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その16

「なっ……」


 絶句する勇樹を見つめながら、リリアンナは軽くため息をつきました。


「封印をといたそなたらに感謝の意を示し、最初から説明してやろう。なぜりりあというたましいが創られたか。そして、なぜわらわたちが封印されたかを」


 そしてリリアンナは語り始めました。


「もともとわらわたちリアリアンは、そなたらドリーミアンとは違う次元に住んでいた」

「違う次元って、どういうこと? もしかして宇宙人だってこと?」

「そうではない。わらわがいっているのは、違う星という意味ではない。そなたらの言葉を借りるのであれば、『パラレルワールド』と呼ぶのがふさわしいのであろう。そなたたちが住む世界とは、本来まったく別の世界だ。そなたがいう宇宙を、巨大な水槽と考えたとき、どれだけ遠くの星に住む宇宙人であろうとも、しょせんはその水槽の中に住んでいることになる。しかし、わらわたちリアリアンは、そなたらの住む水槽とは別の水槽、すなわち別の次元からこの世界へとやってきたのだ」


 唐突な話で、せりかは目をぱちくりさせています。しかし、リリアンナは気にせず話を続けました。


「わらわたちがこの次元へ来た理由はたった一つ。わらわたちの次元を滅びから救う手段を求めてだ。わらわたちの次元は、科学力こそそなたらの次元よりはるかに進んでいたが、エネルギーが枯渇しそうになっていたのだ」

「つまり、お前たちの宇宙が崩壊しそうになっていたということか?」


 勇樹の質問に、リリアンナはいまいましそうにうなずきました。


「わらわはリアリアンの科学者であった。『リアリアン』とは、わらわたちの次元に住むものを呼ぶ。そなたたちの次元に住むもの、すなわちそなたたちのことは、わらわたちは『ドリーミアン』と呼んでいる。わらわはドリーミアンの次元をずっと研究しておった。そして、この次元こそが、わらわたちの次元を滅びから救うという結論に至ったのだ」

「どうしてだ? 大体、そんなに科学力が発達していたんなら、お前たちだけで滅びを回避できたんじゃないのか?」

「それならよかったのだがな。だが、リアリアンの次元には決定的にかけているものがあったのだ。それが、そなたたちドリーミアンの次元には豊富にあった。なにかわかるか?」


 せりかと勇樹は、顔を見合わせました。せりかが首をふると、リリアンナはくちびるのはしをゆがめてつぶやきました。


「それは『夢』だ。そもそもわれらリアリアンには、眠るという概念が存在しない。わらわたちは永遠に目覚めたままで、死ぬまで現実と向き合い続ける。だが、そなたたちドリーミアンは、みな夢を見ることができる。何十億というドリーミアンたちが、全てだ。ひとりひとりがまったく違うものを。そなたらは気づいていないようだが、その夢というものこそが、そなたたちの次元を成り立たせ、エネルギーに満ち溢れた次元にしているのだ。わらわたちにはのどから手が出るほどに欲しいものだった」


 リリアンナがため息をついて言葉を切りました。夢がエネルギーになるなどとは、にわかには信じられない話です。


「じゃあ、わたしたちが普通に夢を見ているだけで、わたしたちの世界が成り立っているって、そういっているの?」

「そうだ。ひとりひとりがまったく違う夢を見て、その夢が次元に吸収され、エネルギーが生じる。それこそ次元が成長するための糧となるのだ。わらわたちリアリアンは夢を見ない。だから徐々に次元は滅びに向かってしまったのだ。だが、そなたらの次元からエネルギーを得ることができれば、わらわたちの次元も救われるかもしれない」

「まさか、じゃあおれたちのクレは」


 リリアンナがくっくと小さく笑いました。


「なかなか優秀だな、ドリーミアンの青年よ。その通りだ。そなたたちの持つクレに貯まるレーヴは、わらわたちの次元に吸収されているのだ。それを使ってわらわたちは、次元の滅びを回避しようとしていたのだ」


 せりかは思わず振り返り、ロップを見ました。ロップがあわてて首を振ります。


「そんなこと、初耳だよ! ぼくらはただのナビゲーターなんだから、そんなことになってるなんて知らなかったんだ」

「もちろんその通りだ。ナビゲーターにそのような情報を与えると、そなたたちドリーミアンがレーヴを集めなくなる可能性があるからな」

「だが、それとりりあとなんの関係があるんだ?」


 リリアンナは勇樹のほうに向きなおりました。


「別の次元に入るためにはその次元に適したたましいを必要とするからだ。そのためにわらわとアーヤは、リアリアンの次元に適したたましいを創り出し、自らのたましいと融合させたのだ」

「じゃあ、りりあさんも、彩乃さんも、あなたたちが勝手に創ったってこと?」

「そうだ」

「そんな……いくら自分の住んでる世界を救うからって、それで命を、たましいを勝手に創るなんて、いらなくなったから消すなんて、そんなのひどい!」

「なにがひどいのか、まったくわからぬな、ドリーミアンの少女よ。たましいなどしょせんは人形と同じ。必要になったから創り、いらなくなったから消したまでよ」

その17は本日1/28の18時台に投稿する予定です。

本日はその16からその20までを投稿していきます。

どうぞお楽しみに♪

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