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「そろそろ時間だ。姉ちゃん、一緒に帰ろう」

「うん、一緒に帰ろう!」


 俺の手を取り立ち上がった美雪は、何が嬉しいのかとてもニコニコしている。その笑顔を視界に捉えただけで些細な謎などどうでもよくなるのが、いわゆる惚れた弱みってヤツなのだろう。ま、それはさて置き。


「姉ちゃん、明日は巡航速度を割り出してみようと思う。どうかな?」「うん、私も賛成」「ありがとう。で質問なんだけど、2000メートル道を使って巡航速度を割り出すには、どんな方法があるの?」「そうね、最も一般的なのは・・・・」


 なんてやり取りしながら、俺と美雪は仲良く並んで訓練場に帰って行ったのだった。

 

 その約4時間後の、昼食時。

 盛んにモギュモギュむしゃむしゃしつつ、俺は自分のスキル表と、幾度目とも知れぬにらめっこに勤しんでいた。

 13歳の試験後にもらえるスキル表は、それまでとは数倍複雑かつ重要と言える。数倍複雑な理由は現在の等級だけでなく、素質の等級も書かれているから。そして数倍重要な理由は戦闘系スキルに加えて、職業系のスキルも書かれているからだ。

 言い訳だが、冴子ちゃんに指摘されるまで剣術の予想成長曲線の算出に興味を持てなかったのは、このスキル表に載っている素質が年々変化しているからに他ならない。いや素質を記載したスキル表を貰うのは初めてだけど、生来の才能を持たなかった俺は素質が年々変化していることへ、「そんなの知ってたよ今更だよ」との感想しか持てないのである。日々の訓練を介して新しい自分を創造し続けている俺にとって、創造と同時に素質も創造されることは、ただの日常にすぎなかったんだね。

 たとえば3歳時の素質欄へ目を向けると、その時点における俺の素質は三大有用スキルの全てにおいて、無しと記載されている。そしてそれは、「そんなの教えられなくても知ってたよ」の究極だった。なぜなら転生時に三大有用スキルを選択しなかったのは、俺自身だからさ。

 続いて素質欄の7歳時へ目を向けると、輝力量が基礎上級、輝力操作が基礎中級、剣術適正が基礎初級になっていた。これも俺にとっては「そんなの今更だよ」でしかない。訓練を始めて最初に感じられたのが輝力、次いでそれを操作しようと試み、そして白薙を時間差なく振れるようになるまで3年かかったというように、習得が早かったものから順に上級中級初級になっていたに過ぎなかったからだ。

 13歳時の素質が7歳時とは似ても似つかないのも、母さんの授業と鈴姉さんの講義のお陰と考えれば不思議は何もない。授業と講義以外にも呼吸法と松果体集中法と太陽叢強化法を開始し、輝力工芸スキルを習得したのだから、素質という名の成長上限が更新されて当然なのだ。ちなみに三大有用スキルの現時点での素質は勇者級、英雄級、上級(基礎を卒業した後の上級)になっている。剣術の素質だけが低いのも、授業等と剣術に関係はないのだから普通だよね。

 身空みそらスキルの素質欄が「不明」になっているのも、素質への不信感を助長している。このスキルの所有者が二人しかおらず、データ不足なのだろうとは思う。しかしデータが揃っていても俺は正直言って異分子なのだから、俺以外のデータを元に俺の素質を算出することに、果たして意味はあるのか? 甚だ疑問というのが正直なところだ。

 職業スキルの素質にも、心を乱されずにはいられない。反重力エンジンの技術者には、既存エンジンの製造に従事する製造者と、新エンジンの開発に携わる開発者の二種類がある。エンジンの部品それぞれに製造の難易度があるからだろう、現在の等級が小級になれば育成対象認定され、仕事を割り振ってもらえるそうだ。反重力エンジンなだけあって難易度には天と地の開きがあるらしく、素質が超級でも適正職業は製造者止まりとされている。開発者を目指すなら極級以上の素質が求められ、そしてここが悩みどころなのだけど、俺の素質欄には極級より一つ高い聖級の文字があったのだ。開発者に興味が無いと言えば、噓になる。新UFOの開発者になれるかもしれないと思うだけで、ときめいてしまうのが本音だ。しかし次の戦争の闇族を史上最強と予測している身としては、二足の草鞋を履くべきではないという心の囁きを、どうしても無視できないんだよなあ・・・・

 これについては保留として、剣術の予測成長曲線の話に戻ろう。

 結論を言うと、冴子ちゃんが正しかった。そんなのは当たり前でもそれについては脇に置き、冴子ちゃんが正しかった理由を述べると、「駆け引きに出会えたから」になる。俺は勇と違い、駆け引きの素質がない。可能な限り前世を遡っても格闘技に心血を注いだ人生を一つも思い出せないので、素質は(ゼロ)と考えるべきだろう。また輝力量や輝力操作と異なり、母さんの授業等々が駆け引きの上達に役立つとも思えない。そうつまり駆け引きの技量がどこまで伸びるかは、すべて俺の努力次第なのだ。その努力の一環として予測成長曲線を算出することは、まこと正しいと言える。かくして俺は、「冴子ちゃんが正しかった!」との結論に至ったんだね。繰り返すけど、そんなの当たり前なだけどさ。

 という訳で、


「姉ちゃん、お昼を食べ終えたよ。ほんの5分でいいから、予測成長曲線の算出方法の講義を今日もお願いします」


 居住まいを正し、俺は美雪に頭を下げた。算出方法は意外と難しく、しかし勉強時間をこれ以上捻出するのは不可能だったので、昼食後の5分間のみ美雪に講義してもらうことに昨日からなったのである。昨日の手ごたえから予想するに、昨日と今日を含めて計四回学べば習得できるんじゃないかな。それは正しかったらしく、


「はい、では四回の講義の二回目を始めましょう」


 美雪はそう言って先生モードになった。憧れの美人教師の授業を受ける思春期男子よろしく、俺は美雪の講義に集中したのだった。


 それ以降は数日間、変化のない日々が続いた。

 舞ちゃんとは結局、短いメールを二日毎にやり取りする仲になった。俺がメールを送った翌々日に返信が来て、その翌々日に俺がまたメールを送る、といった感じだね。それによると舞ちゃんは、グループ分けのかなり珍しい例みたいだ。試験の順位は145万だったのに、5万も飛び越えて130万のグループに入れられていたのである。5万飛び越えの件はまだ誰にも知られていないらしく、つまりもしバレたら流出元は俺だったという事になるので責任重大だが、それに関して不安は覚えなかった。母さんの授業と鈴姉さんの講義を受けて来た身として、秘密をバラさないことに俺は慣れていたんだね。20歳の試験に舞ちゃんが筆頭で臨む予感は、本人にすぐバラしちゃったけどさ。

 この数日間は舞ちゃんだけでなく、鈴姉さんの孤児院から戦士養成学校に入学した全員とメールをやり取りした。するとその全てに、とても興味深いことが書かれていた。なんと俺ら56人以外は、総合順位を大幅に上げるのはほぼ無理と考えているそうなのである。その根拠はさて置き、「俺らは翔のお陰で大幅に上げられることを実体験で知ってるから」「また大幅に上げてみせるね翔君」と55人全員に言ってもらえたことは、思い出しただけで涙が溢れる出来事になっているのだった。

 ヤバい、今も溢れそうなので話題を替えよう。

 まずは、勇から。

 勇の戦闘を初めて見学したのが4日だったこともあり、これからも4の付く日に見学させてもらう事になった。4日、14日、24日の月三回ということだね。数日後に迫った二回目の14日を、俺は首を長くして待っている。

 剣術の成長予想曲線は、4月6日の晩に完成した。駆け引きの重要性に気づけた件も含めて冴子ちゃんにお礼を述べたところ、「友達だから当然よ」と胸をそびやかされた。俺としては単なる友達ではなく特別な幼馴染なんだけどなあ、とちょっぴり寂しく感じているはナイショだ。いつか冴子ちゃんに、そう言ってもらえますように。

 2000メートル道を使った巡航速度の算出は、難航している。美雪によると「走る距離と走る時間が短すぎるのよねえ」とのことらしい。超山脈南麓の合宿場なら容易に計測できるそうだから、2000メートル道は全力疾走専用道になるかもしれない。今のところ毎日4本の全力疾走を続けていて、本音では5本でももの足りないのだけど、霧島教官に「他の連中にあまり見せつけてやるな」と言われたら我慢するしかない。ああ早く合宿で、思いっきり走りたいな!

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