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ビブリオテイカ/零葉の錬金術師  作者: 浦早那岐
レッティアーノ・ルーヴ
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巡る思考

 階段を一段一段上がるにつれ、双子たちの衝撃が薄れ、頭が冷めていく。

 入り込んだのが四人なら、二人が四階にいることになる。加えて手引きした裏切り者も。司書の死体は見ていないから、口封じに殺されたわけではなさそうだ。状況はまったく芳しくない。


 ただ、プルディエール嬢たちに戦う力がまったくないかといえば、そんなことはない。

 そもそもプルディエール嬢は、あのブランペルラから逃げおおせたのだ。か弱い女というわけではあるまい。

 それに彼女らは背皮の力を借りることができる。それはラグランティーヌも同様だ。もちろん私も提言していた。


 このビブリオテイカには、武闘派で鳴らしたアンブリストの背皮が幾つか収蔵されているのだ。一時的にそれらと同期すれば、彼女らは即席の達人になれる。本家には及ばないまでも、エルメリら相手にまったく歯が立たないことはないはずだというのが、私の見立てだった。


 ただし、本来の管理者が一時譲渡に応じてくれればの話だが。

 背皮はリベルではないため、人間と共生することで活かされている。人間と代謝機能を共有していなければ、それ以外の保存方法がない現時点では、死んでただの刺青人皮になってしまうのだ。つまり背皮はいつも司書の誰かに貼り付いている。その司書が主任管理者であり、全責任と権利を有している。司書の同意がなければ背皮の力は借りられない。

 背皮を借りられなければ、その司書自身の手を借りればいいのだろうが、残念ながら常に図書館にいるわけではない。生活の場は別なのだ。それがこの分室の特殊な点で、修道院のように生活の全てがそこにあるのではなく、図書館は仕事場であり、城下町に自分の住居と家族を持っているのだ。分室に寮を作る空間的余裕がないので、どうしてもそうなってしまう。

 そのため司書たちが非常時に駆けつけることなどできそうもない。


 それにしてもあっさり私を放免したものだ。腕を負傷した私など取るに足らないということか。

 私が上階に行ったところで脅威にはなり得ない理由があるのかもしれない。

 武力としての手駒である私と女騎士の両方を抑えることのできる手札。

 確かにそれは存在している。それを早々に手に入れる算段がついていたというのか?


 ラグランティーヌ。

 彼女は私と騎士の泣きどころである。エルメリたちを手引きした人間は、ここの司書だろうから、それを知っているはずだ。爆発音で我々に気づくとすぐにラグランティーヌを押さえようとしたに違いない。そのときにはエルメリも上階にいたのかもしれない。力関係的にはプルディエール嬢側が圧倒的に不利だ。

 しかしそれも彼女らが避難していなかった場合に限る……


 いくら考えたところで実際目の当たりにしてみなければわからない。

 

 さて、いつまでも考えを巡らせてはいられない。

 私は四階のフロアに立った。殺気と呼べそうな気配が幾つかある。しかし動きは感じられない。どうやら膠着状態にあるらしい。ディケルは間に合ったようだ。


 私は記憶を辿り、慎重に気配の方へ進む。ここでは高い天井に届く書架が整然と並んでいる。そのほとんどの部分は彫刻や絵画による装飾で埋められ、肝心の本は一つの書架につき一冊だけだ。それも錠前付きの鉄の扉の奥であり、半分以上は空であるらしい。盗難対策の一環であるという。

 書架の装飾の中には名だたる名匠の手によるものもあると聞くが、いま眺めている余裕はない。この先には小貴族の食堂ほどの広間がある。おそらくそこが主戦場。私はそっと書架の陰から覗き込む。


 まず初めにディケルの背中が見えた。

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