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31 352-06 ドライヤーの開発(1498)

「もう、ご勘弁下さいませ!!」


 朝からエレナの迫力のある抗議が轟く。


 怒られているのはナスターシアだった。


「いったい何度髪を洗えば気が済むのですか?! 私たちは髪の乾かし係ではありません! 他の仕事もあるのです! 以前のように月に一度と決めて下さいませ!」


「……はあ、すいません……ごめんなさい」


 エレナが怒るのも無理はない。ナスターシアが髪を洗うと、乾かすために髪を広げて、しばらく煽がされるのだ。ちゃんと乾かさないと臭くなるし、ナスターシアとしても譲れない線もある。


 本当は二日に一度、理想的には毎日洗いたいのだが、三日に一度程度に我慢しているのだ。


 ちなみに普通の人は年に2~3回しか洗わない。



 髪を洗わない代わりに、シラミ対策のために櫛を毎日通すのだが、お陰で傷んでボサボサになっている人が多い。


 そこへいくとナスターシアの髪は艶やかで、落ち着いている。エレナ達の尊い犠牲の上に成り立つ美だったのだ。




 仕方ない、時間がかかりすぎなのは自覚しているから、お爺様に相談してみよう。お爺様は、庭のパーゴラの下で本を読んでいた。


「お爺様、あのー」


 反応がない。


 まさか! ひとり静かに逝ってしまわれたのか!?


「お爺様!」


「聞こえとるわ。またなんか厄介なこと言おうとしとるじゃろ?」

 大きなため息をつかれた。


「ドライヤー……出来ないかな~なんて……」


「自分で工房に行って作ればよかろう?」


「あのー、ひょっとしてラリホーマのこと怒ってます?」


「……」


 お爺様の経済の話は難しいのだ。ラリホーマで眠らされた、とマリウス兄様と盛り上がって談笑していたら、お爺様に聞かれていたのだ。


「ふみーん……。仕方ない……ない知恵絞って考えてきます」



 仕方ない、工房に行こう!

 ナスターシアは、一人で工房に向かう。途中、ギルロイ商店で普段着を仕入れるのも忘れない。


 一方、お爺様は厄介払いができたと、一人ほくそ笑んでいた。




 ギルロイ商店では、衣装のお礼を述べ、ついでに数点普段着を仕入れる。丈の短いコルセット=ブラもどきを頼んでおく。ロングコルセットの補正力は便利だが、欲しいのは胸の固定具なのだ。それに動きが制限されすぎて不便なシーンがある。


 上げ底の秘密は明かさないでおいた。どうせ誰かがすぐ思いつくだろうが。



 工房に着くと、とても不思議がられた。


「おや? どなたでしょう? ここは、ヘロン様の専用工房ですぞ?」


「あ、えっと、前にも来たことあるんですけど、以前はナセルと名乗ってました」


「ああ! これは失礼しました。作業場は汚いので、休憩室にどうぞ」


 休憩室がきれいかというと、そうでもなかったが服の裾がつかえて危ないようなものはなかった。


「今日は、作ってもらいたいものがあって来ました」


 そういって、話を切り出すとドライヤーの基本構造を説明した。



「うーん、あんまり小さくは出来ないですね。それに思ったより風は出ないと思います」


 ナスターシアが説明したのは、ファンを回して風を送り、ファンの前に何か熱いものを置くというものだった。


 それではと、今度はシロッコタイプのファンを提案してみた。通常のファンより静圧が高くなるので、出口形状を細くすれば強風が得られる筈である。


「そうですね、わかりました。ココとココにギアを入れて、こんなふうにしてみましょう。木材でなんとかなるところは木材で作りますよ。あと、熱風は冬だけでいいでしょう?」


 どんどんアイデアが固まっていく。


「どれぐらいで出来そうですか?」


「そうだねぇ、頑張って一月ぐらいかな?」


「わぁ! 楽しみ! よろしくお願いしますね」


 思いっきり愛嬌を振りまいて、帰る。暑い最中に届けば、扇風機代わりにもなるかも?

 本当に楽しみだった。

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