出てこい
「とにかく、ダーシアンの本当のところを聞き出さないとね。話はそれから」プルBが言う。
「本当のところ?」エトが首をかしげる。
「彼の真の目的がなんなのかってこと」
「おおかた生き残ることなどであろうがな」プルAが苦々しげに言う。
「ああ、なんかそんなこと言ってたよね」エトはリベルDの記憶を思い出してつぶやく。
「自分が生き残るためだったら、宿主を害するってのはそれに反する行為じゃないか?」自問自答するように日和田が言う。
「それは、どう生き残るのかによるな」プルAは考えつつ続ける。「いま、我が宿主の学友は闘っておる。ゆえにこういうことになっておるわけだ。抵抗を止めれば……速やかに融合が進み、ダーシアンが復活する。と同時に、おまえの友も助かる。おそらくな。ただ……」
「前のままっていうわけにはいかないってことね」引き取ってエトが言う。
「そういうことだ。ただ、死ぬことはない。心もな。多少の変化に目をつぶるならだが」
「多少って、どれくらい⁈」エトは首を振る。「亜生がそれを望んでいるのか、あたしには決められないよ」
パンッと手を叩く音が響く。プルBだ。
「話はこの辺でおしまい。結局すべてはあたしたちの推測の域を出てないっしょ?」
「まあ、直接確かめることには賛成だ」プルAが言った。
「じゃあ、そろそろ呼び出すとしますか」プルBがスタスタと一同より前に出る。
「ダーッシュ!」プルBは前方に向かって声を上げた。「ずっと見ているんでしょう?」
心なしか声音と言葉遣いが変わっているようだという印象をエトは受けた。
「生き残ることに必死で、わたしのことなんか構ってられない?」
辺りはしんと静まりかえっている。
エトと日和田は固唾を飲んで見守っている。
プルAは目を閉じて微動だにしない。
周囲に変化がなさすぎて、エトは自分の体感時間に自信がなくなっていく。
一分経った?いや、もう五分は過ぎてるはず。まさかまだ三十秒くらい?
不意に何かが床を打つ音がする。トン、トン、トン……
プルBだ。彼女が踵を支点につま先を上げては下ろしている。苛立っているんだろうか、とエトは思ったその瞬間、
「ダーシアン‼︎」プルBが大声を張り上げた。「おい、こらっ、ダーシュてめえ、なにスカしてやがんだ、コラ!」
ダンッとプルBは床を踏み鳴らす。
「このわたしがっ、直々にっ、会いに来てやったんだぞ!とっとと出てこいや‼︎」
これにはエトも日和田も声を失くした。その少し後ろでプルAが小さくため息をつく。「はあー、堪え性がないのは変わらぬものか」
すると、ずっと物音ひとつしなかった部屋の奥で何かが動く気配があった。
暗がりに何かが白く浮かび上がる。
「アオッ」思わずエトは叫んだ。




