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お姫様と仲良くなった話 その9

 ――ドガゴゴーン!!


 衝撃音と共に砂煙が辺り一面に舞う。


「ハハハハハハハ!!ざまぁみろクソアマ!!これが勇者の実力だ!!」

「ユリコさん!!!!」


 勇者の笑い声とルナちゃんの叫びが聞こえる中、徐々に砂煙が晴れていき、そして…………。





「…………ふぅ、危な」

「「「「「「……………!!!???」」」」」」


 大きな()で勇者の攻撃を防いだ私の姿が見えて、闘技場の誰もが驚愕した。


「な、何ぃ!?」

「い、生きてる!?」

「アレス様のデット・エンド・リッパーを防いだの!?」

「あ、あの者は……あのユリコという者は本当にただの旅人なのか……!?」


 勇者パーティーの3人の驚いた声がまたまた聞こえてくる。王様も同様に、私が本当に旅人なのかと疑問混じりに驚いた。


「ユリコさん……良かった……」


 しかしルナちゃんの声だけは、安堵した感じの声が聞こえてきた。ので、私はルナちゃんの方を向いて、ニッコリ笑顔でまた手を振る。


「ど、どどどどういう事だ!?何故生きて……い、いや、それよりもだ!」


 勇者がそう呟いたのが聞こえた。そちらの方を向くと、勇者は自分の必殺技を防がれて慌てているようで、指をぷるぷると震わせながら私が持ってる盾を指さす。


「そ、それはなんだ!何故盾なんか持っている!いや、盾なんかで僕のデット・エンド・リッパーを防ぐことなんて不可能だ!!」


 いや、威力はあるけど正直山を切れる程じゃなかった気がする。ま、喰らってたら結構危なかったのは事実だけど。


「お、お前は一体何者なんだ!!」


 勇者は尚も叫ぶ。へへっ、めちゃくちゃ取り乱してるなぁ。ざまぁみろ。


「さてと、そろそろ終わりにしますか」


 そして私は手に持っている盾…………もとい『マジカルチョーカー』を、今度は()()()()()()に変わった。




 さてさて、ここで超重要アイテムの『マジカルチョーカー』を説明をしておこう!

 マジカルチョーカーは私が持ってる数々のアイテムの中でも一番万能で、使う頻度が最も高い代物だ。いつもはただの黒色のチョーカーで、当然首に巻いてあるのだが、なんと、マジカルチョーカーはさまざまな物体に姿形を変える事が出来るのだ。

 例えば今みたいに盾に変えたり、ダガーナイフに変えたりも出来るし、剣、槍、斧、爆弾などの武器や、カバンや椅子、鍋やフライパンなどの日用品、更には家やマンション、頑張っちゃえば風車やお城などの大きな建築物にも変えることが出来るのだ!


 まぁ、生物にはなれないとか(植物は例外)、複数ある物品にはなれないとか、色々と面倒な制限やルールはあるけど…………それでも、このマジカルチョーカーは万能と言える超絶チート級アイテムなのだ!説明終了ぉ!




「!?盾がナイフに!?」

「勇者様、アナタがさっき言っていた『痛めつけて鬱憤を晴らすのは気分が良い』という言葉。私は割と共感できます。………………だけど、どんな事でも」


 盾からダガーナイフになったのを見て驚く勇者にそう言ってから私は一気に距離を詰めた。


「『加減』ってものがあるんですよ!」

「…………!?」


 瞬間、私は勇者が持っている剣に目掛けて、思いっきりダガーナイフを振り上げた。


「っ!!!」


 ――――カキンッ!!


 景気のいい金属音が辺りに響く。私はダガーナイフで勇者が持っている剣の刃を思いっきり欠けさせる。

 そしてブンブンと音を立て、折れた方の刃の破片が軌道を描きながら宙に舞い、そのままザズッと地面に突き刺さる。

 か〜ら〜の〜。すかさず私はもう1発土手っ腹に蹴りをプレゼントしてやった。


「オラっ!!」

「ごふぅッ……!!!」


 またまた景気の良い衝撃音と共に勢いよく壁に激突する勇者は、そのまま滑るように地面に座り込み、壁にもたれかかった。


「アナタが人間で、世界を救う為に戦う勇者なら、一般的な節度や限度、それに『人の良心』は持っておくべきじゃないですか?…………なんて、こんな事を言われてる時点でもう手遅れなのかもしれませんがねっ」


 そう言ってから私は勇者に近寄り、ダガーナイフを突きつけた。


「勝負アリです。これでルナちゃんとの婚約は破棄してくれますよね?」

「……………っ」


 苦虫を噛み潰したような顔で勇者は私を見る。

 どっからどう見ても再起不能の勇者と傷一つついてない私。この状況、私の完全勝利だ。

 ふぅっ、これでルナちゃんも自由に街を歩けようになる。一件落着だ。


「………ぐっ、グラ、マリー、アンナ………!!!」


 しかし、勇者の搾り出すような叫びと共に自分の甘さを実感する。


「きゃっ!」


 観客席の方から悲鳴が聞こえる。すぐにそっちを向くと、勇者パーティーの3人が、各々武器を手にしてルナちゃんと王様に向けているではないか。


「ハハっ…………僕に歯向かったから……悪いんだ……」

「っ!?ゆ、勇者よ!!これはどういう……!?」

「僕を……散々馬鹿にしたルナ。そしてその親である……王様。そして、この旅人を名乗るクソアマ……。3人とも……殺してやる!!!」


 王様の問いかけに勇者が途切れ途切れにそう言った。

 ………………まずい。コイツの眼は本気だ。本気でルナちゃんと王様を亡き者にする気だ。



「キャハハハハハハハ!!!!まずはお前ら親子を殺す……!!そして……この旅人に……僕をコケにした事を後悔させてやる……!!殺れ3人とも!!!!」

「「「ハッ」」」


 勇者パーティーの3人が心無い声でそう返事をする。


「きぁぁあああ!!」


 ルナちゃんの悲鳴が辺り一体に響いたが、それも虚しく、3人はルナちゃんと王様に目掛けて攻撃を仕掛け、無惨にも2人の命を奪う………………。





「――念力」


 そのまさに直前、私は焦れながらも大急ぎで、手に持っていたダガーナイフを投げた。


 そして、私は"念力"でダガーナイフを操る。


 200kmは出てるでしょって速さでダガーナイフは一直線に飛んでいき、勇者パーティーの1人の右肩を切りつける。

 傷口からは血が少し吹き出し、その女は痛みのせいで斧を手放した。


「ぐぁっ……」


 物理法則を無視し、まるで空飛ぶ鳥みたいにダガーナイフは軌道を変え、隣にいたもう1人の勇者パーティーの女に向かっていく。そして女が持っている槍の柄をスパンッと切断。槍に付いていた刃の部分がポロリと落ちた。


「ナニ……?」


 そして次に、ダガーナイフは最後に残った女に向かっていく。その女が持っていた魔法の杖らしきものをまたしてもスパンッと切断した。


「ウソ…………」


 最後にダガーナイフは闘技場にいる私の方へと飛んで来て、私はそれを手慣れた感じでキャッチした。


「な……なんだと……」


 今の一連の光景を見て、勇者は信じられないといった感じでそう呟くのだった。




 さてさて、ここでまたまた説明しよう!

 今、私が使ったのはみんなご存知『念力』というだ。サイコキネシスとも呼ばれている、念じただけで遠くの物を動かせるという、まさにそれだ。

 特徴としては、私の手で触った物を3分間だけ自由自在に動かす事が出来る。動かせるものは物だけで、人や動物などの生き物は動かせない(これも植物は例外)。

 今ダガーナイフを投げた時みたいに物体移動の速度を上がれる他、応用で私自身が空を飛ぶことも出来る為、異世界での移動手段にも使っている。


 てな感じで、この念力は私が持っているさまざまな能力、スキルの中でめちゃくちゃ使用頻度が高い能力なのだ!




 さてさて、説明も終わったことだし…………この腐れ外道な勇者とのケリをつけるとするとしよう。


「…………やってくれましたね。自分の結婚相手であるルナちゃんや、その親である王様を殺そうとするなんて」


 私は手に持っているダガーナイフもといマジカルチョーカーを超巨大な金槌に変え、壁にもたれかかる勇者へと向いた。


「…………さっき加減がどうとか言いましたが、すみません。私自身、もう我慢できません。なのでアナタみたいな外道に手加減するのはヤメにします」

「や、やめろ……何を……」


 怯えた顔をしている勇者が問いかけてくる。


「何って、それはさっき言ったじゃないですか」

「ヒィッ、や、やめ……」


 なので私は、ピッチャーからの球を全力で打ち返そうとする4番バッターの様な気持ちで金槌を構えてから…………。





「気晴らしですよッ…………!!!!」


 加減は無しで、思いっきり、力一杯、私の中の苛立ちと鬱憤を乗せた超弩級フルスイングを顔面にお見舞いしてやったのだった。

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