろう。その時間を2分半ほど過ごしたのち、鷹さんは思いもよらぬ提案をした。


「人類軍の教導隊には、教材編集班がある。教導隊の責任者と話を付け、教材編集班のAIと翔が会話できるようにした。後で時間を設けるといい。そこで実績を上げれば、同班所属として身分を公開できる。ちなみに今の正式身分の『司令官会議直属特務戦技研究隊分隊長並』は、非公開だ。対外的には『天風鷹司令官の秘書』を名乗るように」


 最後の命令に「了解です」と敬礼したこともあり、思いもよらぬ事柄だった教材編集班については訊けず仕舞いだった。でも司令官は多忙のはずだから、それで良かったんだろうな。

 鷹さんは鷹さんのまま、俺の今日の過ごし方について助言してくれた。それによると着任報告を終えたら2100まで自由時間ではあるが、明日から始まる軍務の準備を怠った者は、2100以降に準備を命じられるという。感謝を述べた俺に「助言はここまでだ。親睦会の10人以外に移ろう」と、鷹さんは司令官に戻った。

 戦士試験の二次試験を受けた生徒は、「戦士試験合格者」が発表される午後4時まで他者との通信を禁止される。例外のトップ10合格者も、二次試験を受けた生徒達への通信は午後4時まで不可能なのだ。ただこの10人が自由時間中に、家族や家族に準じる人達へ合格を告げに行くことは禁止されていない。家族に準じる人達の該当範囲は広く、俺だと深森夫妻と霧島夫妻はもちろん天風一族も含まれるし、結婚式に出席した若林夫妻や小松夫妻等々も含まれるという。もっとも鷹司令官によると、


「午後4時以降にもう一度呼び出され、同じ場所を二度訪れなければならなくなるのがトップ10の恒例のようだな」


 とのことらしい。午後4時以降に勇と舞ちゃんが深森邸と霧島邸を訪れたら「「翔も来なさい」」と、二人の姉に命じられるような感じだね。それも面白そうだから俺は全然いいけど、勇と舞ちゃんは二人だけで2時間ほど過ごしてから深森邸と霧島邸を訪問するんじゃないかな? ま、どこでどう過ごしたとかは詮索しないけどさ。

 みたいなことを、二分割した心の一方で考えていたら鷹司令官に「翔はどうする?」と訊かれたので、一応の予定を告げた。


「姉代わりの人達がいる深森邸と霧島邸を訪れ一度挨拶し、天風一族の地を訪れお世話になった人達と仮陸宮に挨拶し、時間の都合が付けば三人の友人に会う予定です」


 天風一族の地を訪れると知った鷹司令官はとても喜んだ。また、予定が残っているのに引き止められて困ったら「俺の名を出していいからな」と兄貴の顔で言ってくれた。謝意を述べた俺の脳裏に、鷲の姿が浮かび上がる。鷲と橙と晴と藍の話を前世の家族たちにするか否かを、俺は四人に白紙委任されている。四人によると、今のご両親たちも同意しているそうだ。俺は鷹司令官に「10秒ください」と頼み、脳裏に浮かんだ鷲の本体に尋ねてみる。肯定の返事をもらえたので、権限を行使させてもらった。


「昇と奏だけでなく、生まれ変わった元長老衆の方々とも俺は親交があります。四人とも愛情深い両親のもとに生まれ、健やかかつ優秀です。三日前の4月1日に四人は同じ幼年学校に入学しているはずですが、外部と連絡を取れなかったため確認できていません。判り次第、連絡しますね」

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