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その18

「勇樹さん!」

「うぐっ、なんだ、これは」


 勇樹が左手を押さえています。シャツが真っ赤に染まって、血がぽたぽたとこぼれ落ちます。


「どうして? あの人、なにもしていないのに、なんで勇樹さんがけがを?」

「このレイピアも、わらわたちリアリアンの科学力で、そなたらの夢を実現させたものだ。このレイピアは空間を転移することができる。平たくいえば、わらわが望むものを貫くことができるのだ」

「そんな、じゃあ、よけることさえできないっていうの?」

「その通りだ。さて、ドリーミアンの青年と少女よ。次はそなたたちの心臓をこのレイピアで貫く。だがその前にもう一度聞いておこう。わらわに服従し、ドリーミアンの次元侵攻に協力せよ」

「いやだっ! お前を倒し、りりあの敵をとってやる!」


 勇樹が黒い槍をリリアンナに投げつけました。槍が何本にも分裂し、リリアンナを襲います。リリアンナはふうっとわざとらしくため息をつきました。


「リリアンナ様!」


 リリアンナの前に、ピンク色の光が現れました。黒い槍はその光にはじかれ、砕け散ります。


「どうしてだ? おれの槍は、魔力を吸収するから、魔法では防ぐことができないはずなのに」

「アーヤよ、勝手にレーヴを使うことは許さぬぞ」

「申し訳ございません、リリアンナ様。ですが、そのもののいうとおり、わたしの光のカーテンでは防ぐことができませんでしたので、わずかながらレーヴでバリアを晴らせていただきました」

「レーヴでバリア? そんなことができるのか?」

「もちろん。タピールのシステムを作り出したのはわらわたちリアリアンだということを、忘れていたようだな。レーヴの扱いはわらわたちのほうが優れているに決まっておろう。さあ、これが最後の問いだ。わらわに服従せよ」


 せりかはぎゅっと剣の柄をにぎりしめ、勇樹を見ました。勇樹もせりかを見て、うなずきました。


「死んでもいやだ!」


 リリアンナは意外そうな顔をしました。アーヤを見ましたが、アーヤも首をひねっています。


「わらわの力を、まだ理解していないというのか? ならば次は右腕だ」


 リリアンナがレイピアを動かす前に、せりかが真空波を放ちます。アーヤが光のカーテンを出現させて防ぎます。それでもせりかは真空波を放ち続けますが、右足に焼けるような痛みが走りました。


「きゃあっ!」

「大丈夫か!」


 せりかがうずくまると同時に、勇樹も槍を落としました。勇樹の右肩が、真っ赤に染まっていきます。


「ぐっ」

「だからいったであろう。そなたらがなにをしても無駄なのだ」

「リリアンナ様、このものたちに止めを刺し、肉体だけを操ってしまえばいかがでしょうか。ドリーミアンの夢の中に、そのような屍を生かす力があったはずです」

「そうだな。従わないとなれば、用はない。では、さらばだ、ドリーミアンの戦士たちよ」


 リリアンナがレイピアを動かした瞬間、レイピアが光の剣にはじかれ、吹き飛ばされました。


「なんだと、まさか彩乃か?」


 リリアンナの声に、驚きの色が混じっています。


「せりか、ごめん、遅くなったわ」


 光の剣をリリアンナの首筋に当て、彩乃がせりかを見ました。それと同時に、せりかと勇樹の傷を、淡い水色の光が包みました。癒しの水です。


「どうして貴様が? ああ、そうか、わたしがりりあの夢に移動したのに気づき、お前も侵入してきたんだな」


 彩乃はリリアンナを、そしてアーヤをにらみつけました。


「今あるエネルギーだけで、滅びを回避できるのに、それだけでなくこの次元をのっとろうなんて。そんなことはさせないわ。この次元には、守るべきものがたくさんあるのだから」

「さては貴様、記憶が戻ったのだな」


 うなずく彩乃に、アーヤは意地悪く笑いかけました。


「記憶が戻ったというのに、姉の心配はしないのだな? ドリーミアンに感化されて、貴様も『愛』などというくだらない感情を持ったと思ったが、そうではないらしいな」

「どういうこと? りりあお姉ちゃんになにをしたの?」

「くくく、どうやら本当に知らないらしいな。りりあのたましいは、わらわのたましいが目覚める際に消滅した。つまりお前の姉は消えてなくなったのだ」

「えっ……」


 目を見開く彩乃に、リリアンナは笑い出しました。


「やはりお前も、ドリーミアンと同じ考え方をするのだな。創られた存在なのに、なんとおろかな。本当にそなたが気にかけるのは、われらリアリアンの次元のはず。なぜそなたらは、わらわたちの邪魔をする? わらわたちに創られし存在の分際で」

「それは、あなたたちがドリーミアンの次元をのっとろうとするからじゃない! リアリアンの次元は、レーヴのエネルギーで十分救われるわ。それなのにどうして」

「確かに滅びを回避するには十分だろう。だが、リアリアンの次元が発展するには不十分だ。ドリーミアンたちの、可能性に満ちた次元を知りながら、このまま現状維持に甘んじろとそなたはいうのか? ドリーミアンの次元をのっとれば、どんなことでも叶えることができるというのに」

「そんなこと到底受け入れられないわ。あなたたちが創造主だろうと、わたしは戦う。あなたたちはお姉ちゃんの敵よ!」

その19は本日1/28の20時台に投稿予定です。

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