57 352-09 神の祝福を与えましょう(1817)
眠い!
今日は、マルセル兄様達が到着して面会にお越しになる日だ。
外は、晴れやかないい天気になった。
湯浴みのあと、クレール達が入室してきた。
「おはようございます、ナスターシア様」
「おはよう」
「今日は朝からシスター達が騒がしいようです。なにやら、ナスターシア様に見咎められたから、もう長く生きられないとか……」
(厨二病かっ!!)
「クレールとクラリスは、見咎められるようなことは、していませんよね?」
「もちろんで御座います」
もちろん、してる! っていう意味かもしれないが……。
「本日のご予定ですが、このあと、聖堂でミサに参加を願います。午後からヘロン様、マルセル司祭がお越しになります」
「ミサ?」
「そうですね、私どもが案内差し上げますので、祭壇から祝福を頂ければと……」
「ちょっとまって、クレール」
(あ、『だじゃれ』じゃないよ)
「なんでしょう?」
「私は、シスター達の方を向いてお祈りするの?」
「いえ、祝福をいただければ、と」
なんのことだか、さっぱりわからない。
「よくわからないけど、やってみます……」
聖堂に行くと、すでに修道士と修道女でいっぱいだった。
「ねぇ、ナスターシア様が昨日悪漢を斬りつけたそうよ」
「恐ろしいわ」
「逆鱗に触れるようなことをしたら……」
「夜も巡回して禁忌に触れるような行いがないか、監視してるって……」
「もし、見つかったら?」
「どうなるのかしら?」
「なにか、とんでもない仕打ちが待っているのよ」
「お静かに」
ざわつく聖堂が、一瞬で静まりかえる。
「本日は、聖女として顕現なされたカイル様の守護天使、ナスターシア様より祝福を賜ります。カイル様に祈りを!」
修道士、修道女達は、一斉に頭を垂れ、胸に手のひらをあてる。
ナスターシアは、おもむろに祭壇の前に進み出る。
衣擦れの音が響く……。
そこには、後ろからでも彼女が見えるように、ご丁寧に踏み台が置かれていた。
まるで、お立ち台だが、踏み外さないように注意深く上る。
そして、ゆっくりと聴衆の方を向いた。
(えっと……。結婚式の挨拶的な感じかな? ちょっと違うか?)
ナスターシアは、胸に手を当てて、聖堂の入口の上のステンドグラスを見ながら、室内全体に声が届くように話し始めた。
「本日、ここにこうして御参集くださった方々は固より、王国の王族、貴族、市井、農民、奴隷、物乞いに至るまで、この国の全ての人々に、遍く主カイルデュナス様の滔々と溢れる愛がゆき渡り、その心に暖かなぬくもりの灯火がともらんことを」
その両の手を高く広げ、声高らかに言う。
「神の祝福を!!」
その瞬間、なぜかほんのりと心が暖まる感じがした。
(あれ? この感覚……。お兄様?)
見ると、聖堂の入口のドアがほんの少し開いて、誰か覗いている。
「素晴らしい、祝福をいただきました。私たちは今! 確かにここに、神の祝福をいただいたのです」
クレールが、祭壇の脇で感動に打ち震えていた。
「さあ、祈りを奉じましょう!!」
ナスターシアに向かって祈りが捧げられる……。
なんだか、おもはゆい。
ながながと祈りを捧げられた後、満足げなクレールに促され、聖堂をあとにする。
「聖女、ナスターシア様。ありがとうございました。お部屋までご案内致します」
再び、クレールとクラリスを伴って、部屋へと下がる。
修道士女達は、口々に感動を分かち合う。
「凄かったな、やっぱり聖女なんだ」
「本当はとても優しいんじゃないか?」
「昨日、聖女様のお召し物をめくりあげた罰当たりがいたみたいだけど……」
「あの方に手をだすなんて!」
「ああ、ナスターシア様。私はあなたに、この命を捧げます」
「本当に素晴らしい祝福でした。私たちはとても幸せです」
部屋に帰ると、クレールとクラリスにまた感謝された。
「ナスターシア様……」
「クラリス! ナスターシア様を見ながら私の腕をとるのは、やめて下さい」
「あっ、失礼しました」
「では、しばらくお休み下さい。私どもは、隣にて控えております」
「ありがとう」
(ふーっ、なんかまあ、乗り切れたからいいか。それにしても、お兄様がいたような気がしたから、あとで確認してみよう)
「それまでは、と」
服にしわがつかないように脱ぎ、ベッドでごろごろしつつ、ジョエル人形にハグをして楽しむ。
「ぬーん、しゅきしゅき~! もっと完成度を高めないとね、うん」
一仕事終えた安堵からか、ナスターシアは器用に体の上にジョエル人形を乗せて、ウトウトしてしまった。
眠い!
今日は、マルセル兄様達が到着して面会にお越しになる日だ。
外は、晴れやかないい天気になった。
湯浴みのあと、クレール達が入室してきた。
「おはようございます、ナスターシア様」
「おはよう」
「今日は朝からシスター達が騒がしいようです。なにやら、ナスターシア様に見咎められたから、もう長く生きられないとか……」
(厨二病かっ!!)
「クレールとクラリスは、見咎められるようなことは、していませんよね?」
「もちろんで御座います」
もちろん、してる! っていう意味かもしれないが……。
「本日のご予定ですが、このあと、聖堂でミサに参加を願います。午後からヘロン様、マルセル司祭がお越しになります」
「ミサ?」
「そうですね、私どもが案内差し上げますので、祭壇から祝福を頂ければと……」
「ちょっとまって、クレール」
(あ、『だじゃれ』じゃないよ)
「なんでしょう?」
「私は、シスター達の方を向いてお祈りするの?」
「いえ、祝福をいただければ、と」
なんのことだか、さっぱりわからない。
「よくわからないけど、やってみます……」
聖堂に行くと、すでに修道士と修道女でいっぱいだった。
「ねぇ、ナスターシア様が昨日悪漢を斬りつけたそうよ」
「恐ろしいわ」
「逆鱗に触れるようなことをしたら……」
「夜も巡回して禁忌に触れるような行いがないか、監視してるって……」
「もし、見つかったら?」
「どうなるのかしら?」
「なにか、とんでもない仕打ちが待っているのよ」
「お静かに」
ざわつく聖堂が、一瞬で静まりかえる。
「本日は、聖女として顕現なされたカイル様の守護天使、ナスターシア様より祝福を賜ります。カイル様に祈りを!」
修道士、修道女達は、一斉に頭を垂れ、胸に手のひらをあてる。
ナスターシアは、おもむろに祭壇の前に進み出る。
衣擦れの音が響く……。
そこには、後ろからでも彼女が見えるように、ご丁寧に踏み台が置かれていた。
まるで、お立ち台だが、踏み外さないように注意深く上る。
そして、ゆっくりと聴衆の方を向いた。
(えっと……。結婚式の挨拶的な感じかな? ちょっと違うか?)
ナスターシアは、胸に手を当てて、聖堂の入口の上のステンドグラスを見ながら、室内全体に声が届くように話し始めた。
「本日、ここにこうして御参集くださった方々は固より、王国の王族、貴族、市井、農民、奴隷、物乞いに至るまで、この国の全ての人々に、遍く主カイルデュナス様の滔々と溢れる愛がゆき渡り、その心に暖かなぬくもりの灯火がともらんことを」
その両の手を高く広げ、声高らかに言う。
「神の祝福を!!」
その瞬間、なぜかほんのりと心が暖まる感じがした。
(あれ? この感覚……。お兄様?)
見ると、聖堂の入口のドアがほんの少し開いて、誰か覗いている。
「素晴らしい、祝福をいただきました。私たちは今! 確かにここに、神の祝福をいただいたのです」
クレールが、祭壇の脇で感動に打ち震えていた。
「さあ、祈りを奉じましょう!!」
ナスターシアに向かって祈りが捧げられる……。
なんだか、おもはゆい。
ながながと祈りを捧げられた後、満足げなクレールに促され、聖堂をあとにする。
「聖女、ナスターシア様。ありがとうございました。お部屋までご案内致します」
再び、クレールとクラリスを伴って、部屋へと下がる。
修道士女達は、口々に感動を分かち合う。
「凄かったな、やっぱり聖女なんだ」
「本当はとても優しいんじゃないか?」
「昨日、聖女様のお召し物をめくりあげた罰当たりがいたみたいだけど……」
「あの方に手をだすなんて!」
「ああ、ナスターシア様。私はあなたに、この命を捧げます」
「本当に素晴らしい祝福でした。私たちはとても幸せです」
部屋に帰ると、クレールとクラリスにまた感謝された。
「ナスターシア様……」
「クラリス! ナスターシア様を見ながら私の腕をとるのは、やめて下さい」
「あっ、失礼しました」
「では、しばらくお休み下さい。私どもは、隣にて控えております」
「ありがとう」
(ふーっ、なんかまあ、乗り切れたからいいか。それにしても、お兄様がいたような気がしたから、あとで確認してみよう)
「それまでは、と」
服にしわがつかないように脱ぎ、ベッドでごろごろしつつ、ジョエル人形にハグをして楽しむ。
「ぬーん、しゅきしゅき~! もっと完成度を高めないとね、うん」
一仕事終えた安堵からか、ナスターシアは器用に体の上にジョエル人形を乗せて、ウトウトしてしまった。