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その12

 パジャマに着替えたあと、せりかはベッドの上でそっと胸に手を当てました。ドクドクといつもより早く心臓がなっています。


 落ち着かない様子で時計を見ると、あと五分で十一時になります。いつもならもうとっくに眠っている時間です。


「でも、本当にうまくいくのかな?」


 別の中学校に通っていた彩乃は、わざわざせりかを待ちぶせて、いつもよりも遅い時間に寝て、自分の家へ来るように伝えてきたのです。そのときに作戦も伝えられました。


 ――あの貝子みるこって人は、きっと彩乃さんの夢の中に侵入してくる。それを確認したらわたしも入って、貝子みるこを倒す――


 彩乃にいわれた作戦を、せりかは心の中で呪文のように唱えました。マシンガンのような矢を思い出し、せりかは身震いします。


「しっかりしなきゃ! わたしががんばらないと、彩乃さんが」


 クレを強くにぎりしめ、せりかはベッドに横になりました。カチッカチッと、時計の音が耳にひびきます。あと十秒、五秒、四、三、二、一……。




 いつもよりも深い夜の闇を、せりかはすべるように進んでいきました。幽体離脱にもかなりなれたように思えます。空から町並みを見下ろしながら、せりかはため息をつきました。


 ――これだけたくさんの人がみんな、夢を見て、しかもそれぞれが違うんだから、本当に不思議よね――


 彩乃の家は、川沿いにある十階建てのマンションでした。両親は海外で仕事をしているらしく、お姉ちゃんと二人暮らしだったそうです。


 ――えっと、401号室だったよね――


 マンションにスーッと近づき、せりかは401号室の扉をすり抜けました。


 ――うわぁ、すごい整頓されてる。でも、あんまり家具とか置いてないんだ――


 家の中は、まるで引越ししてきた直後のように、家具がほとんど置かれていませんでした。寝室らしい部屋に入ると、ダブルベッドの片方に彩乃が、もう片方に彩乃とよく似た女の人が眠っていました。この人が彩乃の姉であるりりあさんでしょう。


 ――きれいな人。すらっとした目に、髪も長くてふわふわだ。彩乃さん、きっと毎日くしですいてあげてたんだわ――


 りりあの頭の上には、透明なもやができています。彩乃によると、たましいを奪われたあとはずっと、この透明なもやができていて、もちろん夢の中には入れないということでした。せりかは彩乃の頭上に目を向けました。そこには銀色に輝くもやができています。


 ――彩乃さんのいったとおりだわ。タピールが肉体から離れるときには、普通の人たちとは違う、銀色のもやができるって――


 これが出ているということは、彩乃も幽体離脱して、どこか別の場所へ隠れているのでしょう。せりかはふわりと浮き上がり、天井にはりつくように隠れました。


 ――でも、本当にくるのかしら? こなかったら、わたし、ストーカーみたいになってるんだけど――


 せりかが苦笑すると同時に、ドアのほうからふわっと金色の髪が現れました。貝子みるこがいやらしい笑みを浮かべたまま、彩乃の銀色のもやに近づきます。もやに触れると、貝子みるこのからだはふっと消えてしまいました。口元をきゅっと引きしめて、せりかももやの中へと入っていきました。

その13は本日1/27の19時台に投稿予定です。

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