その1
全部でその25まであります。約50000字となります。
本日1/25から1/29まで、毎日5話ずつ投稿していきます。投稿時間は夕方から夜にかけてを予定しております。
本日1/25については、この作品のあと、18時台、19時台、20時台、21時台に投稿予定です。
どうぞ最後までお楽しみください(^^♪
「ふわっ!」
なさけない悲鳴とともに、せりかは目を覚ましました。じっとりと汗ばんだからだをゆっくり起こし、まくらもとの目覚まし時計を見ました。
「あーあ、もうこんな時間かあ。夢に入ったあとって、けっこう汗かくんだよね」
ふうっとため息をつき、ベッドから起き上がります。薄いブランケットをたたむと、ぽとりとなにかが落ちました。鍵の形をしたペンダントでした。ハートの形をした、頭の部分がガラスでできていて、そこにピンク色の液体がわずかにたまっています。せりかはその液体をじっと見つめていましたが、やがてぽつりとつぶやきました。
「やっぱり、まだまだたまってないか」
せりかはあくびまじりに伸びをしました。すると、ドアがノックされ、か細い声が聞こえてきました。
「お姉ちゃん、ご飯できたみたいだよ」
「あっ、琴美、すぐ行くね」
せりかは急いで制服に着替え始めました。
「お姉ちゃん。昨日はありがとう」
「えっ?」
通学路の上り坂の途中で琴美に声をかけられて、せりかは目を丸くしました。
「ほら、お姉ちゃん昨日、いっしょに寝てくれたでしょ。そのとき、怖い夢はみないから大丈夫っていってくれたから。あれでね、安心してたら、本当にぐっすり眠れたの。怖い夢も見なかったんだよ。お姉ちゃんのおかげだよ」
その言葉を聞き、せりかの顔がぱぁっと明るくなりました。
――よかったぁ、それじゃあ琴美の悪夢も、ちゃんと吸収できているみたいね――
「学校でも、お姉ちゃんが守ってくれたら……」
琴美が突然口をつぐんだので、せりかは首をかしげました。
「どうしたの?」
琴美は答えずに、じっと前のほうへ視線を向けています。せりかも琴美の視線を追いました。
――あっ、なるほどね――
せりかはにぎっていた琴美の手を、やさしくにぎり返してあげました。二人の前には、ランドセルを背負った男の子たちが、がやがやと騒ぎながら歩いています。そのうちの一人は、タイガースの帽子を、つばをうしろにしてかぶっています。
「ふわぁ」
帽子の子が、大きくあくびをしました。
「おい、矢部どうした? なんか眠そうじゃん」
「ああ、なんでもねえよ」
矢部君が不機嫌そうに答えました。琴美はうつむいたまま、せりかにしがみつきます。せりかは琴美に気づかれないように、先ほど落とした鍵の形をしたペンダントを取り出しました。そのペンダントをぎゅっとにぎりしめて、意識を集中させます。ズズッ、ズズズッと、ノイズがうるさくて集中できません。それでも粘り強く意識を矢部君に集中させていきます。すると……。
『くそっ……眠れなかった……変な夢ばかり……いらいらする……』
ノイズ混じりですが、確かに矢部君の声が聞こえたのです。せりかはふぅっと小さくため息をつきました。
――半信半疑だったけど、あの女の人の話、うそじゃなかったんだ――
その2は本日1/25の18時台に投稿予定です。