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「創造主の分身である本体を持たぬ種族でも、恒星間飛行が可能な科学文明を構築可能だ。科学文明の優劣と本体の有無に、関係は無いのだよ」


 続いて鈴姉さんはその理由を説明し、そしてそれも地球人の常識を甚だしく逸脱していたとくれば、集中力が危険な領域に突入して当然と言えよう。俺は冗談抜きで「意識体ではなく肉体だったら、脳が焼き切れていたかもな」と案じたものだった。

 鈴姉さんによると、地球誕生時は今の数千倍の宇宙線が宇宙を満たしていた等々の理由により、地球の本当の年齢は2億歳に届かないほどしかないという。また数千倍の宇宙線は生物を非常識極まる速度で進化させ、地球人の先祖にあたる直立二足歩行哺乳類も、さほど時間をかけず出現したらしい。といってもアメーバーから数えたら、時間はそれなりに経過していたそうだけどね。

 詳細は俺達がもっと成長してからになるが、出現当時の原初人類は、創造主の分身である本体を持っていなかったという。だが持たずとも原初人類は高い知能を有し、その理由は数千倍の宇宙線が育てた特殊な種族意識にあったそうだ(種族意識とは前回の講義で教わった、明潜在意識内にある共有意識のことだね)。現代の地球でも犬や猫を始めとする知能の高い動物はいて、知能の高さの大部分を種族本能に、言い換えると種族意識に依存している。たとえば虎鉄は虎鉄としての固有自我を持つだけでなく、猫族全体で共有している共有意識つまり種族意識も持っている。そして虎鉄が成長させた固有自我は種族意識の一部となってそれを成長させ、猫という種自体の知能を向上させるのだそうだ。たしか地球でも、犬の脳が年々大きくなっているのは判明していたと思う。

 その種族意識の性能が、原初人類はずば抜けて高かった。あり得ない速度で生物を進化させる数千倍の宇宙線が、その特殊な種族意識を造り上げたのである。テレパシー能力があったことも、超高性能の種族意識の構築に一役買っていたそうだ。

 俺はまだ教えてもらえなかったがある出来事が宇宙に起こり、創造主の分身である本体がそれまでの九次元体を捨て、原初人類の松果体と接することになった。だが今の俺達がそうであるように、松果体と接するだけで本体の能力を十全に使えた原初人類は宇宙に誰もいなかった。本体の力をシロナガスクジラに譬えるなら原初人類及び現在の人類は、ミジンコ未満の力しか発揮できないらしい。よって本体を有するようになっても原初人類の知能と知性に目立った変化は生じず、そしてそれを、原初人類以外の知的生命体もつぶさに見て知っていた。そうその頃の地球には原初人類以外にも、超高性能の種族意識を持つ種族が一種類だけいたのだ。アフリカの人々は他の地域の人々よりその種族のことを伝承として覚えており、伝承ではその種族を「歩くトカゲ」と呼んでいるという。

 前世で重度の中二病を患っていた俺は、歩くトカゲに心当たりがある。だがそれに詳しいと自称する欧米人や日本人でアフリカの伝承を重視している人を、俺は知らない。かくいう俺もその一人だったためアフリカの人々に申し訳なく、伝承に語られるその種族を都市伝説界の名前で呼びたくないと感じていた。鈴姉さんも同じだったのかは判らないが、日本語に堪能な鈴姉さんはトカゲの別名の石竜せきりょうを借り、石竜人と個人的に呼んでいるという。

 鈴姉さんによると石竜せきりょう人は肉体を持っているが、『見た目がまあまあ似ている肉体を持たない意識生命体』も地球にはいて、オカルト界の自称専門家達がその二つを混同しているのも、アフリカの伝承を重視しない風潮に拍車をかけているとの事だった。その意識生命体は地球の第三時代にいわば召喚された者達であり、動物の血から生命力を得ることで仮初かりそめの肉体を一時的に作れるという。また地球の至る所で見られる生贄の儀式の大本おおもとは、大抵その意識生命体に行きつくと鈴姉さんは語っていた。俺は無意識に大声を出しそうになり、慌てて口を塞いだ。日本の神社は太陽信仰系と蛇信仰系に大別たいべつされ、そして後者は古代において生贄の風習が、しかも人を生贄にする風習があったとされているからだ。

 話を元に戻そう。

 石竜人は原初人類と同じく数千倍の宇宙線によって育まれた、超高性能の種族意識を有している。そこに人類のある特性を加えると、石竜人の超科学技術も納得できるらしい。その特性を明かす準備として、鈴姉さんは俺に質問した。


「本物のアカシックレコードを十全に読むこととアトランティス星の卒業に関して、我が師から翔は教えられているかい?」

「この星を卒業し、次の星も卒業し、そのまた次の星も卒業しないと、本物のアカシックレコードを十全に読むのは不可能という事なら教わっています」

「なるほど。ならば国家規模の意識の跳躍の説明も、既に済んでいるかな?」

「はい、教えて頂いています」


 鈴姉さんは頷き、石竜人の説明に戻った。それによると石竜人に、地球の卒業や意識の跳躍はないという。よって知識を大々的に失うことがなく蓄積する一方なため、石竜人達は遥か古代に、いわゆるUFOを製造する科学技術に至ったとの事だった。ここで鈴姉さんは深呼吸し、「やっと本題に入れる」と茶目っ気たっぷり微笑んだ。


「このように本体を持たずとも高度な科学技術に到達した種族は、宇宙に複数いる。容姿は多種多様なれど、その種族には強固な共通点がある。それは、『遺伝子を極めて重視する』という共通点だ。遺伝子の優れた者ほど種族意識と共鳴しやすく、かつ個として成長することで種族意識の成長に貢献するのだから、それで然るべきなのだろう。したがってその種族を、遺伝子族とここでは呼称しよう。対して本体を有する我々は、本体族だな。だがここで、早とちりしてはならない。『遺伝子ばかりを話題にする宇宙人は、遺伝子族なのだな』が、その早とちりだ。そうそう翔は、七次元存在について既に聴いているかい?」


 はい教えて頂いてますと答えた俺に慈母のように微笑み、鈴姉さんは講義を再開した。


「七次元存在は、肉体を持っていない。よって当初は遺伝子を気にかけていなかったが、遺伝子族との接触がそれを変化させた。自分と同じく本体を持っていない遺伝子族が、宇宙に広がる強大な種族に成長したことに驚いた七次元存在は遺伝子に興味を持ち、それを学んだのだ。そして地球人が遺伝子を発見したとき、遺伝子に関する自分達の進んだ知識が、地球人を誤誘導させることに役立つと七次元存在は気づいた。自分達を『地球より進んだ星や次元からやって来た宇宙人』と信じさせることに役立つと、あの者達は気づいたのだよ。これが『遺伝子ばかりを話題にして重視する自称宇宙人が、地球人に多々接触している仕組み』という訳だな」


 鈴姉さんによると、本体族と遺伝子族はどちらも、地球人に過度の干渉をしない宇宙協定に署名しているとの事だった。ただそれは過度の干渉を禁じているにすぎないため、テレパシー等で話しかけてくる者たちはいるという。しかし、


「温室育ちの本体族には荷が重かったようだが、体を張って地球に転生したことへは敬意を抱く」


 というのが、鈴姉さんの個人的見解なのだそうだ。2023年に地球を去った元重度の中二病患者として、俺は胸の中で鈴姉さんに賛同の声を上げたものだった。

 きっとそれを、聞いたのだと思う。鈴姉さんは講義終了間際に、俺の平常心をとことん奪う爆弾発言をした。


「翔なら地球で、巨人伝説を聞いたことがあるだろう」「もちろんあります。最も興味のある話題の一つです」「同意だ。いや、反重力エンジンの勉強をしている翔の興味は、私を凌ぐだろうな」「どういう事ですか?」「今日話した原初人類は、優秀な反重力器官を体内に持っていてね。そのお陰で50メートル級の身長でも、自重に押しつぶされることが無かったのだよ」「な、ごっ、50メートル!?」「そうそう聖書にある『天から降りて来た光の子が美しい娘達を娶り、その子たちがいにしえの勇者らとなった』の娘は、本体を有するようになった原初人類。光の子は、我が師の所属している組織のメンバーだ。光の子をネガティブな者達と歪めているのは、いわゆる誤誘導だな」「な、なっ、ななな~~!」「ふふふ、翔はとても興味があるようだな」「はい、もうおかしくなってしまいそうです!!」「よしよし、ではこれからも講義に出席するのだよ。という訳で、今日の講義を終了する」「エエエ―――ッッッ!!!」「「「「アハハハハ~~~!!!」」」」


 かくしてイジラレ役を目出度くまっとうし、俺は二回目の講義を終えたのだった。


 というのが、6月1日の話。ここで回想を止めてもよいが自分でも整理しておきたいので、時間を二か月巻き戻すことにする。

都市伝説好きなら、支配者に都合の良い歴史を私達が教えられていることを、知っているでしょう。


まったく同様にラケルタファイルのラケルタも、支配者に都合の良い歴史を教えられていて、それをインタビューで答えていましたね。

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