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お姫様と仲良くなった話 その4

まだ前半です。

 それから私は、ルナちゃんにこの王国を色々と案内して貰った。


「ねぇ見てみて!この髪飾り可愛い!」


 まず道を歩いていると、アクセサリーショップの露店に出ていた花型の髪飾りが目に止まった。


「髪飾りですか。これは薔薇ですかね?とても綺麗です」

「ねぇねぇ、ルナちゃん!ちょっとこっち向いて!」

「えっ?」


 私はその薔薇の髪飾りを手に取り、ルナちゃんの髪に付けてあげた。


「うわぁ〜!凄く似合ってる!ほらほら、自分でも見てみなよ!」


 お店に設置されている鏡に誘導して、前に立たせる。するとルナちゃんの顔が一気に明るくなった。


「ね?似合ってるでしょ?」

「はい!本当に、ピッタリです!」

「フフフッ、私ってファッションセンスが良いからさぁー。ルナちゃんに何が合うかが、こう……ビビッと分かっちゃうんだよねぇー」

「そ、そうですか。センス、ですか……」


 そう首を傾げたルナちゃん。私を方をジロジロと見て、「確かに」と呟く。


「ユリコさんって、結構オシャレですね。特にその首に巻いてる『チョーカー』と、右手首の『ブレスレット』。凄くお似合いです」

「えっ、コレとコレ?」


 そう言ってルナちゃんは首と右手首を指差し、私が身につけてる"チョーカー"と"ブレスレット"を褒めてくれた。ハハハ、別にこれはオシャレで付けてるんじゃないんだけどなぁ……。





 色々なアクセサリーを一通り見た後、私達はアクセサリーショップを後にした。あっ、薔薇の髪飾りはルナちゃんがお買い上げしました。

 そして次に、ルナちゃんの提案で花屋さんに行った。なんでも、ルナちゃんのお気に入りのお店だとか。


「私、花が好きなんですよ。なんだか花を見ていると、心が落ち着くんです」


 花屋さんの店内で色々な花を見ていると、ルナちゃんが楽しげにそう言った。


 花ねぇ。別に私はそこまで興味はないんだよなぁ。ほら、あれだよ。『花より団子』的な?私は花を見るよりスイーツの方が好きなんだなぁ。まぁ、花を見てると落ち着くっていうのは一理あるけどね。


 そんな事を考えながら、白い花弁の花を見ているとルナちゃんが近づいてきた。


「コスモス、好きなんですか?」

「えっ、あっ、いやいや、好きとかじゃないけど。綺麗だなぁって思って」


 とゆうか、へー。これってコスモスなのか。名前は聞いた事あったけど、知らなかった。私花はあんまり詳しくないし。綺麗な花ねぇ。

 それにこの異世界にコスモスがあるっていう事は、私が住んでいる世界とこの異世界は、割と似た環境と生態系っていうことか。まぁ、だからなんだという話か。


「ふふふ、白いコスモスの花言葉は『優美』、そして『美麗』。実は私、この白いコスモスが一番好きなんです」

「へー、そうなんだ。てゆうか、結構詳しいね?」

「えぇ、お城の書庫にある花の図鑑は全て読みました」

「ハハ、筋金入りだ」


 なんだか楽しそうなルナちゃん。本当に花が好きなんだと感心する。

 しかし、コスモスの花言葉が『優美』と『美麗』か。なんというか…………。


「なんかコスモスの花言葉って、ルナちゃんみたいだね」

「えっ………」

「いや、ルナちゃんって『優美』と『美麗』を体現した様な感じじゃん?なんかコスモスが好きって言うのも納得いくなぁって」

「えっ、えーと………///」


 そう言うと、ルナちゃんが分かりやすく照れだした。あっ、もしかしてルナちゃん、褒められ慣れてないなぁ?よしっ、もっと褒めちゃお!


「うんうん、きっと白いコスモスの花言葉はルナちゃんの為に生まれたんだと思うね」

「ちょっ、ちょっと!言い過ぎですって!!」

「言い過ぎじゃないもん!本心だもん!」

「も、もう……////」


 そんな感じで、ルナちゃんを揶揄った。しかし、ホントに照れてる姿も可愛いなぁ。羨ましいよ全く。私にもその可愛さと、あと優美と美麗を分けておくれ。



 その後は適当にぶらぶらと歩いた。露店のスイーツを食べたり、服屋で試着したり、たまたまやっていたサーカスの芸を見たり、色々と楽しんだ。


「ねぇルナちゃん」

「はい、なんでしょう」


 一通り街を観光した私は、気になっていた事をルナちゃんに聞いた。


「ちょっと気になってたんだけどさ。この王国って結構兵隊が歩き回ってるね。なんか事件とかあったの?」

「あぁ、本当ですね。そういえば確かによく見ますけど…………でも、これといって大きな事件は無いですよ」

「えっ、じゃあ毎日こんな感じ?」

「いや、いつもはこんな感じじゃないですね。つい最近な気がします」

「ふーん」


 それから日が落ちてきた。最後にルナちゃんは見晴らしのいい高台へと案内してくれた。


「うわぁ!キレー!」


 その高台では、夕日でオレンジ色に染まった街並みが一望出来た。

 綺麗な夕焼けの街を見ていると、涼しい風が肌を掠める。なんだかとても心地よい気持ちになる。


「ここが一番、好きな場所です。私の好きなこの王国が、一望出来ますから」

「…………そっか。確かに良い場所だね」

「…………はい」


 そんな会話をして、夕日と街並みを見ていると、1日が終わるんだなと実感してきた。


 あぁ、本当に楽しい1日だった。それもルナちゃんがいたからかな。


「私、やっぱりこの街が好きです」


 隣で一緒に景色を見ているルナちゃんがそう言う。私は「うん………」と返事をする。


「でも、結婚もしたくないです」


 私は「そっか………」と返事をする。


「いつ結婚するかは分かりません。でも、多分もうすぐです」


 私は「そうなんだ」と返事をする。


「……………それでも、私は結婚したくはないです。でも、ずっと街を出歩いていたいです」


 私は何を言えばいいのか分からず、無言になった。


「どちらか、片方は諦めないといけないんですよね」

「………………」

「どうしても、両方とも叶える事は出来ないんですかねぇ………」


 私は無言のまま、ルナちゃんの嘆きを聞いているだけだった。


 私はただの旅人だ。しがないしがない、ただの旅人。当然、この王国のことに首を突っ込んで良いわけがない。

 それに私は日本人。この世界では私の方が異世界人だ。文化の違う私が何かして、逆に最悪な結果になったらどうする。残念ながら私には、ラノベや漫画によくある、時間を巻き戻す様なチート能力はないのだ。失敗したら、終わりなのだ。


 そして、これはルナちゃんの問題だ。そもそも私が関わる訳にはいかない。もし関わって、逆にルナちゃんに迷惑をかけたらどうするの。出会って1日だけの関係である私が、でしゃばって言い訳ないじゃない。


 だから、関わるわけにはいかない。と、心の中で言い訳をしている自分がいた。


「あの、ユリコさん」

「ん?どうしたの?」

「ユリコさんは、いつここを旅立つんですか?」


 ルナちゃんがこの夕日の様に淡く、切ない声で聞いてきた。


「……明日には出発するよ」


 そう伝えると、「そうですか」とどこか儚げな返答が返ってくる。


「……ねぇ、明日もこの王国を観光したいんだけどさ」


 その返答が本当に、本当に、儚げに感じたので、私は極力笑顔を作った。そして、明るく言った。


「明日もまた、付き合ってよ」

「…………ッ」


 これは、ルナちゃんの現状にただ見ているだけという、凄くドライな私がせめて出来る提案だった。


「いいかな、ルナちゃん?」

「………………えぇ、はい!是非とも!絶対に明日も案内します!いや、しましょう!」


 ルナちゃんはさっき買った薔薇の髪飾りが入った紙袋をぎゅっと握りしめて、明るくそう言った。





 そして、ルナちゃんは「また明日、この王国を案内します。この高台で待ち合わせしましょう」と言って帰っていった。

 その後ろ姿を見届けた後、私は右手首に付けているブレスレット…………通称『転移ブレスレット』を空に掲げた。


 この『転移ブレスレット』は、簡単に説明すれば様々な異世界に移動する事が出来る。私が異世界を旅をする中でなくてはならないアイテムだ。これを使って、私は色んな世界を行き来している。


 ブレスレットがいつものようにピカリと光る。途端、光が私を包み込んだ。


 そして私は一旦、家族が帰りを待っている世界へと転移するのだった。

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