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ビブリオテイカ/零葉の錬金術師  作者: 浦早那岐
レッティアーノ・ルーヴ
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計画

 この山を越えるのは、これで何度目だろうか。二十を超えた辺りで数えなくなった。ただ、ディケルを連れてというのなら二度目になる。

 二人してアンブリストらしく影になり、と言いたいところだが、違う。神獣狩りに遭わないためではなく、そもそもディケルは自分自身を影にはできないし、私自身も完全とは言い難い。影化は対象が複雑になればなるほど難しいのだ。虫や魚を除く動物など、生きているうちは影にできない。生命は流動的であり、変化は複雑性を増す。いや、生きているということこそ複雑さの極みだと私は思う。(虫や魚にしても、完全に不可能ではないというだけだ。少なくとも私は死にかけの魚を影にした例一つしか知らない)生きている人間など複雑さの最たるものだ。自分自身だからこそ辛うじて可能であるにすぎない。

 自分自身を容易く影にできる、プルディエール嬢が特別なのだ。

 彼女をのような者が真のアンブリストであり、ディケルも私も未だ正しくアンブリストとは言えない。リブラリアンの背中に張り付くくらいならいざ知らず、私はリベルを遺せやしないだろう。しかし、ディケルには可能性がある。

 いまはまだ精神の統合という点で粗さが目立つものの、天性のものも手伝ってか、影を復元することには非常に長けている。反面、モノの影化に手こずるところは年相応といえる。

 こればかりは成長過程の必然であり、もうそろそろ抜け出すべき年齢とはいえ、一足飛びに越えるわけにはいかない。脳の構築には、良くも悪くもこういう時期が一定期間必要不可欠であり、今後の成長率に大きく影響する。ディケルの修行開始が遅かったことを思えば、かなり頑張っている方だろう。

 いずれにせよこの時期はある程度のリスクを覚悟する必要がある。柔軟であるがゆえの不安定さ。まさに今のディケルがそれだ。

 こんな状態で事を未然に防げるのか。いや、そもそも完全に出遅れているのだ。どのように事を収めるのかという問題になる可能性が高い。口にはしないが、ディケルもわかっているだろう……そう、本当にわかってくれているといいのだが。

 

 事の発端は、アンブリスト仲間と馴染みの酒場で旧交を暖めている際、そいつの口から、エルメリが人を集めていると聞いたことだ。

「教会のお偉いさんから依頼を受けたかは知らんが、集めている面子が荒事専門の非正規なヤツばかりなんでな。そもそもアンブリストの暗殺が生業のやつらだ。ちょっと気になってな。ほら、おまえの妹のことがあるだろ?」

「ああ、なるほど。だが、あいつに限ってエルメリと組むことはあり得ないな。犬猿の仲ってやつさ」

「オレが言いたいのは、逆に狙われてるってことはないかってことだ。こう言っちゃなんだが恨みを買ってるだろ」

「いや、あいつなら返り討ちにするだろう。たとえ相手が十人でもな」私は冗談のつもりなく言った。

「確かに」友人も身震いしながら同意した。「余計な心配だったな」

「いや、ありがたいよ。忠告してくれる友人ってのは得がたいものだ。よし、オレたちの友情に乾杯だ」酔いも手伝って、私はくさい台詞とともに杯を掲げた。

 ワインを流し込みながら、私はエルメリというエフェクタくずれの男について、昔聞いたことを思い出そうとした。よくもまあエフェクタになれたものだと思うほど、自身の欲に忠実な男らしい。確かにエフェクタはまずもって戦闘力が重要なのだが、早々にエフェクタの称号を剥奪されたことから、その評価は間違ってはいないのだろう。その一件にあの妹が関わっていたことで、逆恨みされているのではないかと友人は心配したわけだ。

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