表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ビブリオテイカ/零葉の錬金術師  作者: 浦早那岐
日和田潤 2
67/117

エフェクタの手

「へえ、この人リーダーが使えるんだ」日和田が口を開くより先にラカが言った。「だったら侵食は防げるかもね、ある程度」

 ある程度か。日和田は内心ため息をつく。確かにあの女の力を借りないことには、無事に帰還することは難しいかもしれない。何かコツのようなものを掴む必要がある。

「ただ、技術は人並みでね。解呪は専門外だし」日和田ではなく医師が答える。「でもね、リーダーは誰でも使えるもんでもないし」

「相性があるって話だもんね、リーダーそれぞれの中身と。ウチらエフェクタには基本無用の長物だからよく知らないけど。まあ、どっちにしろイチから関係を築くには時間が足りないか」ラカが首をすくめる。「つまり、ウチが調べて、コイツに合わせた解呪のやり方を教えたげたらいいってことね」

「そういうこと」杜松医師はニッと笑う。

「まあ、やったげてもいいけど……やり方自体は教えられないと思うよ。方法の方向性しか」そこでラカは得心がいったように、「ああ、それでエトってことか。ディケルって、その筋の専門家だもんね」

「さすがラカちゃん、理解が早くて助かるわ」

「てことは、その人もエトと一緒に読むってこと?」

「まあ、今回エトちゃんにはリベル・ディケルとの仲介役をやってもらうことになるわな。いずれにせよこの子の背皮にかかった呪いについて理解がないと解呪方を読み取れない可能性があるし、ラカちゃんには事前調査をしてもらわなあかん」

 杜松医師の言葉を聞いたラカは少し考えて言った。「オーケーわかった。引き受けるよ。でも条件があるわ」

 杜松医師が軽く頷いて先を促す。

「ウチも一緒に読む。それが条件。どう?」

 医師はニヤリとする。「かまわないよ。エトさえよければね。まあ、確かにナビゲーターはいた方がいいだろうし」

「オーケー、契約成立ね。んじゃ、とりま背皮の状態を確かめてみようじゃん」ラカは白シャツの両袖をまくる。「この子の両肩を出して、そうね、うつ伏せにして」

「さくら」赤城がさくらを見る。

「おけまるぅ」さくらはそっと、しかし軽々と仰向けの亜生をひっくり返した。まるで

 日和田をチラと窺ったラカは、「背皮じゃなく、ウチの指先を見てなよ」と言って亜生の頭側に立ち、一度だけ深呼吸すると刺青と血管が浮き出ている肩に両手を当てた。

「それじゃあ始めるよ」両手指に嵌めた複数の太い銀の指輪が天井の照明を反射して鈍く光っている。それを見つめていたラカの目が閉じた。

 日和田はラカの指先が触れている箇所を注視する。エネルギーの発散か力場の形成か知らないが、何かしら視覚に変化があるだろうと踏んでいた。そして確かに変化は起きた、はずだった。しかし同時に日和田の視界は目脂が広がったように不鮮明になってしまった。日和田が指先で目尻を拭う。しかし一向に良くならない。それで彼は気づいた。この変化こそが彼女たちの身に起きていることなのだと。

 それからもう一つ、あの女が身を乗り出している。いつもより半歩前に踏み出している。

 その姿に、日和田は思わず視線を向けるが、相手は当然同じ方向へ滑るように移動する。

 日和田はすぐにラカに目を戻したが、どうやら赤城は不審に思ったようだ。彼女はチラチラと日和田を気にしている。どう反応するべきだろうか。

 そう思ったのも束の間、日和田の意識はラカの手に釘付けになった。指が半ばほど亜生の背に埋もれている。少なくともそのように見える。突き入れたのではなく、沈み込んでいる、あるいは溶けて同化しているようだ。

 手はさらに沈んでいく。掌全体が背皮の内側に潜り込むように消えた。背中から腕が生えているようだ。このまま背皮を掴み上げることができるのではないか、日和田がそう思った次の瞬間、ラカの両手がはっきりと視認できた。

「ふう」ラカは額に浮いた汗を下ろした袖で拭った。

「で、どうだった?」医師が訊く。

 ラカは片手を上げて制止し「とりまお茶飲みたい」

「あるよ」さくらがペットボトルを差し出した。

「サンキュ、用意がいいね」ラカは小気味良い音を立ててキャップを開けた。飲みかけではないようだ。

「ホント、タイミングいいねぇ」

 杜松医師が言うと、さくらはベッドの横を指差した。備え付けの冷蔵庫がある。「そこにあったヤツ。飲みかけになる前でよかったよ」

「他所様の冷蔵庫を勝手に開けるな」

 赤城がため息混じりに言うとさくらは「てへぺろ」と舌を出した。

「どしがたいわね」ラカはペットボトルを半分ほど飲み干すと、キャップを閉めて冷蔵庫に入れた。

「それもちゃうと思うねんけど」杜松医師は苦笑する。「まあ茶は後で買って返すとして、この人らは警察官や。ICS関係専門の部署のな」

「警察?マジで?信じらんない」ラカは呻く。

「まま、それも後で説明するやん。で、手応えとしてはどないなもんなん?ラカちゃん」

「そうね」ラカは腕を組んで口を開いた。「一口に呪いって言っても幾つか種類があるのは知ってるんだよね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ