お姫様と仲良くなった話 その1
私、友里ゆり子は今まで、沢山の異世界を旅して来た。
ラノベとかに良くある中世ヨーロッパ風の世界や、日本にダンジョンが出現した世界。国同士が戦争ばっかりしている世界に、科学が発展した近未来の世界などなどetc…………。
そんな感じで、色んな異世界を転々と旅してきた訳だから、修羅場だって乗り越えて来た。なので当然私は戦闘において相当強いと自負している。
それに異世界に行くことで様々な能力やスキル、アイテムもいくつか手に入れてきた。
でも、それでも、どんなに強くても、当然私は人間だ。どんなに便利な能力を持っていても、様々なアイテムを持っていて、色々な事が出来ても、私は人間だ。……………決して、神様じゃない。
さまざまな人達と出会って、別れてを繰り返す日々の中で、嬉しい時もあれば、悲しい時もあった。ドジを踏んだ事もあったし、助けられなかった人達もいた。時には何もかも投げ出したくなった。
そしてこれからも、そうやって失敗をする事は沢山あるだろうし、「こればっかりは仕方がない。手遅れだ」って、その場から逃げ出す事もある筈だ。
でも、そんな苦痛を味わっても、私は多分、辞めない。辞められない。この異世界転移の旅を。
あぁ、多分私は異世界を旅してる内にイカれてしまったんだと思う。じゃなきゃ危険がいっぱいの異世界になんていかないし。
でも、それでも、だって、だって好きだから。異世界を旅するのが。異世界そのものが。好きだから。私は異世界に刺激を求めているから。
―――そう、私は異世界に魅了されている。病的に。
てな小説っぽい出だしをしたところで!今回私は良くある中世ヨーロッパ風の世界に行ってきました!イエイ!
良くある中世ヨーロッパ風の世界、いわゆるナーロッパは今まで何回も行ってきたけど、いやぁ〜やっぱり飽きないわねぇ〜!
あ、一応この異世界の基本情報を説明するわね。
街を出ればモンスターがいて、そいつを倒せば経験値が入ってレベルアップ!テレッテッテー!
剣あり、魔法あり、チートあり!?みたいな感じの世界。つまりRPG!ドラクエ!FF!ナーロッパって事!
そして特筆すべきなのはやはり、この世界にも魔王と勇者がいるらしいんですよ!!いや〜、やっぱりいるんですね魔王と勇者!いいねぇ、それでこそ異世界!!イヤッフゥー!!異世界バンザイ!!
…………って、まぁ、うん。こういう異世界には大抵いるから、別にもう驚きもないけどね。
まぁテンションを無理矢理あげて解説したところで、今回はそんな世界の、とある王国での話だ。
私はその日異世界に転移してから、とある王国に行った。名前は…………忘れた。
その国の街並みはいかにも中世ヨーロッパ風で、石畳みの道で、木組みの建物が並んだ、華やかな西洋の王国って感じだった。
特筆するところは特になく、強いて言えば鎧と兜を着た兵隊さんがチラホラ街を歩いてるのが少し気になる程度だ。
その国には初めてやって来た私は、取り敢えずどんな国かを知る為に近くにいた女の子に話を聞いてみることにした。
「ねぇねぇ、ちょっといいかな?」
「えっ」
噴水がある広場、そこのベンチに座っていた私と同い年ぐらいの女の子に声をかけた。
「私、この国には初めて来たんだけど、ちょっとこの国について教えて貰えたら嬉しいなぁ、なんて」
「…………ええっと、旅人さんですか?」
「そうそう!だからさ、ちょっと教えて貰えたりしない?」
「ええ、構いませんよ」
金髪で綺麗な顔立ちの女の子は物腰柔らかにそう答えてくれた。
女の子の話を聞いて、この国はどこの国とも戦争していない中立国で、街を徘徊している兵隊さんのお陰で治安も良いらしい。
衛生面は良く、食べ物も美味しく、物価もそこまで高くないことから、観光客も多いそうだ。
「へぇー、良い国なんだねここって」
「ふふふ、そうですね。街並みも綺麗ですし、王様も民衆に慕われていて、他の国とは比べ物にならないくらい、とても良い国だと思いますよ」
「おー、言い切るねぇ、いいじゃんいいじゃん!」
私がそう言うと、女の子が気品ある笑みを浮かべる。
話を聞いていて、本当にいい国なんだと言うのには凄く納得できた。
確かに、王国の正門からこの噴水の広場に来るまで、街の人々は笑顔と活気に溢れていたしなぁ。うんうん、納得納得。
しかし、女の子は「ただ……」と言ってたちまち暗い顔をする。
「この国は勇者パーティーの方々が、魔王討伐の為の拠点とされているのですけど……」
「けど?」
「…………その勇者さまがちょっと……」
「ん?」
それから女の子は、勇者パーティーについて話してくれた。
なんでもその勇者パーティー、余り良い噂がないらしい。
民衆を苦しめていた国の王様とその家族を必要以上に甚振って虐殺して、その後の国の政治は全て民衆に丸投げしたり。
モンスターを倒し過ぎて森の生態系を壊滅状態にしたり。…………そんな感じで、色々と度が過ぎているらしい。
この国でも勇者の横暴はあり、必要以上に態度がデカかったり、そこら辺にいる女の子をナンパしたり、少しでも悪事を働いた人を必要以上に懲らしめたりしているそうだ。
「な、なによソイツ、めちゃくちゃ最低じゃない」
私は心の内を呟く。勇者は善意でやっているのかな?でも話を聞く限りだとちょっとやり過ぎだし、どっちかって言うと悪人って感じじゃないの。
「そうですよね。流石に度が過ぎていますよね」
「過ぎてるなんてもんじゃないわよ。この国の王様はソイツに何か言わないわけ?注意しなさいよって感じよねぇ普通」
「いえ、この国の王様は、勇者を溺愛しております。勇者も決死の覚悟で魔王と戦ってくれているので、そのぐらいの事は目を瞑るそうです」
「え、嘘でしょ?瞑っちゃうの?」
良いのそれは王様として?それはちょっと無能すぎない?それで本当に民衆に慕われてるの?
「そもそも第一に、この世界で最強な魔王を倒せるのは、今現在では勇者パーティーだけなんです。そんな人達を懲らしめられる人なんて、いる訳ありません」
「あー、なるほどねぇ。そう言う事かぁ……」
つまり王様は勇者パーティーが怖くて、適当な理由つけて黙秘している訳か。
「それでも、この国は勇者がいる事で更に治安は良なっていますので、一概に悪いとは言えませんね……」
「そっかそっか。でも、それでもねぇ……」
「ハハハ、そうですね。少しやるせないですよね……」
治安ぐらいなら兵隊さん達がそこら辺にいるから、別に勇者はいらなそうだけどねぇ。
ハァ。聞く限りだと勇者パーティーがいなければこの国はとても良さそうなのになぁ…………と、話を聞いて私の気分はガタ落ちだった。
「ハァ……なんか話聞いてて、気分落ちちゃったなぁ」
「あ、す、すみません!別にそうしようとした訳では……」
「えっ、あぁあぁごめんごめん!ウソウソ!大丈夫大丈夫!そんなに気落ちしてないって!てゆうか話聞かせてもらってだけで嬉しいし!本当にありがとうね、色々聞かせてくれて」
「いえいえ、こちらこそ。貴方と話せて楽しかったです」
「え、ホント?そう言ってくれると嬉しいなぁ!…………あ、そうだ!」
そう言って私は、座っていたベンチを立ち上がる。
「ねぇ、せっかく仲良くなったんだし、一緒にスイーツでも食べない?話聞かせて貰ったお礼に奢るからさっ!」
「えっ…………」
「良いから良いから!私、ちょうど甘いもの食べたい気分だったんだー!どこか美味しいスイーツの店でも教えてよ!」
「でも………」と悩む女の子。私は「良いでしょ?行こ行こ!」と後押しする。
そして私のお願いに根負けした女の子は、「そうですね、行きましょう」と笑顔で承諾してくれた。
一応練習用の作品なので、批判とか酷評とかお願いします。