表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/15

7

その後、私たちふたりはとても忙しくなった。

何千人もの人たちを集めた盛大な披露宴も行なったし、ジョージの王子としての外交の仕事にもついていった。もちろん、オリバー国にもふたりで行った。

夫婦でオリバー国王に挨拶に行った時、私がオリバー民族の血筋を引いていることを知った国王はとても嬉しそうだった。けれど、そんな国王の高笑いによって私は、ああ、やっぱり自分は政略結婚の道具なんだと痛感して、複雑な気持ちになった。こういうことはその時だけではなくて、ジョージの仕事についていく先々で同じような思いをすることになった。毎回毎回、自分が政略結婚の道具だということを実感させられると、さすがにイヤになってくる。







そんな私の様子をみかねてか、ジョージは仕事が終わるたびに私を色んなところに連れて行ってくれた。色んな国の市場や、大きな教会、お城、綺麗な湖……。

最初の方はジョージも仕事が忙しい中でも、こういう風に私に気を遣ってくれていた。

けれど、ジョージは一国の主になる男。私にばっかりかまっていられるはずもなく、段々と仕事が忙しくなるにつれ、私への扱いが雑になってきているような気がした。







ある時、ジョージが仕事から帰って来た、遅い夜のことだった。

ジョージは疲れ切った様子で帰ってくるなり大きなため息をつき、テーブルに付属するふかふかのイスにどかっと腰を下ろした。











「あら、随分お疲れのようでございますわね。

すぐに食事の準備を始めますわ」












「え、まだ準備していないの?勘弁してくれよ〜 ……。まあいい、はやくしておくれよ」












「は、はい。申し訳ありませんわ」











この時点で、なんとなく険悪なムードは感じられた。私はおそるおそる食事の支度を始める。

幸い、下準備は済んでいたので、そんなに時間はかからなかった。

それなのに、ジョージはまだかまだかと言わんばかりに右手の人差し指でテーブルをトントンと軽く叩き続ける。相当イライラしているみたい。

私は大急ぎで準備して、やがて料理を差し出した。












「さあ、お召し上がりなって」












「いただくよ」









ジョージはイラついた様子で、それでもさすがは王子、行儀は絶対に崩さない。

ジョージが料理を食べている間、私は夢中になって食事をしているジョージの顔に見惚れていた。その時だった。ジョージはふと顔をあげ、

私にこう言い放った。












「トロミィ。塩からいよ。味がしつこい。

こんなもの、食べられないね」












「え……」











後頭部を金槌で打たれたような、そんな衝撃が、脳内に走った。

私が返事に困っていると、ジョージはナイフとフォークを置き、スタスタと自分の部屋に入ってしまった。

かなりショックな出来事だったし、ジョージのあんな冷たい態度は初めてのことだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ