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努力しても一般人。  作者: きゅうりの浅漬け
修行
9/12

7年後

「「誕生日、おめでとう!」」


この世界に転生して、7年が経過した。

この世界にも誕生日会的なものはあるようで、いつもより少しは豪華なものが食べられる。

鳥の丸焼きや、柔らかい甘いパンなどだ。


ステータスの本を読んだ後、俺はもちろん他の本も読み尽くした。

この村や国の名前魔族やエルフがいることなど、様々なことが書いてあった。

この村はトロバ村というらしい。

まあ、それは必要になった時においおい伝えていこう。


そんなこんな考えながら、食事を終えると、父がおもむろに何かを取り出した。


「さて、ダイナ。お前ももう大人まで半分だ。お前にプレゼントをやろう。」


今までの誕生日ではこんなものはなかった。

今回は特別なのだろうか。

大人まで半分、ということは、今回は二分の一成人式みたいなものか。

父から手渡されたのは、長い棒状の箱だった。


「開けてみなさい。」


言われるままに、開けてみる。


…木刀だ!


「明日からお前の訓練をする。お前がどんな生き方をするのかはわからないが、自分の身、そして大切な人を守れるようになりなさい。」


明日から剣の訓練か。

俺の剣道で身につけた実力を見せてやる!

テンションが上がっていると、母から声をかけられた。


「パパは剣を教えるわ。そしてもし、教わりたいのであれば、私が魔法を教えるわ。昔だけど、習ったことがあるの。」


なんと!母は魔法が使えるのか。


「教えて!」


もちろん教わる。


「わかったわ。準備しておくわね。それと、私からもプレゼントよ。」


渡されたのは、本のようなものだ。


「その本に、その日起きたこと、楽しかったこと、頑張ったこと、辛かったこと、いろんなことを書きなさい。いつか、大人になったら役に立つはずよ。」


なるほど、日記帳か。これはありがたい。

この世界で知ったことをメモするのに最適じゃないか。


「パパ、ママ、ありがとう!」


「よし、明日は早くから訓練するぞ。もう寝なさい。」


「はーい」


二階へと上り、布団に入る。

だが、ワクワクして眠れない。こともなく、すんなりと寝てしまった。





翌日


朝の6時に目が醒める。

毎年起きるのが早くなっており、去年より1時間早く起きた。

父はもう起きてるようだ。

服を着替え玄関へと向かう。


「おっ、おはよう。早いじゃないか。」


父は庭の畑の手入れをしていた。


「だって昨日早くから訓練するぞって言ってたじゃん。」


「そうだな。まあ、そろそろ起こそうと思ってたとこだ。」


「それで、何するの?」


訓練するとは言ったが、何をするのか全く知らされていない。


「いいか、剣を振るには力が必要だ。だから最初の頃は剣は使わない。付いて来い。」


父について歩いていくと、アーマの家に着いた。


「おーい、来たぞー。」

父が叫ぶと、

「おう、準備はできてるぜ。」


クロンさんとアーマが出てきた。

2人とも動きやすそうな格好をしていた。


「おはようアーマ。」


「うん、おはよう。」


父とクロンさんが喋っているので、俺もアーマと喋ることにした。

朝焼けに染まる赤い髪が綺麗だ。

この7年でアーマも変わった。

少し細いつり目が気の強そうな感じを出しているが、全体的に中性的な印象がある。

ちなみにまだアーマは6歳だ。


「今日は何するのかな?」


「多分、走るんじゃないかな?」


剣を使わないトレーニングで、最初に始めることと言ったら、ランニングだろう。

しかし、あの父やクロンさんについていけるだろうか。

流石に手加減してくれないとついていけないと思うのだが。


「そっか、かけっこするんだ!」


朝早くから楽しそうだ。

まあそれは俺も同じだが。

前世ならめんどくさがっているはずだが、この世界の俺は子供の感性なのかもしれない。


「さて、ダイナ、アーマ、ついてきなさい。」


父たちの話は終わったようだ。

ついていくと、坂道に着いた。

かなり長く、数百メートルは続いているだろう。

だんだんと傾斜が急になっており、スタートはほぼ平らだが、最後の方はもはや崖じゃないか、というような角度だ。

上りきったところがどうなっているのか見えない。


「まずは見ていなさい。」


そういうと、父とクロンさんは坂を走り出した。

100メートル5秒くらいじゃないか。はっや。

傾斜がほとんど垂直になっても止まらない。

そして40秒くらいで、坂を登りきってしまった。


「さて、修行内容だが、ここを登りきれ。」


おいおい、あんた子供になんてことさせようとしてんねん。

流石に無理だろ。


「ここは、昔俺たちが修行してた場所だ。数年かかっても登れない奴はいる。俺たちは20人ぐらいで使ってたが、登れたのは半分もいない。ちなみに俺たちは1年かかった。」


無理やん。

めっちゃハードやん。

ちなみに俺の関西弁はえせやん。


「もしお前たちがそうだったら、俺たちは剣を教えない。そんな奴に守れるもんはない。」


…かっちーん。

あそう。

そういうこと言う。

度肝抜いてやる。


「じゃあ俺は半年で登ってやる!」


見てろよ。

絶対にやってやる!


「ああ、期待してる。」


…なんだ、もっと煽ってくるかと思った。

まあいい。

早速やってやる!


「いくぞアーマ!」


「うん!」


俺の伝説は、ここから始まるんだ!





結論。

無理。

なんであの人たち登れんの?

てか、そこまでいくのにもダッシュしないといけないんだけど、それが無理。

開始100メートルでもうきつい。

なんとか150くらいまでは走るけど、そっからはもうダッシュじゃないスピードだし。

アーマも同じぐらいのところでダウンした。


「まあ、1日じゃ無理だよな。」


そう言いながら、父たちはおりてきた。


「朝昼晩、好きな時間に挑戦しな。1人でも、アーマとでも、好きな時に挑戦するといい。許可は取らなくていいからな。道は覚えただろ?」


あの過保護が、随分緩くなったものだ。

とにかく、父を驚かせるんだ。

今日から毎日チャレンジしてやる。


「さて、そろそろ仕事の時間だ。ちゃんと帰って飯食えよ。じゃ。」


そう言い残して父は去っていった。


「それじゃ、アーマは帰るか。」


クロンさんはまだ子離れ出来てないようだ。


「…まだ、ここに居たい。」


お、アーマ、やる気だな。


「…わかった。頑張れよ。」


クロンさんも帰っていった。


「よし、もう一回、頑張るぞ!」


「あー!」


(登れなくても、アーマより一歩でも進んでやる!)


俺たちは、坂を登り始めたのだった。

この、果てしない土の坂を。





「た、だ、い、ま、」

がくっ。


家に着いた瞬間に膝から崩れ落ちた。

あの後、10回ほど挑戦したのだが、150メートル、100メートル、80メートル、と言うふうに、回数を重ねるごとに記録が落ちていった。

これ以上やってもしかたがないので、登れた最高地点に印をつけて帰った。

印はモチベーションの維持に必要だと思う。

150メートル、傾斜十五度のところだ。


「おかえりなさい。」


母が出迎えてくれる。


「まったく、あの人はいきなり厳しいわね。ご飯できてるわよ。」


俺もそう思う。

いきなり子供にやらせるレベルじゃねぇ。

それにしても腹が減った。

なんとか体を這いずって、リビングへ向かう。

筋肉痛がもうきた。

若い。





食事を終えると、母から提案があった。


「魔法は、今から教えてもいいかしら?」


イエス、俺はうなずいた。


「それじゃ、準備ができたら庭に来てね。」


剣の方は地獄だが、魔法なら大丈夫だろう。

期待に胸を膨らませ、俺は庭へと出ていくのだった。


――――――――――――――――――――――――

目標


父を超える

坂を登りきる NEW!

ヨシオに会う

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