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27 352-05 5月祭 夢のあと(1792)

 慣れた自室のベッドの上。


 ガンガンと鳴り響く頭……。


 耐え難い頭痛……。


 襲い来る吐き気……。


 これは……紛うこと無き、二日酔い!



 しかも、途中から記憶が無い!

 スイカップちゃんのお財布、返したかな?

 ジョエル様はあのあと、どうされたのかな?


 そもそも、どうやってここにたどり着いた?


「ぅおえっ」

(ヤバイ、トイレまで耐えなくちゃ!)


「ナスターシア様?」


 リュシスがいた。桶を持ってスタンバイしてる……。



 …………



 ヴアアアア…………。アタマイタイ、キモチワルイ……。


 水飲んで、また寝よう。



 …………



 なんだか、何人か客が来たようだが……まあ、関係ないか。


 夕方になって、漸く少しマシになってきた。


「なにか、お召し上がりになりますか? スープなどいかがでしょうか?」


「うん、ありがとう」


 リュシスがつきっきりで、面倒見てくれている。鎧戸は開け放たれているが、酒臭かろうに……。


(穴があったら入りたい……)


 結局、二日酔いで祭りの二日目をまるまるぶっ潰してしまった。


「ナスターシア様、武勇伝を伝え聞いております。覚えておられますか?」


「ううん、全く……」


「ジョエル様と二回目を踊った後、楽士達にもっとテンポの速い曲をと」


「うん、それは知らない」

(実はもっと前から知らない……)


「それで、男達が次は自分たちにも踊らせろと迫ってきたところ、片っ端から踊ったそうです」


「え?」


「しかも、一曲踊りきる毎にジュネバーを男達と競い飲み……」


「は?」


「最後は死屍累々であったと……」


「嘘……」


「とっても盛り上がったので、今日もたくさんの人達が呼びに来てましたよ!」


「私……、なんか……」


「明日が楽しみですね!」


 嫌みなのか、本気なのか……。


「もうリュシスのこと、『やらかし侍女』とか呼べない~」


「え? そんなふうに呼んでたんですか?」


「呼んでないけど……。ところで私、どうやってここまで?」


「ああ、それならロジェさんがおんぶして運んでくれてました。お礼言っといて下さいね。あと、ジョエル様がめちゃめちゃ心配されてらしたとのことです。マルセル様もですよ、本当に心配されてたんですから……」



「ところで……。お爺様からの伝言があるのですが……」


「嫌! 聞きたくなーい!」


「子供が酒を飲んじゃだめじゃろうがっ!!! 以後、禁酒! とのことです」


「至極ご尤もで御座います……。面目次第も御座いませぬ~」






 その日の夜、遅く。


「よっ! ナカーマ!!」

「な? マリウス兄様の……(・_・)/\(・_・)ナカーマ!?」


 のおおおおーっ!!


「わっ、私としたことが、とんだ醜態をお見せしてしまい、申し訳ございませんでした。以後気をつけます」


「えーっ、気をつけなくていいよー。今度、一緒に店に行こうぜ! 特上のウイスキーってのを飲ませてやるよ」


「ウイスキー? があるんですか?」


「あるぜ! お前が生まれるよりずっと前に仕込んだ特上モノが……」


「ちょ、ちょっとだけなら……」


「ダメじゃ!!!!!」



 いつのまにかお爺様がホールに来ていた。



「懲りんヤツよの? 親の顔がみたいわい」


(いやいや、あんたの孫だよ)


「それより、早速王宮から招待が届いておるぞ。昨日の噂が届いたのか……。第二王子じゃな。嬉しいか?」


「えっ? ああ、まあ……」


「ホントにか?」


「うーん……」


「明日、事件が起きてもわしゃ知らんぞ?」


「どういう意味でしょう?」


「第二王子は変人じゃからな。馬で駆けてくるかも知れん。そうなったら、ゴーティエ卿の息子、ジョエルだったか、では相手にはならんじゃろうな」


「お爺様!!」


「ん?」


「こっちから、押しかけましょう!! 今すぐに出発しましょう」


「無茶を言うでないわ。明日の朝じゃな、すぐ支度するがよい。王都までは馬車だと五日はかかる。野営の準備も必要じゃ」


 フェリアと王都の間には、深い森が横たわっている。そのため、早馬は森を突っ切って行き来できるが、馬車での往来は困難である。

 迂回するルートにならざるを得ず、結果、五日もかかるのだ。


「俺も行こうか?」


「お前は祭りの仕事があるじゃろ? ナスターシアの事を聞かれたら、おらんと言えよ。 マルセルはついてこい、よいな?」


「はい、お爺様」


「そうじゃ、マリウス。ウイスキーを一樽用意しておいてくれ、土産が必要じゃ」


「えーっ、自分で飲もうと思ってたのに~」



(というわけで、ジョエル様、ごめんなさい!! 今年は諦めますから、なんとか誘惑を退けてくれることを祈ってます!)


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