表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/15

6

私とジョージはふたり並んで市場に出かけた。

私たちの大きな住居から歩いて5分くらいのところに市場はあるらしかった。

少し歩くと、段々人気が多くなってくる。

道行く人たちは、私たちふたりに気がつく度に驚いた様子で道を開ける。

身分が高いと、人はこんなにも気を遣ってくれるんだ。

なんだか、新鮮な感じがした。






新鮮な気分のまま、私たちは市場に到着した。










「さあ、トロミィ。着いたよ!」










ジョージは爽やかに言う。




私たちふたりは、とりあえず食材売り場に向かった。食材売り場には、私の世界にもありそうな肉や野菜、魚などもあり、私の世界では見たこともないような不思議なものまである。





とても気になるので、思い切ってジョージに聞いてみることにした。









「ジョ、ジョージさまぁ?こ、これはなんですの?」












「ああ、これはイモだよ。食べてみるかい?」










ジョージは私のぎこちないお嬢様言葉も寛大に受け入れてくれて、そのイモと呼ばれるものを買ってくれた。





イモを買って、私たちは広場の中心にある大きな噴水の周りのベンチに、並んで腰かけた。

市場の人たちはみんな、私たちのことを知っているようで、私たちふたりをにこやかに見守ってくれているみたいだ。











「さあ、お食べ」










「はい、いただきますわ」










ジョージに勧められ、私はイモを手にした。

このイモは、たしかに形はサツマイモみたいだけれど、緑色でゴツゴツしていて、あまり美味しくなさそうだった。

けれどせっかくジョージが買ってくれたんだ、

食べるしかない、と、思い切ってかじりついてみた。








ガブッ!!!











「え、うま!ちょーうま.....!あ、い、いや、


美味しゅうございますわ!」









あまりの美味しさに、思わず素が出てしまった。が、すぐさまお嬢様言葉で言い直した。

変に思われていないだろうか。











「そう、良かった!」










私の心配は無用だったようで、ジョージは嬉しそうに、満面の笑みで微笑んだ。それをみて私もなんだか嬉しくなり、ジョージを喜ばそうとこれみよがしに美味しそうにイモをたいらげた。










「はははっ!トロミィ、美味しそうに食べるね。気に入ってくれてよかったよ」











「ええ、ありがとうございますわ!」










私とジョージはそう言って笑いあった。

この時、私はとても幸せな気持ちで心が満たされていた。それは、私の好きなアイドル、JOJIに似ている人と一緒に過ごせているからではない。

私はこの人を"ジョージ"として見るようになり、好意を抱いていた。ジョージが笑顔になる度に、私の心は満たされる。

心の底から恋に落ちてしまったみたい。

もう元の世界に戻れない。戻りなくない。








自分が政略結婚の道具であることも忘れ、私はジョージとの休日を満喫していた。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ