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お姫様と仲良くなった話 その7

ここから後半です。

 私はコンコンと2回ノックをしてから、ズドンッと勢いよく王室のドアを開けた。


「失礼しますっっっ!!!!」

「「「「……っ!?」」」」


 私の大きな声が王室に響き、中にいた全員の視線が私とルナちゃんに集まった。

 王室の広間には長い髭を蓄え王冠らしきものを被っているおじさん(多分この人が王様)、勇者とそのパーティー、そしてメイドらしき人たちが結婚式の準備をしていた。


「な、何者だ貴様は!?」


 当然、王様は困惑した顔で私に聞いてくるのだった。




 ルナちゃんは私を信じ(とゆうか私の熱意に折れた感じで)、自分の結婚を阻止する事にした。

 阻止する為には王様と勇者を説得する必要があるので2人の居場所を聞くと、2人ともこの城の王室で結婚式の準備をしているらしい。

 なので私達はこうして王室に来て、結婚を取りやめるよう説得しようとしている、今はそんな状況だ。


 正直、もっとマシな作戦があったんじゃないかとも思ったけど、どうせ勇者をコテンパンにする訳だし、なら正面突破でカチコミを入れる方が早いなと思っての行動だ。

 このやり方だと私はもうこの王国の反逆者みたいだけど、まぁ、別に良いよね。…………いや、良くはないけど。




「私は友里ゆり子。旅人で、ルナちゃんの友達です」


 私がそう答えると、王様は更に困惑した顔になった。


「た、旅人?それに、ルナの友達だと!?どういう事だ。何故貴様はこんな所に、しかもルナと一緒にいるのだ!」

「それらの説明はルナちゃんが話します」


 そう言って隣にいるルナちゃんの方を振り向く。


「……………………」


 ルナちゃんの顔色はあまり良くない。手も震えている。相当緊張している様だった。


「緊張、してる?」

「……………すみませんユリコさん。少しだけ」

「へへ、大丈夫だよルナちゃん」


 私はルナちゃんの緊張を解くためにそっと左手で、ルナちゃんの右手を握った。


「……!?ユ、ユリコさん!?」

「私がついてる。だから勇気を出して」


 急に手を握られて少し驚いた顔をしていたルナちゃんだが、私の言葉に勇気を出してくれたのか、ゆっくりと頷く。

 ルナちゃんが正面にいる王様と勇者たちの方を向く。瞳をキリッと細め、手の震えも消える。そんなルナちゃんの顔には"覚悟"の文字が浮かんでいた。


「王様…………いや、お父様!私は、勇者様と結婚したくありません!!」


 そしてルナちゃんは自分の旨を吐き出すように叫んだ。


「…………ルナ、どういう事だいそれは」

「…………ッ」


 その言葉に先に反応したのは王様ではなく、側にいた勇者だ。勇者は鋭い目つきでルナちゃんを睨みつける。その瞬間、握っていたルナちゃんの手の震えたのが伝わってきて、怯えているんだと理解する。


 私はギュッと、安心させる為に更に握ってあげる。すると私の想いが伝わったのか、すぐに震えは止まり、ルナちゃんは再び喋り出した。


「言葉通りです。私は貴方とは結婚したくないんですよ」

「…………ルナよ。それは本気で言っているのか?」


 今度は王様が聞いてくる。ルナちゃんは王様の方を見た。


「はいお父様。私は本気で勇者様とは結婚したくありません。いや、()()()()()

「それは、何故だ?」

「嫌いなのですよ。勇者様が。」

「…………嫌いだと?何故だ、どこが気に食わない?」

「気に食わないどころではありません。横暴で、態度がデカく、自分勝手で様々な人に迷惑をかけて、しかも周りに女性しかいないような人など、誰が結婚したいんですか」


 覚悟が決まったルナちゃんは臆しない。自分の心の内を次々と言っていく。


「ですので私は勇者様が大っ嫌いなので結婚しません。私からは以上です。いいですよねお父様?」

「「「「「……………………」」」」」


 またしてもこの場に静寂が訪れた。ルナちゃんの話を聞いて王様はあからさまに動揺し、ルナちゃんへの返答に迷っている様だった。無理もない、娘の結婚前日に本人からこんな事を言われたらそりゃあそうなる。

 それに結婚式の準備に取り掛かっていたメイドさん達は動揺と、そして恐怖に怯えるようにある人物を見ていた。当然である。だってこの人たちが黙ってないからだ。


「ルナお嬢様!!それはどういう事ですか!!」

「アレス様になんたる暴言を!!」

「許せない……許せません!!!アレス様を侮辱するなんて!!!」


 勇者パーティーの3人が鬼の形相で怒鳴る。そして、勇者も冷徹無慈悲って感じの顔でルナちゃんに言う。


「なぁルナ。僕は寛大だからさぁ。もし今の発言を取り止めたら許してやるよ」

「…………」


 しかしルナちゃんは臆しない。ビビらず、静かに勇者を見つめる。

 だが、勇者はこう言ってきた。ルナではなく王様の方を見て。




「…………この国が滅んだ姿は見たくないなぁ」

「「「!?」」」


 そう、脅してきたのである。『この国がどうなっても知らないぞ』と。本気の眼をしながらそう言ってきた。


「ま、待て!待ってくれ勇者よ!すまなかった!ルナは私が言い聞かせておく。だから私の顔に免じてここは……」


 王様は慌てて説得しようとするが、勇者は首を横に振る。


「いやいや王様。僕は今、ここで、ルナからお詫びの言葉を聞きたいのですよ。…………じゃなければ、僕のこの怒りも収まりそうにありません」

「…………なっ」


 分かりやすく王様が狼狽えたのを見て、そろそろ私の出番かなと確信する。


「すみませんちょっといいですか?」


 自分で言うのもなんだけど、場違いに落ち着いた声にその場の誰もが私に視線を向ける。


「……なんだ。部外者の貴様がなんのようなんだ」


 王様がうんざりした感じでそう言う。


「私は友達であるルナちゃんに『結婚を取りやめるよう手伝って欲しい』と頼まれてここに来ました。そこで、私から一つ提案があるのです」


「提案だと?」と聞き返してくる王様にコクリと頷いてから、私はこの王室の雰囲気に見合うように極力上品に、優雅に手に胸を当て、こう提案した。



「―――王様。もし私が勇者様を倒してみせたら、ルナちゃんの結婚を取りやめてくれますか?」


「「「「「「…………!?!?」」」」」」


 何度目か分からないけど、王室の全員がまた驚く。


「ゆ、ゆゆゆ勇者を倒すだと!?貴様がか!?」

「はい王様。私が勝ったら勇者とルナちゃんの結婚を取り止めてください。もし勇者が勝ったら、ルナちゃんは結婚を認めます」


 隣のルナちゃんに「良いよねルナちゃん?」そう聞くと、ルナちゃんは「問題ないです」と頷いた。

 この決闘の話は王室に来るまでにルナちゃんに説明していた。だからルナちゃんは承知済みだ。


「ま、待て!貴様が勇者を倒せると思っているのか!?」

「大丈夫です。こう見えても私は相当強いと自負しています。勇者様など片手間で捻り潰せますよ」

「なっ!?なんだと!?何様だ!!このアバズレが!!」

「旅人風情がなにを!」

「死ねブス!!調子乗んな!!さっさと消えろ!!目が腐るわ!!」


 王様にイキリ発言をかますと、勇者パーティーが罵声を浴びせてくる。正直言って最後のはちょっと心に来たけど、構わずに私は勇者を見る。


「勇者様はそれでいいですよね?」

「キミは喫茶店であった子だね。なんのつもりだい?本当にこの僕を倒せるとでも?」

「…………私と戦うのは怖いですか?」

「…………なるほど。昨日僕を出し抜いて調子に乗ってる訳か。いいだろう、少し痛い目を見てもらおうか」


 勇者はすんなり乗ってくれた。どうやら煽り耐性がないみたいだった。

 私は再度王様の方を向いた。


「王様、認めてくれますよね?」

「い、いやしかし……」


 王様は戸惑いながら、ルナちゃんの方を見た。それに対してルナちゃんは穏やかな笑みを浮かべる。


「大丈夫です。私はユリコさんを信じています。きっと、ユリコさんは勇者を倒してくれます。私の為にも、()()()()()()()

「………………」


 その言葉に王様が俯いてから、手に顎を当てて考え込む。そして、


「…………ハァ。よし、ここに2人の決闘を認めよう。場所はこの城の闘技場。そこで2人とも、1時間後に闘技場で決闘をしろ。そして勝った方の意見を尊重するとしよう」


 王様は威厳を取り戻すように私の承諾を認めてくれた。

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