お姫様と仲良くなった話 その2
多分あと9〜10話で終わります。
それから私は女の子がオススメするお店に入った。なんでもそこのパンケーキが絶品とのこと。
2人席に座って、そのパンケーキと紅茶を注文すると、ものの数分で出てきた。
ハッキリ言おう。めちゃめちゃ上手い。超甘い。このふんわりしたパンケーキと、柑橘系の風味がする生クリームがとてもマッチしていて、いくらでも食べられそうだった。
「うん!凄く美味しい!」
「ふふっ、なら良かったです」
女の子は笑みを浮かべてそう答えた。
そういえば、この子の名前をまだ聞いてなかった。
「ねね、そういえば名前まだ聞いてなかった。私は友里ゆり子、貴方は?」
「……ルナです。名前はルナ」
「へー、ルナちゃんかぁ。可愛い名前してるなぁ。私なんてゆり子よゆり子。なぁんかパッとしないわよねぇ」
「トモザト・ユリコ…………さん。余り聞かない名前ですね?」
「え?あぁ、まあちょっとね。色々訳ありで」
「?」
そんな感じで話をはぐらかす。流石に異世界から来たとは言いづらいからね。とゆうか説明するの面倒だし。
「あ、そういえばさっ。さっきから思ってたけど、ルナちゃんって結構可愛いよね。モテるんじゃない?」
「えっ!?そ、そうですか……?」
分かりやすく照れるルナちゃん。うんうん、あたふたしてる所も可愛いじゃんこの子!
「しかもさ。こう、なんていうか、気品?みたいなさ。そういうのが身体からドバァーって溢れ出てるんだよねぇ〜。いや〜、なんか羨ましいなぁ〜」
「そ、そんなに褒めないでください……。それに、ユリコさんの方が相当美人ですよ。そのポニーテールも似合っていますし」
「え、ホントに?ハハっ、嬉しい事言ってくれるじゃん!ルナちゃんみたいな可愛い子に言われるのって、冗談でも嬉しいよ」
「い、いやいや、冗談じゃないですって!」
「え〜、ホントかなぁ〜?」
「あっ、その顔!信じてないですね!もう、本当に言ってるのに!」
そう言って可愛くむくれるルナちゃんを見て、思わず吹き出す私。それに釣られてルナちゃんも吹き出し、2人で仲良く笑いあった。
それにしても、ルナちゃんって本当に可愛い顔してるなぁ。長い金髪も似合ってるし、仕草とか喋り方も本当に清楚だし。服装はどこにでもいる街娘って印象だけど、なんだか上品で神々しい。
パンケーキもすごく綺麗に食べてるし、きっと育ちが良いんだなぁ。どこか位の高い家柄なのかな?あ、でもそれじゃあこんな格好はしてないか。じゃあ親の教育が良いのかな。
何はともあれ、いいなぁ〜。私もこんな感じになりたいなぁ〜。
てな感じで、私とルナちゃんは美味しいパンケーキを食べながら談笑をしていた。そんな最中だった。
「――やぁ、ルナ!こんな所で何してるんだい?」
せっかく仲良く話し込んでいるのに、1人の男が話しかけてきた。
「あ、勇者さま………」
そう、さっきルナちゃんが話していた勇者本人である。
簡単に見た目の事を言うと、優男、スラッと高身長、黒髪。あとなんかキザっぽくてうざい。大体そんな感じ。
「勇者って、もしかしてこの人がさっき言ってた……?」
そう小声で聞くと、ルナちゃんはこちらを向いてコクリと頷く。
「帰られていたのですね、勇者さま」
「ああ、さっき丁度戻って来たんだ。いやぁ、今回のモンスター討伐は中々大変だったよ」
ヘラヘラした態度で勇者はそう言う。その勇者の周りには3人の女性が立っている。武装しているので、多分これが勇者パーティーのお仲間さん達なんだろう。
「あれ、食事中だったのかい?」
「ええ、今この方と一緒にパンケーキを食べていた所です」
ルナちゃんが紹介したので、勇者に「どもっ」と軽く会釈した。
「へー、君は?」
「友里ゆり子と言います。ルナちゃんとはさっき知り合いました」
「ユリコさんは旅人で、談笑も兼ねてこのお店で食事をしていたんです」
「ふぅん。そうなんだ」
素っ気ない態度でそう答える勇者。しかしなんだろうこの人。別に普通に話してるのになんか勘に触るなぁ。どことなく態度がイラッと来るっていうか……。
「それで、勇者さまは私に何か御用ですか?」
ルナちゃんが尋ねると、「いやいや」と勇者は首を振る。
「昼飯がまだだったんで、ただ立ち寄っただけさ。まぁ、君に会えたのは好都合だけどねっ」
キザな事を言う勇者。どうやらこの2人は知り合いらしい。
「折角だ。これから何処かに出かけよう。もちろん、2人っきりでね」
「いえ、結構です。今はユリコさんと食べているので」
アプローチを華麗にあっさり断るルナちゃん。それに反応したのが、勇者パーティーの1人だ。
「おい貴様!アレス様の誘いを断るというのか!」
ギッと、ルナちゃんを睨むガラの悪そうな女を勇者は宥める。
「落ち着け。なあに、どうせ断れはしないさ。だってそうだろ?僕達は婚約関係だからね」
「……ッ」
そう言われて、あからさまに嫌そうな顔をするルナちゃん。見た感じ、どうやらルナちゃんは勇者の事を嫌いらしい。
あれ、とゆうか今、婚約関係って言った?ルナちゃんと勇者が?
「さあ、行こうかルナ。いや、ルナお嬢様」
そう言って手を差し伸べる勇者に、更に嫌そうな顔をしたルナちゃんを見て、「これは助け舟を出した方がいいな」と判断した私は、2人に割って入る。
「すみません。これからルナちゃんにはこの国を案内して貰うんです。そうだよね、ルナちゃん?」
私がそう言うと、ルナちゃんは私の助け舟を理解したらしく「はい」と晴れた顔で頷いた。
「じゃあそういう事なんで。行こっかルナちゃん」
「えぇ、行きましょう」
私はお金を机に置いて立ち上がる。それに続けてルナちゃんも立った。
が、勇者はそう簡単に納得しない。
「おっと!行かせないよ?」
「……ッ」
突然、勇者が強引にルナちゃんの腕を掴んだ。
「は、離してください……」
「ハハ、いやいや離さないよ。それにもし君が僕の誘いを断ったら、君のお父様がなんて言うかな?」
「……!!」
ハッとした顔をするルナちゃん。なんだか分からないけど、どうやら勇者何か弱みを握っている風だった。
「ちょっ、ちょっと!ルナちゃん嫌がってるじゃないですか!」
それを見かねてすぐに私は勇者に反発する。
「うるさいなぁ。今は君を誘っていないんだが?少し黙っててくれないか?」
「………はい?」
すると勇者は鬱陶しそうな目で私を睨み付けてきた。てか、はい?何コイツ?嫌がる女の子の手を無理矢理掴んで。何様なの?しかもこの偉そうな態度、凄いムカつく!
「さあ、"そんな女"ほっといて、僕と一緒に行こう」
「……………」
ルナちゃんがとても思い悩んでいる。どうやら本当に行きたくは無いらしい。
てゆうかコイツ、マジで……………
「悪かったわね、『そんな女』で!!!!」
――ドスッ。
「痛ッッッッ!!!!!」
ルナちゃんを助ける為と、あと普通にコイツに対するイライラが頂点に達したので、私は勇者の足を踵でおもっっっきし踏んづけてやった。
「「「アレス様!!!!!!」」」
「行こうルナちゃん!」
「えっ、ええええ……!?」
痛みで地面に倒れ込む勇者と、それを心配する仲間の3人を横目に、私はルナちゃんの手を引っ張って店の扉へと走る。
「べー!ベー!あっかんべー!!」
そして扉を開けて、私の中にあった残りの鬱憤を晴らすように勇者パーティーにあっかんべーをして、再びルナちゃんと走って一緒に店を後にした。
一応練習用の作品なので、批判とか酷評とかお願いします。