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その19

 彩乃がリリアンナの首めがけて、光の剣で切りつけます。しかし、光のカーテンで剣がはじかれました。


「われらと戦うとは、どこまで愚か者なのだ!」


 アーヤが分厚い本を開きました。彩乃も同じく本を開きます。二人とも地面から、巨大な石の巨人を出現させました。そのすきに、リリアンナがレイピアを拾いますが、勇樹が黒い槍で突きかかります。レイピアで槍をはじくリリアンナに、するどい槍の突きが襲います。


「くっ、おのれ、わらわにはむかうとは」

「お前のレイピアも、接近戦ならそう簡単に空間転移できないだろう!」


 勇樹はリリアンナに構えさせずに、突きを連発します。防戦一方のリリアンナを、アーヤが守ろうとしますが、そこにせりかが切りかかりました。


「ちっ」


 アーヤは光の剣を出現させ、せりかの剣をふせぎました。アーヤの出現させた石の巨人が、くずれて灰になっていきます。


「今だわ!」


 すかさず彩乃が、アーヤにむかって稲妻の杖を振りかざしました。稲妻が光の剣に直撃します。


「ぬおっ!」


 剣の光が、稲妻と反発しあって消えてなくなりました。間髪入れずにせりかが、アーヤの持つ本を切り裂きました。


「アーヤ!」


 かけよろうとしたリリアンナのわき腹に、勇樹が槍の柄を打ちつけました。さらに、よろめくリリアンナのレイピアを、槍の穂先がはじき飛ばしました。


「これで終わりだ!」


 槍を突こうとする勇樹と、剣を振り上げたせりかに、赤い矢の雨が降りそそぎました。勇樹は槍の穂先で矢をはじき、せりかは幅広の剣を盾に防ぎます。


「バカな、貝子みるこ! どうしておれの邪魔をするんだ!」


 勇樹のほえるような声に、貝子みるこは薄ら笑いでこたえます。


「だってぇ、もうユウ君はぁ、ミルちゃんのものにならないんでしょう? 欲しいものが手に入らないならぁ、いっそのことこいつらの仲間になって、ミルちゃんがこの世界を支配するのもいいかと思ったのぉ」


 いつもの甘ったるい声で、貝子みるこが弓を構えます。勇樹がついに爆発しました。


「バカな! お前、おれたちの世界を侵略するやつらの肩を持つのか!」

「最初にミルちゃんをだましたのはユウ君でしょ! ユウ君が最初に、ミルちゃんの心をもてあそんだんじゃないの! それなのに、ミルちゃんにそんなことをいう権利なんてないわ!」


 ほおを打たれたかのように、勇樹が貝子みるこを見つめました。言葉が出ない勇樹に、貝子みるこが赤い矢を連射します。槍で矢を防ぐ勇樹の右腕から、血がほとばしりました。


「ぐっ、くそ!」


 槍を左手に持ち替え、勇樹はリリアンナに突撃します。リリアンナと勇樹の間に、赤い矢が打ち込まれました。地面が爆発し、勇樹が吹き飛ばされます。受身を取り、駆け出そうとしますが、今度は左足に血がにじみます。


「勇樹さん!」


 彩乃が癒しの水で、勇樹の傷を回復させます。そのすきにアーヤがけりで彩乃の本を吹き飛ばしました。癒しの水が消えていきます。


「彩乃さん、ここはわたしが食い止めるから、早く本を!」


 本にかけよろうとする彩乃に、貝子みるこの矢が雨のように降りそそぎます。せりかが彩乃の頭上に幅広の剣を出現させます。


「お前の相手はわたしだろう!」


 アーヤがせりかにもけりをお見舞いしてきます。おどるように宙で回転し、回し蹴りからのかかと落とし、正面から、横から、上から、フェイントも入れてけりを放ってきます。せりかは剣で防ぐのがやっとで、攻撃に転じることができません。


「せりか!」


 どうにか貝子みるこの矢をかいくぐり、彩乃は本を手に取りました。稲妻で貝子みるこを攻撃しますが、貝子みるこの矢で相殺されます。


「あんたたちなんて死んじゃえ!」


 貝子みるこが空に矢を何本も連射します。赤い矢の雨がせりかたちを襲いますが、彩乃の光のカーテンが矢を防ぎます。しかし、本を持っていた彩乃の腕が、真っ赤な血で染まりました。


「うぐっ!」


 本を落として、うずくまる彩乃に、せりかと勇樹がかけよります。光のカーテンが消え、せりかがありったけの幅広の剣で矢を防ぎましたが、さすがに力を使い果たしたのでしょう。その場にぐったりと倒れこんでしまいました。


「形勢逆転だな。さあ、武器を捨てて、おとなしくわらわに従え。そなたたち三人の心臓を貫くことぐらい、わらわには造作もないことだぞ」


 レイピアを構えるリリアンナを見て、勇樹は槍を地面に放り投げました。貝子みるこが勇樹をにらみつけますが、勇樹はうつむいたまま、視線を合わせようとしません。


「最初からそうしていれば、痛い目にあわずにすんだのだ。物分りが悪いというのも、そなたたちドリーミアンの特徴なのかもしれないな」


 リリアンナが勇樹に近づこうとした瞬間、手からレイピアが落ちました。固まってしまったように、リリアンナは動けずにいます。


「ぐっ、おのれ、まだ眠りについていないのか、りりあよ! そんなたましいのかけらだけで、わらわにはむかうつもりか、おのれ、さっさと消えてしまえ!」


 リリアンナの叫びにこたえるように、せりかたちの頭に直接声が聞こえてきます。


 ――彩乃、今のうちに逃げて、現実世界のわたしのからだごと、リリアンナを封印して――


「お姉ちゃん? お姉ちゃんでしょう? ダメよ、そんなことできない!」


 拒絶する彩乃に、りりあの声がさらに語りかけます。


 ――そうしないと、あなただけじゃなくて、ドリーミアンの次元までもが失われてしまうわ――


「だからといって、お姉ちゃんを」


 ――わたしは大丈夫。信じて。……頼んだわよ、彩乃――


 せりかたちは、目もくらむような光に包まれました。彩乃の叫びが、だんだんと遠くなっていき、そのまま意識は闇の中へと落ちていきました。

その20は本日1/28の21時台に投稿予定です。

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