表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/115

57 352-09 神の祝福を与えましょう(1817)

 眠い!


 今日は、マルセル兄様達が到着して面会にお越しになる日だ。

 外は、晴れやかないい天気になった。




 湯浴みのあと、クレール達が入室してきた。


「おはようございます、ナスターシア様」


「おはよう」


「今日は朝からシスター達が騒がしいようです。なにやら、ナスターシア様に見咎められたから、もう長く生きられないとか……」


(厨二病かっ!!)


「クレールとクラリスは、見咎められるようなことは、していませんよね?」


「もちろんで御座います」


 もちろん、してる! っていう意味かもしれないが……。


「本日のご予定ですが、このあと、聖堂でミサに参加を願います。午後からヘロン様、マルセル司祭がお越しになります」


「ミサ?」


「そうですね、私どもが案内差し上げますので、祭壇から祝福を頂ければと……」


「ちょっとまって、クレール」

(あ、『だじゃれ』じゃないよ)


「なんでしょう?」


「私は、シスター達の方を向いてお祈りするの?」


「いえ、祝福をいただければ、と」


 なんのことだか、さっぱりわからない。


「よくわからないけど、やってみます……」




 聖堂に行くと、すでに修道士と修道女でいっぱいだった。


「ねぇ、ナスターシア様が昨日悪漢を斬りつけたそうよ」


「恐ろしいわ」


「逆鱗に触れるようなことをしたら……」


「夜も巡回して禁忌に触れるような行いがないか、監視してるって……」


「もし、見つかったら?」


「どうなるのかしら?」


「なにか、とんでもない仕打ちが待っているのよ」




「お静かに」


 ざわつく聖堂が、一瞬で静まりかえる。


「本日は、聖女として顕現なされたカイル様の守護天使、ナスターシア様より祝福を賜ります。カイル様に祈りを!」


 修道士、修道女達は、一斉に(こうべ)を垂れ、胸に手のひらをあてる。


 ナスターシアは、おもむろに祭壇の前に進み出る。


 衣擦れの音が響く……。


 そこには、後ろからでも彼女が見えるように、ご丁寧に踏み台が置かれていた。

 まるで、お立ち台だが、踏み外さないように注意深く上る。


 そして、ゆっくりと聴衆の方を向いた。


(えっと……。結婚式の挨拶的な感じかな? ちょっと違うか?)


 ナスターシアは、胸に手を当てて、聖堂の入口の上のステンドグラスを見ながら、室内全体に声が届くように話し始めた。


「本日、ここにこうして御参集くださった方々は(もと)より、王国の王族、貴族、市井(しせい)、農民、奴隷、物乞いに至るまで、この国の全ての人々に、(あまね)(しゅ)カイルデュナス様の滔々(とうとう)(あふ)れる愛がゆき渡り、その心に暖かなぬくもりの灯火(ともしび)がともらんことを」


 その両の手を高く広げ、声高らかに言う。


「神の祝福を!!」


 その瞬間、なぜかほんのりと心が暖まる感じがした。


(あれ? この感覚……。お兄様?)


 見ると、聖堂の入口のドアがほんの少し開いて、誰か覗いている。




「素晴らしい、祝福をいただきました。私たちは今! 確かにここに、神の祝福をいただいたのです」


 クレールが、祭壇の脇で感動に打ち震えていた。


「さあ、祈りを奉じましょう!!」


 ナスターシアに向かって祈りが捧げられる……。


 なんだか、おもはゆい。




 ながながと祈りを捧げられた後、満足げなクレールに促され、聖堂をあとにする。


「聖女、ナスターシア様。ありがとうございました。お部屋までご案内致します」


 再び、クレールとクラリスを伴って、部屋へと下がる。




 修道士女達は、口々に感動を分かち合う。


「凄かったな、やっぱり聖女なんだ」


「本当はとても優しいんじゃないか?」


「昨日、聖女様のお召し物をめくりあげた罰当たりがいたみたいだけど……」


「あの方に手をだすなんて!」


「ああ、ナスターシア様。私はあなたに、この命を捧げます」




「本当に素晴らしい祝福でした。私たちはとても幸せです」


 部屋に帰ると、クレールとクラリスにまた感謝された。


「ナスターシア様……」


「クラリス! ナスターシア様を見ながら私の腕をとるのは、やめて下さい」


「あっ、失礼しました」


「では、しばらくお休み下さい。私どもは、隣にて控えております」


「ありがとう」




(ふーっ、なんかまあ、乗り切れたからいいか。それにしても、お兄様がいたような気がしたから、あとで確認してみよう)




「それまでは、と」


 服にしわがつかないように脱ぎ、ベッドでごろごろしつつ、ジョエル人形にハグをして楽しむ。


「ぬーん、しゅきしゅき~! もっと完成度を高めないとね、うん」


 一仕事終えた安堵からか、ナスターシアは器用に体の上にジョエル人形を乗せて、ウトウトしてしまった。

 眠い!


 今日は、マルセル兄様達が到着して面会にお越しになる日だ。

 外は、晴れやかないい天気になった。




 湯浴みのあと、クレール達が入室してきた。


「おはようございます、ナスターシア様」


「おはよう」


「今日は朝からシスター達が騒がしいようです。なにやら、ナスターシア様に見咎められたから、もう長く生きられないとか……」


(厨二病かっ!!)


「クレールとクラリスは、見咎められるようなことは、していませんよね?」


「もちろんで御座います」


 もちろん、してる! っていう意味かもしれないが……。


「本日のご予定ですが、このあと、聖堂でミサに参加を願います。午後からヘロン様、マルセル司祭がお越しになります」


「ミサ?」


「そうですね、私どもが案内差し上げますので、祭壇から祝福を頂ければと……」


「ちょっとまって、クレール」

(あ、『だじゃれ』じゃないよ)


「なんでしょう?」


「私は、シスター達の方を向いてお祈りするの?」


「いえ、祝福をいただければ、と」


 なんのことだか、さっぱりわからない。


「よくわからないけど、やってみます……」




 聖堂に行くと、すでに修道士と修道女でいっぱいだった。


「ねぇ、ナスターシア様が昨日悪漢を斬りつけたそうよ」


「恐ろしいわ」


「逆鱗に触れるようなことをしたら……」


「夜も巡回して禁忌に触れるような行いがないか、監視してるって……」


「もし、見つかったら?」


「どうなるのかしら?」


「なにか、とんでもない仕打ちが待っているのよ」




「お静かに」


 ざわつく聖堂が、一瞬で静まりかえる。


「本日は、聖女として顕現なされたカイル様の守護天使、ナスターシア様より祝福を賜ります。カイル様に祈りを!」


 修道士、修道女達は、一斉に(こうべ)を垂れ、胸に手のひらをあてる。


 ナスターシアは、おもむろに祭壇の前に進み出る。


 衣擦れの音が響く……。


 そこには、後ろからでも彼女が見えるように、ご丁寧に踏み台が置かれていた。

 まるで、お立ち台だが、踏み外さないように注意深く上る。


 そして、ゆっくりと聴衆の方を向いた。


(えっと……。結婚式の挨拶的な感じかな? ちょっと違うか?)


 ナスターシアは、胸に手を当てて、聖堂の入口の上のステンドグラスを見ながら、室内全体に声が届くように話し始めた。


「本日、ここにこうして御参集くださった方々は(もと)より、王国の王族、貴族、市井(しせい)、農民、奴隷、物乞いに至るまで、この国の全ての人々に、(あまね)(しゅ)カイルデュナス様の滔々(とうとう)(あふ)れる愛がゆき渡り、その心に暖かなぬくもりの灯火(ともしび)がともらんことを」


 その両の手を高く広げ、声高らかに言う。


「神の祝福を!!」


 その瞬間、なぜかほんのりと心が暖まる感じがした。


(あれ? この感覚……。お兄様?)


 見ると、聖堂の入口のドアがほんの少し開いて、誰か覗いている。




「素晴らしい、祝福をいただきました。私たちは今! 確かにここに、神の祝福をいただいたのです」


 クレールが、祭壇の脇で感動に打ち震えていた。


「さあ、祈りを奉じましょう!!」


 ナスターシアに向かって祈りが捧げられる……。


 なんだか、おもはゆい。




 ながながと祈りを捧げられた後、満足げなクレールに促され、聖堂をあとにする。


「聖女、ナスターシア様。ありがとうございました。お部屋までご案内致します」


 再び、クレールとクラリスを伴って、部屋へと下がる。




 修道士女達は、口々に感動を分かち合う。


「凄かったな、やっぱり聖女なんだ」


「本当はとても優しいんじゃないか?」


「昨日、聖女様のお召し物をめくりあげた罰当たりがいたみたいだけど……」


「あの方に手をだすなんて!」


「ああ、ナスターシア様。私はあなたに、この命を捧げます」




「本当に素晴らしい祝福でした。私たちはとても幸せです」


 部屋に帰ると、クレールとクラリスにまた感謝された。


「ナスターシア様……」


「クラリス! ナスターシア様を見ながら私の腕をとるのは、やめて下さい」


「あっ、失礼しました」


「では、しばらくお休み下さい。私どもは、隣にて控えております」


「ありがとう」




(ふーっ、なんかまあ、乗り切れたからいいか。それにしても、お兄様がいたような気がしたから、あとで確認してみよう)




「それまでは、と」


 服にしわがつかないように脱ぎ、ベッドでごろごろしつつ、ジョエル人形にハグをして楽しむ。


「ぬーん、しゅきしゅき~! もっと完成度を高めないとね、うん」


 一仕事終えた安堵からか、ナスターシアは器用に体の上にジョエル人形を乗せて、ウトウトしてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ