生死 ✻前半アリシア 後半セシル
明日はとうとうわたしの5歳の誕生日です。
屋敷のみんなで盛大にお祝いするからとおかあさまが仰ってくださってとても嬉しいです。
部屋の中にいても、みんなが慌ただしく準備をしている様子が伝わってきます。
嬉しくて気持ちが昂っているのでしょうか…
何だか、体が熱、い……?
「…っお嬢様!
誰か!お医者様を呼んでください!
……お……さま!……しっ…………ぃ……」
セシルが、よんでる。
お、きない…と。
だぃじょ、ぶ……って………
あつい
くるしい
だれか
たすけ、て
_______
お嬢様の5歳のお誕生日が翌日に迫ったこの日、お嬢様が倒れてしまった。
先程まで楽しそうにお話をされていたのに。
直ぐに来てくださったお医者様は今夜が峠であると仰いました。
そして、今夜を越えることが出来てもお嬢様の体はあともって数日であるとも。
つい数時間前まで皆が笑顔で忙しなく動いていた御屋敷がまるで闇に覆われたように暗く、静かになってしまっています。
精霊様、どうかお嬢様をお救い下さい。
ご自身が辛い中でも優しさを失わず、常に笑顔でいらしたのです。
御屋敷どころかお部屋からもほとんど出ることができず、窓から空を眺めるお嬢様のお姿を数え切れない程見てきました。
この小さな世界しか知らないなどあまりにも酷ではありませんか。
どうか、どうかお嬢様を…
どのくらい、お嬢様の傍に居たのでしょうか。
ふと窓を見るともう外は真っ暗になっていました。
旦那様や奥様、坊っちゃま方はお嬢様が倒れた知らせを聞き部屋に駆けつけられてから一言も話さず、じっとお嬢様の様子を伺っておられます。
カーテンを締めなければと思い、そっと立ち上がると窓から不思議な4つの光が部屋の中に入ってきました。
本来ならば最大限の警戒をしなければならないのでしょうが、何故かこの時の私はその暖かな光をただ目で追うことしか出来ませんでした。
それは、お嬢様を近くで見守っていた御家族の皆様も同じであったようで、この時部屋の中に居た全員がただその光を呆然と見つめていました。
それらの光はゆっくりとお嬢様に近づいて、そのままお嬢様の体に入っていきました。
全員が目が覚めたように驚き、慌てました。しかしお嬢様の変化は絶大でした。
今まで苦しそうにしていた呼吸が落ち着き、体の熱が徐々に平常になっていき、瞬く間に安らかな表情となられたのです。
きっと、精霊様がお嬢様を助けてくださったのだと思いました。
だってそうでなければ説明がつかないでしょう?
念の為にと御屋敷に宿泊されていたお医者様も、もう大丈夫だろうと、これは奇跡だと仰っていましたもの。
御家族を含め、御屋敷の者が皆安堵の涙を流しました。
そして、お嬢様を助けてくださった奇跡に心からの感謝を。
後書きでは、ちょこちょこ設定を書き足します。
別に読まなくてもいいよ!という方はスルーして頂いても問題ありません。
どちらかと言えば作者が忘れないように書いているので(*_ _)
・精霊
この世界を創ったのは神様であるが、実際に人々と共に生きてきたのが神様の遣いであると言われる精霊。しかし、実際に精霊を見たことがある人は歴史の中でも数える程しかおらず、またその真偽も不明。ただ、人々の間では何か突発的な出来事があれば、精霊のイタズラと言ったり、今回のような奇跡があれば、精霊が助けたのだと言ったりする。子ども用の本にも想像の精霊が登場するため、小さな子どもでも精霊の事は知っている。