表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女集会のその後に   作者: 柴犬
第一章 人の子と女魔獣
25/29

二十四話 魔女はカラスの視界を見る


カラスからの念話で少年を見つけたと連絡が来たのは、火の山の魔女の所で彼女の使い魔が用意した火酒を飲んでいた時だった。


それまで怒気を()き散らせながら黙って岩に腰掛けていた森の魔女に気を使ってかビクビクしながら彼奴(あやつ)の使い魔が差し出した小柄な酒壺。それを見た火の山の魔女は「それは俺の秘蔵酒!」と怒鳴っていたが「主様は黙っててください!また作るんで!」と意外にも使い魔の一喝(いっかつ)で彼女は小さく(うな)りながらも口を(つぐ)んだのは傑作(けっさく)だった。美味い酒と美味い(さかな)(という名の火の山の魔女の悔しそうな顔)に、低迷(ていめい)していた機嫌は持ち直した。酒が美味い。



『…いやに上機嫌だな、主…』と呆れた雰囲気で告げる自身の使い魔に、「良いから見張っておけ」と一方的に念話をブチ切った。とは言いつつも、カラスの片目と自身の片目の視界を共有することは忘れない。「見つけたか?」と大岩に背を預けながらニヤけた顔で聞いてくる火の山の魔女を黙殺した森の魔女は、また一口酒を含んだ。彼女の視界には火の山の先の戦闘で乱雑(らんざつ)した住処(すみか)と、太古の森よりも少し離れた位置にある人間が暮らしてはいなさそうな古びれた屋敷が見えていた。




太古の森と人間の森を分ける大河の向こう側にあるらしいその()ちた屋敷には、カラスの視界からでも分かる程異様に人の気配がする。なにより入口付近に見張りらしき屈強な男が二人居り、明らかに何かあると言っているようなものだ。


三下か、末端か。いずれにしても国を相手取るにしてはお粗末極まりない。ここからでは少年の姿が見えず落ち着きなくソワソワと身を揺らすカラスにもう(しばら)く待てと伝えた魔女は、片目を共有したままにもう一口酒を含んだ。



「湖の魔女からの連絡はどうだ?」



そう言いつつ洞窟を写している片目を火の山の魔女へと向ければ、彼女は何か言いたげにじっとりとこちらを見つつ「ねぇな」と一言だけ告げた。否定しない所を見ると、やはりというか共謀者はあの食えない魔女らしい。やっぱり面倒事しか持ち込まない魔女の中での一番の若手に、森の魔女は大きくため息を吐いた。



「ちんけな尻尾なんて興味はねぇ、狙うは心臓だ」



「アンタも分かんだろ?」とニヤリと口角を上げた火の山の魔女は、近くに控える使い魔に「何時(いつ)でも行ける準備だけしとけ」と片手をヒラリと振った。「分かりました」と返答した使い魔は律儀にもこちらに会釈をして大岩の向こう側へと身を翻した。大方私室か転移陣がそちらにあるのだろう。全く興味が湧かない為にどうでも良いが。



それよりも、今はカラスの視線の先にある一台の馬車が気になる。それは()(きた)りなただの布を(おお)っただけの簡易な幌馬車。…だからこそ、こんな怪しい場所に来るのに違和感がある。馬では行けない理由、それは大きな荷物かはたまた身分を隠したい人物か。


屋敷の裏手に止まったその馬車から降りてきたのはフードを被った人間二人、その後大きな木箱を元々待っていたであろう屈強な男たちで降ろしていた所を見ると恐らく前者か…



そう魔女が結論付けまた酒瓶に口をつけたその時、この熱気が多い場に全く相応しくない魔女の顔ぐらいは有ろう透明な泡がどこからともなく現れた。



「お」と小さく呟いた火の山の魔女は大岩から背を離し、サッと出現させた火の粉で泡を軽く破った。そうすれば清浄な嫌な空気が辺りに広がり、火の山の魔女と共に森の魔女は顔を歪ませた。



『作戦を始動致しますわぁ』



憎たらしい湖の魔女の声が優しく洞窟内に響いた時には、既に二人の魔女はそこに居なかったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~本作に関してのお知らせ~
『魔女集会のその後に』 休止予告
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ