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私はその日からジョージと一緒に暮らすことになった。暮らすといってもどうせ夢だろう。
ストーリーがある程度終わったら、どうせ目が覚めていつものように学校に行く時間が訪れはるのだ。しかし、夜、ベッドにつくといつの間にか眠りに入っていたようで、目が覚めたら朝になっていた。そして辺りを見回した時、風景がいわゆる"異世界"のままだった時には体から血の気が引いていくような気がした。
私が今体験しているのはどうやら夢ではなく、転生した後の世界のようだ。
どうしよう、どうしようと考えていた、その時だった。
「おはよう、トロミィ。よく眠れたかい」
横にはなんと、ジョージがいた。
私は驚いてはっと飛び起きた。それを見たジョージは、また私を笑う。優しい笑顔で。
「びっくりしすぎだよ。トロミィ」
そういうとジョージは、私の手を引いてテーブルまで案内してくれ、コーヒーを差し出してくれた。
「さ、どうぞ。熱いと思うけれど」
「あ、ありがとうございます」
お礼を言うと、ジョージはまたニコっと爽やかな笑顔を見せる。ダメだ。ジョージのこの優しい笑顔に騙されてはいけない。
あくまでも私はオリバー国やらなんやらかんやらの政略結婚の道具なのだ。
いや、そもそもそんなことよりもまず考えなくてはいけないことは、何故自分が異世界転生してしまったたかということと、元の世界にはどうしたら戻れるかということだ。
私はコーヒーを飲みながら頭を精いっぱい、大車輪のように回転させ、考えてみた。けれど、考えてみれば考えてみるほど、意味が分からなくなってくる。
一体全体自分はどうしたら良いのだろうか。
何をするのが正解なのだろうか。
「どうしたんだい?そんな気難しそうな顔をして」
「あ、いや、何でもないです!」
いきなりジョージに話しかけられたので、コーヒーをこぼしそうになった。
「ははは!トロミィは相変わらずウソが下手だね。ねえ、そんなことよりさ、今日は僕が休みだから、一緒に出かけようか」
「は、はい!」
意味が分からないが、憧れのJOJIにデートに誘われていると思えば、嬉しいと思うので、そう思うようにした。
こうして私はジョージと一緒に、街へ出かけることになった。