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 もっと正直に言うと「錯覚したいという願望を明潜在意識が叶えてしまう」になるが、それはまた次の機会にしよう。悲しげにそう呟き、鈴姉さんは二つ目を挙げた。


「代表的な能力の二つ目は、アカシックレコードもどきだ。人の本体は創造主を介し、他の全ての本体と繋がっている。その『繋がっている』という事実が明潜在意識に影響を及ぼし、『他者と共有する意識』を明潜在意識内に造る。この他者は過去数千年の全人類を含むことすらあるため、この共有意識をアカシックレコードと錯覚する人が後を絶たない。だがそれはモドキにすぎず、その最大の理由は過去しか記録されていないことだ。しかも人の記憶にすぎないため、単なる個人の主観や間違った歴史観が混ざっていることもあるという、ポンコツな性能でしかない。対して本物のアカシックレコードにそれらが混ざる隙はなく、また因果の連なりも記録されているため、『連なりの先としての未来』を観ることも可能だ。言うまでもなく私ごときにその能力はなく、直弟子にも無理で、可能なのは我が師級の方々のみだ。稀に邪悪な存在に目を付けられ、アカシックレコードもどきとの通路を繋げられ、物質的優位性を得るためにそれを使い、邪悪な存在に乗っ取られてしまう人もいる。しかしそれは、皆がもっと成長してからにしよう」


 毒が強すぎるからな、と鈴姉さんは肩をすくめた。とても気になるのが本音でも、鈴姉さんへの信頼はそれを遥かに凌ぐ。俺は興味をうっちゃり、鈴姉さんの講義に集中した。


「さきほど私は脱線と言ったが、実際はそうでもない。今挙げたアカシックレコードもどきには、地球に生まれた数多あまたの記憶が保存されている。それは大抵の場合、故郷や民族への普遍的かつ根源的な愛に成長し、その特製の愛を魂と認識している人が実に多いのだ。また『魂の消滅』という言葉にも、特製の愛が関係している。地球に輪廻転生する資格を失い、成長段階の低い星へ戻される人々は、特製の愛から切り離されることになる。それを『魂の消滅』と呼ぶ人が、もしくはそう解釈して公表する人が、いるのだな」


 鈴姉さんによると、地球人として転生する権利を剝奪され、もっと低級の星へ強制転生される人々が、未来に集団で現れるらしい。その時期は幾つかありまだ確定してないが、最も早いものは既に通過しているという。俺は西暦2023年に亡くなり今8歳だから、地球は西暦2031年。奇跡の林檎の何とかさんが2031年を強調していたような? と俺のように首を傾げていた先輩方が、多々いたのだろう。鈴姉さんはパンパンと手を叩き、講義を再開した。


「明潜在意識を魂と錯覚する人は多い。だが、一番ではない。最も多く錯覚されているのは、心だ。皆に問おう、地球人だったころ『魂を磨く』という表現を見聞きした人は、どれくらいいるかな?」


 まさしく俺がそうだったので挙手したら、「「「「おお!」」」」との声が背後から聞こえてきた。振り返ったところ先輩方の全員が挙手していたので俺も「おお!」と声を上げてしまい、講堂に笑いが満ちる。このクラスの一員になれた気がして、やたら嬉しかった。


「うむ、予想どおり全員該当したようだな。地球人は心の成長を定義できていないどころか、心を軽視している。軽視しているが故に『心を磨く』は好まれず、代わりに『魂を磨く』という表現が広まっているのだ。また世に流布しているその表現は、人の本体は対等という事実への、最大の妨害者にもなっている。魂を長年磨いてきた自分は魂自体が高級と思いたい人が、地球にはまだ大勢いるのだよ。地球人の成長を目的として新たに作られたスピリチュアルにこそ、該当者が集結してしまっている。それが、地球の現実だな」


 孤児院で育った俺は思い当たることが多すぎ、頭を抱えた。そんな俺へ鈴姉さんが、「できれば話してくれないか」と請う。俺はそれに応え、前世の体験から得た学びを説明した。


「前世の俺の周囲には、俺が孤児院育ちというだけで俺をイジメる人達と、そんなの意識せず俺と対等に接してくれる人達の、両方がいました。前者を上下意識者、後者を対等意識者とするなら、『全ての本体は対等』という事実に拒否反応を起こさないもしくは起こしにくいのは、後者です。なぜなら本体と心の差を少なくした者、つまり心を成長させた者ほど、全員対等という事実に沿った日常をすごしているからです。にもかかわらずスピリチュアルでは、上下意識を助長する言葉が多用され、かつ好まれていました。しかもその筆頭格である『次元上昇』の次元が、実際の次元と似ても似つかないのです。あの人達はいったいどうなってしまうのかと、俺は頭を抱えずにはいられなかったのです」


 話し終えるなり「次元上昇ってなんだ?」に類する先輩方の呟きが、講堂の方々から聞こえてきた。この星の人達は20歳をすぎると90年間老化しないので判り難いが、次元上昇やアセンションという言葉が広まる前に地球を去った先輩方が大半を占めているのだろう。もちろんそれを把握している鈴姉さんは良い機会と思ったのか、スピ界隈に流布する次元上昇について説明していった。すると講堂は、大変な騒ぎになった。


「はあ?」「次元の数が多ければ多いほど高級?」「創造主のいる一次元から離れれば離れるほど高級って、今の地球人は自称宇宙人達に教えられているのか」「真逆を信じさせようとする自称宇宙人達の意図が、透けて見えるよね」「地球を救うべく宇宙から転生してきたスターシードを崇める等々、翔君の言ったとおり、上下意識を助長する罠が随所に張り巡らされていてえげつないな」「大師様のように地球人から大聖者になられた方々も数えきれないほどいて、それは他の惑星も変わらず、それら大聖者たちが宇宙中に広がる組織を作っているのにね」「そうそう翔君、地球にもその組織は当然あって、前世の深森先生が大聖者のひ孫弟子だったことを知っているかい?」「えっ! 知らなかったです!!」


 てな具合に騒がしい講堂で最も騒がしかったのは俺なのだがそれはさて置き、すがる眼差しを鈴姉さんに向けたところ、鈴姉さんは苦笑し降参の仕草をした。


「大使館の通訳士として働くうち、世界平和の重要性を痛切に感じるようになってな。その一端を担える仕事に就いている幸運に気づき、毎日懸命に働いていたら、直弟子が話しかけてきたのだよ。もっともその直弟子は散歩中にたまたま知り合った、善良な普通の日本人だったがな」


 善良な普通の人だった、という鈴姉さんの言葉は俺を妙に納得させた。涙が出るほど幸運なことに俺は母さんとの交友を介し、大聖者がとても気さくな方々であることを知っている。なればこそ俺達は慢心の罠に嵌らぬよう「ご尊顔を拝し奉り」系の挨拶を心がけねばならぬのだがそれは再度置いて、成長すればするほど人々の対等性を実感できるようになるのだから、直弟子が善良な一般市民として暮らしていたことへ俺は大きな得心を抱いたのである。

 だがいかに得心しようと、ひ孫弟子や孫弟子や直弟子が普通の一般人として暮らしていたことに驚愕しないなどあり得ない。この星ならいざ知らず地球もそれは同じだったと知った俺は、自覚がないだけでよほど驚いていたのだろう。「翔、なぜそんなに驚いているんだい?」と不思議顔の鈴姉さんに訊かれた俺は、胸の内を素直に明かした。鈴姉さんはそれに理解を示してくれていたが、俺が最後に言った「しかしさすがは深森先生です。俺なんてひ孫弟子の方々と道ですれ違ったことすら無いはずですよ」だけは違った。何をほざいているのかこの子は系の、呆れ顔になったのである。


「前世の翔は東京に半世紀以上住み、東京の人口はたしか1000万人だったよな。1000万人いれば200人前後はひ孫弟子のはずだから、道で幾度もすれ違っていたと思うぞ」

「・・・え? エエエ―――ッッッ!!!」

「前世の翔は東京に半世紀以上住み、東京の人口はたしか1000万人だったよな。1000万人いれば200人前後はひ孫弟子のはずだから、道で幾度もすれ違っていたと思うぞ」


上には上が幾らでもいることを実感して、日々を生きているのか?


ユーチューブ等で見かける様々な人に上記を用いて、真贋を見極めてくださいね~~

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