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その8

 彩乃が太い木の杖を貝子みるこに向けています。杖を振ると、再び貝子みるこを稲妻が襲います。しかし、一瞬で貝子みるこは稲妻に矢を放ちます。矢に当たって、稲妻は貝子みるこからそれていきました。


「いきなり不意打ちなんて、なめたガキね!」


 そのまま貝子みるこは、彩乃に矢を連射します。彩乃は光のカーテンを作り出し、矢をはじきます。


「そんなちゃちなバリアで、これを防げる?」


 弓をキリキリと張り詰めて、貝子みるこは赤く輝く矢を放ちました。光のカーテンにぶつかった瞬間に、矢が爆発します。


「彩乃さん!」


 ものすごい爆風に、彩乃は吹き飛ばされていました。ひじをすりむいたのでしょうか、血がにじんでいます。


「ミルちゃんの矢は、いろんな魔法をこめられるのよぉ。そんなちゃちなバリアなんて、簡単に壊せるんだからぁ」


 再びマシンガンのような連射です。彩乃は右手にほうきを出現させました。素早くまたがり、宙を飛びます。


「それなら!」


 貝子みるこの放つ矢が、紫色の光を帯びてきました。紫の矢は、彩乃のほうきをホーミングしていきます。


「その矢はどこまでも追いかけてくるわよぉ、いつまで持つかしらぁ?」


 彩乃は急降下し、低空飛行で貝子みるこめがけて突進しました。しかし、紫の矢も加速していき、ついにほうきの穂先に触れました。ほうきが燃え上がります。


「きゃっ!」


 間一髪彩乃はほうきから飛び降り、もんどりうって着地しました。ほうきは紫の炎に包まれ、ちりになっていきました。


「さあ、形勢逆転ねぇ」

「そうかしら、ここはもうわたしの間合いよ」


 せりかは地面から、柄だけの剣を出現させました。柄をにぎりしめると、光の刃が現れます。


「接近戦なら、弓矢は役に立たないはず!」


 貝子みるこが構えるよりも先に、せりかは貝子みるこにかけよります。低い姿勢で、貝子みるこの矢を転がりながらよけ、光の刃ではじき、ついに斬りかかったのです。


「チッ!」


 貝子みるこの弓が、一瞬で剣へと変形しました。つかの部分がハート型になった剣です。弓と同じように、ジュエルで色とりどりにデコレーションされています。


「そんな、どうして剣に」


 光の刃がはじかれて動揺する彩乃を見て、貝子みるこは勝ち誇ったように笑いました。


「残念でしたぁ、ミルちゃんの弓は、剣にもなるのよぉ。接近戦でも無敵なのでぇす」


 逆に彩乃に切りかかってきます。光の刃で応戦しますが、貝子みるこのほうが斬る動作が速く、だんだんと劣勢になっていきます。


「あっ!」


 足がもつれて、彩乃が倒れこむ間に、貝子みるこはバックステップして距離をとります。再び剣が弓へと変わりました。


「剣での戦いも、ミルちゃんとっても強いんだけどぉ、剣を使うととっても疲れるのよねぇ。夜更かしはお肌に悪いしぃ、ミルちゃんそろそろ帰らせてもらうわねぇ」


 貝子みるこが夢の主である矢部君に近づこうとしますが、彩乃と戦っているすきに、せりかが矢部君の前に立ちはだかっていたのです。


「あなたみたいな人に、矢部君の幸せな夢を吸収なんてさせないんだから!」


 お化粧でぱっちりした貝子みるこの目が、大きく見開かれました。せりかに弓を向けますが、せりかも剣を構えます。


「ホント、生意気なガキ! じゃあいいわ、お望みどおりくたばんなさいよ!」


 矢の連射を、せりかは横っ飛びでかわし、転がりざまに剣で空を切りました。怒りで視界が狭くなっていたのでしょうか、貝子みるこはよけきれず、真空波がほおにかすります。ピッと赤い血が飛び散りました。


「イタッ! ……えっ、血? え、ええっ? 血が、血が……。ミルちゃんの、ミルちゃんのほっぺが、ミルちゃんの真っ白なほっぺが……」

「なに? この人、なんだか様子が……」

「てめぇ、なにしてくれてやがる! ガキのくせに、ガキのくせに!」


 言葉遣いだけではなく声までも、ドスの効いた不良のような迫力に変わっていました。真っ赤な矢が横なぎに降る嵐のように、せりかにおそいかかってきます。せりかは幅広の剣を何本も出現させて、それを盾のように目の前に重ね合わせます。しかしそんな付け焼き刃の盾は、貝子みるこの爆発する矢で一瞬で吹き飛ばされてしまいました。


「きゃあっ!」


 あわてて横っ飛びし、転がりながら矢をかわすせりかでしたが、爆風がそのからだを吹き飛ばします。転げまわるせりかを見て、貝子みるこが狂ったような笑い声をあげます。


「ほらほら、吹き飛んじまいなよ! ほら、もっと爆発させてやるからさぁ!」


 うしろから彩乃が光の刃をふるいました。貝子みるこは一瞬で弓を剣に変え、光の刃をはじきます。激しい斬撃の応酬の中、貝子みるこが金切声でさけびました。


「あぁもうっ! どうしてミルちゃんの邪魔をするのよ! あんたおかしいんじゃないの? あんたたちだってタピールじゃないの! 夢を食べるのは当然でしょ!」

「夢を食べるのは当然だとしても、楽しい夢を食べるなんて、そんなのダメよ! 楽しい夢を食べられた人は、そのぶん悪夢を見ることになるのよ!」


 せりかがさらに真空波を放ちながらどなります。貝子みるこもまるでダンスをしているような足さばきで、真空波をよけ、剣で相殺します。


「そんなの知ったこっちゃないわ! だいたい黒い夢、悪夢の世界のほうが危険なのよ。どうしてミルちゃんがそんな危険な世界に入んなきゃいけないのよ? 楽してレーヴを貯めるほうが賢いやりかたじゃんか! 正義の味方気取ってんじゃねぇよ!」


 ドスの効いた声で、貝子みるこがせりかに向かって真空波を放ちます。そのすきに彩乃が間合いを詰めましたが、貝子みるこはすばやく反転して、彩乃のわき腹を剣で斬りつけます。とっさに彩乃は本を開いて、光のカーテンを出現させました。貝子みるこの剣がカーテンにはじかれ、防がれます。


「あんた、生意気よ!」


 剣を弓に変えて、貝子みるこが光のカーテンに矢を連射します。一発一発に強力な魔力をこめているのでしょう。カーテンがじょじょに黒く変色していきます。彩乃も開いた本に力をこめて、カーテンの守りを強くしていきます。


「あなたが誰の夢を食べようと、そんなことわたしは興味ないし、関係もない。わたしがあなたを狙う理由はたった一つ、あなたがお姉ちゃんのたましいを奪ったからよ! 返して! お姉ちゃんのたましいを返しなさい!」

その9は本日1/26の20時台に投稿予定です。

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