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05 351-08 このリア充め、反省しろ!!(1768)

 陽光が力強さを増し、草木の緑が深くなる8月。


 兄マルセルが、王都の修道院から一つ年上くらいのリュシスという少女を連れ帰ってきた。

 なんでも、側仕えにするのだそうだ。

 彼女は修道院では、丸坊主にされていたので、まだ髪の毛が短くて変な感じがする。でも、髪が伸びたら綺麗になりそうだ。


 それにしても、部屋がマルセルのとなりなので、いろいろ聞こえてきて迷惑だった。


「マルセル様、お茶をお煎れいたしました」

「マルセル様、お散歩に行きましょう」

「マルセル様、……」


(うがぁあーっ!! もう、イチャコライチャコラと!!)


「マルセル様、お着替えを持って参りました」


 あーもう、我慢できない!


 ガンガン!

 ナセルは乱暴にマルセルの部屋のドアを叩く。


「マルセル兄様! ナセルです! お話があります」


「なに? 入って」


 ガチャ!


 ぬっ!!


 そこではなんと、侍女がマルセルの服を脱がせようとしている最中だった!


「ちょっ! 何やってんの、お兄様!?」


「何って、暑くて汗だくになっちゃったから着替えようと思って」


「だからって年頃の女の子に、そんなことさせて何のつもり?」


 マルセルとリュシスに怪訝な顔をされた。

 おかしい。


「いちいち変な妄想するナセルがエッチなんだよ……」


(ぶまままままままっ! 何ですとぉっ!?)


「そんなこと言って! リュ、リュシスが来た最初の夜のこと、知ってるんだからね!」


 ナセルは、ビシッとマルセルを指さして指摘する。

 動揺を隠せないマルセル。


 実は、リュシスが来た最初の夜、なぜか二人はマルセルの部屋の同じベッドで寝たというのだ。


「な、何故それを……。い、いやでも、なにもやましいことはしてない! ただ、一緒に寝ただけ」


「なんてこと!! なんて破廉恥なの、お兄様!」


 ここぞとばかりにたたみ掛けるナセル。


「いいですか? マルセル兄様は12歳、リュシスは13歳? まかり間違えば子供が出来てしまいますよ!! わかってるんですか?! もう!」


 もう、どっちが兄でどっちが弟かわからない。弟か妹かもわからない。


「とにかく、そういう関係でないなら、イチャイチャしないでください!」


「申し訳ありません。以後気をつけます……」


 リュシスの方は、面食らってしゅんとなっていた。





 ナセルは、気晴らしに庭に出てみた。

 暑い……。

 日差しが強い。

 日傘がないと、焼けちゃう……。


(焼けちゃう……か。ヤキモチ? いやいや、八つ当たりに近かったかな。大人げない……あ、大人ではないか……。でも反省しよう)


「あっ、ナセル様」


「リュシス……、さっきはごめんね。言いすぎたかも」


「いえ、とんでもないです。それより、ナセル様の髪、可愛いく編んでみてはどうでしょう?」


「えっ?」


「ほら、こんなふうに……」


 サイドの髪を束ねて、後ろでつまんでみてくれた。ちょっと首回りがすっきりする。


「ほら、可愛らしいですよ」


(なんていい子なんだ!)


「ぅんっ。じゃあ、お願いしようかな」


 あみあみあみあみ……。


「出来ましたよ、ほら。とっても、かわいいです!」


 サイドの髪を三つ編みにして、後ろに回し、


「ありがとう!」


「ナセル様は、どうしてそんなに可愛いんですか? 何か特別なことをされているんですか?」


(そんなこと言われても、嬉しくないぞ~こら!)


「そんなこと……全然ないよ~。なにもしてないし」

(ひょっとして私、チョロい?!)


 カサカサッ


「ん? ねえ、なんかあの草の辺り動かなかった?」


「見てみましょう」


 ナセルはリュシスを盾にしながら近づいてみた。


 ゆっくり近づいてみる。


 のっそり、ゆっくり……。


「蛇ですね」

 リュシスがこともなげに事実を言うと、蛇とナセルの目が合った。


 にょろん?


「ひゃああああああああああっ!!!!」」

 ナセルの悲鳴に蛇もリュシスも驚いた。

 蛇はそそくさと逃げていった。


「あわわわわ、私、ヘビ……」


 へなへなと腰砕けになってしまったナセルに、リュシスが声を掛ける。

「大丈夫ですか、ナセル様。ヘビ苦手なんですね」


 すぅはぁ、すぅはぁ……。落ち着いてきた。


「もうっ!!! 次からは一人で見て来て!」


「えっ? だって……。あ、はい……わかりました」


 理不尽には慣れているリュシスだった。


(アレが嫌だから、空飛んでたんだった……。思い出したよ)

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