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努力しても一般人。  作者: きゅうりの浅漬け
新たな人生
7/12

ガチ喧嘩

(あー疲れた。)


人形遊びを始めてもうどのくらいの時間が流れただろうか。

アーマはすっかりお眠のようである。

何処かにタオルケットでもあるだろうか。


「そろそろお昼寝かな?」


マイファザーの声だ。

俺は大丈夫だが、この子の方に布団を用意してくれ。


身振り手振りで伝えようとするが、まあ伝わらない。


「よし、それじゃあベットに連れてくぜ。」


だが心配はないようだ。

お互いがお互いの子供を抱えて二階へと上がっていく。

我が家と構造が似ているようだ。


「さて、暫くおねんねしててね。」


「お前がそんな言葉使うとキモいな。」


「何だとこのやろう!アーマは可愛いからいいんだよ!」


「キモいことに変わりはねえだろ。」


「分からず屋のテメェに分からせてやるよ。表へ出な。」


「それはこっちのセリフだ金髪バナナ。」


…喧嘩が始まった。

結局ほんとはどっちが強いのだろう。

アーマはもう寝ているようだし、俺は窓から喧嘩を見ることにした。

俺は父のステータスを思い出す。

――――――――――――――――――――――――


   名前  ダライアス・プラウド

年齢 26歳

職業 上級剣士

LV 17

HP 900/900

MP 15/15

攻撃 1170(+250)

防御 820

速さ 860


スキル 攻撃アップ中 身代わり 操焔


才能 なし


ステータス総合評価 B


――――――――――――――――――――――――

一体これはどのくらい強いのだろう。


父たちが庭へ降りてきた。

父は剣、クロンは槍のようだ。

流石に木製のようだ。

だが木製でも当たりどころによっては死に至る。

大丈夫なのだろうか。


「それじゃあいくぜ?」


「ああ、来い。」


静かに戦闘が始まった。

お互い先ずは様子を見るようだ。

じっくりと、円を描くように移動していく。



「オラァ!」


クロムが先に動いた!

木製だが、それでもかなりの硬さのはずの槍がまるで鞭のようにしなる。

横に薙ぐようだ。

単純だが、物凄い速さで薙ぐ槍は非常に脅威だ。



「甘い!」

だが、父はいとも簡単に剣で上へと弾き返した!

クロムのバランスは上へと崩れ、辛うじて槍をつかんではいるが、無防備な腹が剥き出しになる。

それを見逃す父ではない。

地面が爆発したかのような音と砂埃を立て、父が消える。

瞬間、クロンの懐へと姿を現した。

父の木剣がクロンの胴体をへし折る勢いで薙がれる。

勝負ありだろう。というか喧嘩のレベルじゃ無い。


成人男性の身体が数メートルほど吹き飛んだ。


…吹き飛んだのは、父だ。


「あー、やっぱり俺槍の才能ねえわ。使うべきじゃねえな。」


無傷のクロンがそこには立っていた。


「ああ、使えるようになったのかと思ってたよ。」


父も軽口を叩いている。

だが、ダメージは大きそうだ。


「さっ、続きと行こうぜ。それとも、もうバテちまったか?」


「まだ余裕だよ、舐めんな。てか、お前スキル使ったろ。」


「あ、バレた?」


「あたりめーだ。得意の駿雷だろ。」


「へへ、正解だ。」


「じゃないとあんな早いパンチお前打てねーだろ。

俺もスキル使うぞ。」


「どーぞどーぞ。てか、さらっと人のことバカにすんなよ。」


…どうやら、父は剣が当たるギリギリで殴られて吹き飛んだらしい。

…全く何も見えなかった。

(…もしかして俺、別に凄くない?)

いや、そんなことはないはずだ。

ブンブンと頭を振り、そんな考えを消す。

(俺がまだ子供だからだ。)

そう考えることにして、再度父たちを見る事にした。


「さて、スキルを使うのはいつぶりだ?いくぜ、操焔。」


父の身体が、赤くなっていく。

周りの温度は上昇し、二階にいても熱が伝わってくる。まるで体そのものが燃えているようだ。


「じゃ、俺もいくぞ、瞬雷。」


バチバチと、物凄い音が周りに鳴り響く。

美しい金の髪は逆立ち、周りに何度も放電するのが見える。


「次は俺からいくぞ。」


そう言うや否や、父の体が消えた。

それとほぼ同時にクロンの姿も消えた。

…何も見えない。

だが、周りの土が何度も爆発している。

おそらく、俺の目に見えないスピードで動き続けているのだ。

…甘く見ていた。

この世界なら勇者になれるだって?

悪いがビジョンが見えてこない。全くだ。


…それでも。

それでも、こんな風になれるチャンスがあるのなら。

こんな俺でも、父のようになれるのなら。


…頑張ろう。前世では惰性で生きてきた俺でも、父を目指してみよう。


「…父、さん。」

! 喋れた!

やった!

他の言葉は喋れるだろうか。試してみる。

「ぱ、ぱ。ま、ま。あ、い、う、え、お。あえええお。」


早くは喋れないようだが、ゆっくりとなら伝わるようだ。

やった!また一つ進化したぞ!

これで色々と質問することができる!


「…参った。」


っと、俺が喜んでいる間に終わってしまったようだ。

勿体ないが、それより喋れたことが嬉しいので、良しとしよう。


「ったく、また強くなりやがったな、ダライアス。」


クロンは倒れ、父は立っている。

父の勝ちだ。


「人のこと、全力で殴りやがって。死んだらどうすんだよ。」


「お互い様だろ。てか、この程度で死ぬならとっくに死んでるだろ。」


「まあな。」


「さっ、負けた負けた。飯、食ってけよ。」


「ああ、ありがとよ。」


長い時間が経ったように感じるが、まだ昼だ。

朝っぱらから訪ねたので、ちょうど4時間といったところだろう。


「う、あう〜。」


どうやらアーマも起きたようだ。


「お、はよ、う」


片言だが、おはようと言う。

できるだけ話すようにして慣らしていこう。


少しして、父たちが帰ってきた。


「ただいま、ダイナ。パパ勝ったよ〜。」


「けっ、子の可愛さではうちの子が勝ってるわ!」


「何だと!」


はぁ、また喧嘩しそうだ。

ここは俺が止めて差し上げよう。


「ぱ、ぱ。おか、あり。」

…少しミスってしまったが、我が子の初めてのパパ呼びだ。怒りなど吹き飛ぶだろう。ふっふっふっ。

さあ、喜ぶが良い!


「パパ?今パパって言ったか!?」


「なっ、お前の子はもう喋んのか!?」


「いや、初めてだ!やったー!ダイナが喋った!今日はパーティーだ!」


「くそっ、いや、うちの子にはうちの子のペースがあるんだ。ゆっくりと学べばいいさ。な、アーマ。」


「だー。」


…予想以上の成果で、少し、ひいた。


「昼はうちで用意するけどいいか?」


「ああ、ご馳走になるよ。」


「じゃ、少しアーマをみといてくれ。」


そう言うとクロンは部屋を出て行った。


「よーし、アーマ、ダイナ、遊ぼうか。それにしてもダイナ、喋れるようになったなんてびっくりしたぞー。」


…暫くはしつこそうだ。


暫く経って、

「できたぞー。」

クロンが呼びにきた。


「アーマは可愛いだろ?」


「ああ、ダイナも可愛いが、アーマもなかなか可愛いよ。」


「だろだろ?あいつの血を継いだんだ。将来強くなるぜ?」


「ああ、間違い無いな。」


あいつとはクロンの妻のことだろう。

そういえば何と言う名なのだろうか。

少し不審がられるかもしれないが、聞いてみることにした。


「あいつ、って、誰?」


「あいつってのは、クロンの妻、アマリア・ダールのことだよ、ダイナ。もう、死んじゃったんだ。とっても強かったんだよ。」


「ああ、俺よりも強くて、もちろんお前のパパよりも強かったんだぜ。」


「パパはクロンよりは強いが、アマリアには一回も勝てなかったなぁ。」


やはり、クロンの妻は強かったらしい。


「ちなみにクロンは婿に入ったから、クロン・ダール、アーマ・ダールが本名だよ。」


ふむ、聞いといてよかった。多分アーマとは長い時間一緒にいることになるだろうからな。


「おい、いい加減飯食うぞ、冷めちまう。」


そう言われ、俺たちは、食卓へ向かった。



「さっ、食ってくれ。」


父の前には、焼いた鶏肉のステーキと、野菜炒めのようなもの、黄色いスープ、そしてパンだ。

特別豪勢では無いが、とてもいい匂いだ。

スープからはトウモロコシの匂いがする。

だが、大切なのはそこでは無い。

ステーキは20センチほど積まれ、パンはバターロールくらいのサイズだが、20、30は積まれている。

野菜炒めは大皿に溢れんばかりにのせられている。

…食い過ぎだろ。


俺たちの前にはパンを粉々にしてスープにつけたものが出された。量は一般的だ。よかった。


「さて、食ってくれ。ほらはやく。」


「…昔なら食えたが、もうこんなに食えねえよ。」


「おや?そんなんじゃ息子を守れないぜ?俺は食えるぞ、お前の負けだ。」


「…ずいぶん見え透いた挑発だな。いいだろう乗ってやるよ。」


…いただきます。もう気にするのはやめよう。

パクッ。うまっ。

パンは普通のパンだが、スープが美味い。

昔洋食屋で食べたものよりも美味い。

クロンは料理が上手いようだ。

夢中で食べ進める。

ペロリと平らげてしまった。


ふう、ご馳走様でした。

さて、父はどうなっただろうか。

…テーブルに突っ伏している。

まだ父の皿には食事が残っている。

クロンの前の皿は綺麗になっている。


「うっぷ、もう無理だ。」


「へっこれで今日は一勝一敗だ。引き分けだぜ。」


「しょうがねえ、引き分けにしといてやる。」


「…パパは暫く動けないから、アーマと遊んでおいで。」


了解。父は、今はやばいようだ。動いたら出てしまうのだろう。

アーマと遊ぼう。


「アーマ、なに、する?」


俺がそう言うと、アーマは人形を持ってきた。

おいおい、さっき俺がコテンパンにしてやったじゃないか。

ふっ、命知らずめ。

いいだろう、今度こそその闘志を粉々にしてくれるわ!



「じゃーな、また来るぜ。」

暫く経った後、俺たちは帰宅した。

人形戦争は、俺が敗北した。

あいつ、戦いの中で成長してやがる。

帰宅した後父は母に怒られていた。

喧嘩をして傷ついたことと、服を破いたことだ。

その時の母はまるで大魔王のような迫力だった。

恥ずかしいが、漏らした。

父は強し、だが母はより強し、といったところか。


しかし今日は随分と濃い1日だった。

アーマ。いい人形戦士は戦っただけでそいつのことがわかる。あいつはいい奴だ。仲良くしていこう。

そして、父のステータス。やばかった。

もし本当の剣とか使ったら、岩でも切りそうだ。

だが、喧嘩で周りの畑を少し吹き飛ばしちゃって、近所の人にめちゃくちゃ怒られてた。

父のようになりたいが、なりたく無いと思った。


――――――――――――――――――――――――

目標

父を超える

アーマと仲良くなる NEW!

ステータスについて知る

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