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「トロミィ様!トロミィ様!お時間でございます!」










目がさめると、私はまず天井の高さに驚いた。

確かさっきは自分の部屋で、今よりももっと低い天井に貼ってあるアイドル、JOJIのポスターを見つめていたはず…。

不思議に思って周りを見渡すと、それはそれは広く、そして立派な洋風の部屋の中だった。

どういうことだろう。そうだ。夢を見ているに違いない。なんだ、明晰夢か、と少しがっかりしていると、部屋のドアを勢いよくノックする音が、さっきから鳴り止まないことに気づいた。












「トロミィ様!起きてますでしょうか!早くご支度をなさらないと、ジョージ王子との婚約披露式典に遅れてしまいますわ!」










自分が夢の中でも"とろみ"と呼ばれていることが少し可笑しかった。でも"とろみ"というより

少し訛って"トロミィ"という感じだろうか。

まあそんなことはどうだって良い。

もうひとつ気になったのが、ジョージ王子との婚約披露式典という言葉だった。

私は夢の中で婚約しているのか?しかもジョージ?王子?

一瞬、さっきまで眺めていた天井のポスターの人物を思い浮かべた。まさか……ね。




夢ならばいっそ覚めるまで楽しんでやろうと思い、ドアの外に出ることにした。王子様と婚約するくらいだから、きっと私は相当なお嬢様だという設定なのだろう。

必死に咳払いをして声を作ってから、扉の向こうへ飛び出した。













「あ〜ら、ごめんあそばせ。急いで準備を致しますから、少々待っていてくださるぅ?」












我ながら上出来だと思った。夢であるのが勿体ないくらい。夢だからって少しふざけすぎたかな、なんて思ったけれど、扉の外に立っていた召使いらしき女の人は全く気に留めていなかった。













「あ〜良かった。もう起きていらっしゃいましたのね。ではこちらをお召しになってください」













召使いは私に大きなドレスを渡し、再びバタン、と扉を閉めた。重い。

さっきまで寝ていた大きなベッドの上に広げてみると、素人の私でも高級なドレスだということがわかった。純白に、派手な飾りつけ。

ペトラ・スタントを彷彿とさせる美しいこのドレスを、早く着てみたいと思った。どうせ夢だし。












「着ましたわよ〜」











「あらまぁ〜素敵ですこと!きっとジョージ王子もお喜びになりますわ!」










ジョージという言葉に、少しドキッとした。

このままジョージ王子との披露宴に出るまで、夢が覚めないことを祈るばかりだった。





召使いはとても嬉しそうに私のことを案内してくれた。一緒に歩いている間にも、あの人も喜んでいましたわだとか、あの人も祝福なさってましたわだとか、本当に嬉しそうに話してくれた。なんだか、この人は良い人そうだ。

夢であることになんだか少し申し訳なさを感じるくらいだった。





茶色のレンガ造りの建物の中を歩き、階段をコツコツと降りる。ヒールにはあまりに慣れていないので、一階まで降りるのに少し時間がかかった。












「さぁ、トロミィ様いきましょう」











召使いに案内されて大きな庭のような出てみると、1人の男性の姿が見えた。

その男性は振り返り、召使いに話しかけた。












「トロミィを案内してくれてありがとう、サンコン」










サンコン、と呼ばれた召使いは男性に向かって深々とお辞儀をする。それを見て急いで私もお辞儀をする。すると、男性は私の顔を覗き込んだ。この時、私はしっかりと男性の顔を見た。













「はは!何でトロミィもお辞儀をしているんだい」











「ジョージ......王子......?」










私が何でこの男性をジョージ王子と思ったかというと、この人が私の好きなアイドル、JOJIとそっくりな顔をしていたからだ。

この人の蒼く澄んだ瞳を見れば、それは明らかだった。

男性はなんだい?と言いながら私に微笑みかけている。やっぱりそうだ!

私はポスターのJOJIに誘われて、夢の世界に引きずり込まれたんだ、きっとそうだ!

やったー、良い夢見れた!

嬉しかった。


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